建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2018年2月号〉

【寄稿】

地域経済を支える三河港ふ頭再編改良事業について



 国土交通省 中部地方整備局
 三河港湾事務所 所長
平澤 興



三河港平面図

1.三河港の概要

 三河港は、周囲約80キロメートル、水面積約132平方キロメートルの半円形をなし、三河湾国定公園に囲まれた美しい自然環境に恵まれており、1962年5月渥美湾奥部に点在する西浦、蒲郡、豊橋及び田原の4港を統合し、名称を「三河港」と改めて誕生しました。
 背後地は1964年9月東三河工業整備特別地域に指定された地域であり、広大な臨海、内陸工業用地、工業用水等の立地性に優れ、自動車産業を中心とした各種の企業が進出しあるいは予定されており、今後さらに自然と生活環境の保全を図りつつ地域開発がなされようとしています。
 このため、本港は背後圏の流通拠点港湾としての機能の、より一層の充実及び背後圏地域の産業基盤の拡充を図るべく要請されており、平成30年代前半を目標年次とした「第6次三河港港湾計画(平成23年4月)」で設定した「物流・産業」「人流・交流」「環境・生活」「安全・防災」の各機能を充実するという基本方針に基づきさまざまな事業を推進しており、21世紀の港湾をめざした地域住民と共に躍進しつつある港湾であります。

2.事業の概要

ふ頭再編改良事業

 三河港は、日本のほぼ中心に位置する立地条件やモノづくり愛知県を代表する自動車産業の集積を活かし、我が国を代表する完成自動車の輸出入拠点となっています。
 三河港の完成自動車輸出入台数(平成28年)は100万台を超え、特に完成自動車輸入台数については、海外自動車メーカー各社の新車整備センターの立地が進み、17.9万台(平成28年)で24年連続全国1位を記録しており、我が国の半数以上の外国産車が三河港から輸入される状況となっています。
 現在、三河港では、名豊道路をはじめとする背後の道路ネットワークの整備に伴い、完成自動車の輸出入拠点としての機能の重要性が高まっているところです。
 完成自動車の輸出入拠点である三河港を物流面から支えるため、三河港湾事務所では平成26年度より神野地区において「ふ頭再編改良事業」を進めています。
 「ふ頭再編改良事業」は、完成自動車の取扱需要の増加及び船舶の大型化に対応するとともに一般貨物と完成自動車の混在解消等を図ることを目的とし、神野地区7号岸壁(水深12m)の延伸及び泊地、ふ頭用地の整備を行うものです。本岸壁は耐震強化岸壁として整備をしており、地震時における背後圏の緊急物資輸送に加え、完成自動車等幹線物流の継続性の確保についても期待されています。

3.事業の進捗状況と整備効果

神野ふ頭地区平面図 岸壁(-12m)断面図

 ふ頭再編改良事業は、既設の岸壁を延伸し、水深12mを有する岸壁延長260m×連続3バースとして再編するものです。
 延伸する岸壁は原地盤を深層混合処理工法により固化改良し、擬似的な重力式岸壁を築造するという国内初の工法を採用しています。
 事業は平成26年度に着工し、平成29年度中には当初計画していた岸壁の延伸部分及び前面泊地(水深12m)の整備が完了する予定です。引き続き、既設岸壁等の改良を順次実施していきます。
 現在の神野地区は、岸壁延長の不足のため同時着岸数に制限があるほか、一般貨物と完成自動車が混在するなど非効率な輸送を余儀なくされています。
 岸壁の延伸とそれに伴うふ頭再編によって、効率的な物流機能が確保され、三河港を利用する地域産業の国際競争力の向上が期待されます。
 耐震強化岸壁の整備により、震災時における緊急物資輸送拠点を確保し、地域住民の安全安心の向上を図るとともに、震災時においても自動車輸出入の拠点である三河港の物流機能が維持されることで、我が国の基幹産業である自動車産業活動の維持に貢献できます。

4.おわりに

地盤改良施工状況 上部工施工状況

 中部圏はもちろん、近畿圏や首都圏もカバーする地理的優位性を生かし、今後も産業物流の結節点として三河港が機能し続けることは、我が国の経済成長及び地域経済の発展に大きく寄与するもので、地域の皆様の期待も大きく、その期待に添えるように事務所一丸となって取り組んで行きます。


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