建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2017年12月号〉

石狩川水系千歳川河川整備計画の概要と遊水地群の整備状況

―― 千歳川流域の安全・安心を目指して

 国土交通省 北海道開発局
 札幌開発建設部 千歳川河川事務所 所長
都築 一憲
 昭和35年8月27日生(57歳)
 昭和58年4月 北海道開発局入局
 平成25年4月 函館開発建設部 今金河川事務所 所長
 平成27年4月 北海道開発局建設部 河川工事課 課長補佐
 平成29年4月より現職
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図1 石狩川と千歳川の流域図

図2 千歳川流域と基幹交通施設位置

1.はじめに

 石狩川水系千歳川の河川整備計画は、平成17年4月に策定された後、治水対策の主要メニューである遊水地群の位置、諸元等が確定したことを受けて、平成27年3月に変更されている。なお、変更にあたり、遊水地群の他にも必要な時点の変更を加えている。
 本寄稿では、主に河川整備計画にある流域の治水対策の概要と遊水地群の事業進捗状況について紹介する。

2.千歳川流域の概要


 千歳川は石狩川の一次支川で支笏湖を源とする幹川流路延長108km、流域面積1,244km2で、上流部の千歳市街地を抜けると中下流部は石狩低地帯と称され河床勾配が1/7,000となり、石狩川河口から約28km地点で合流する。
 流域には、下流から江別市、南幌町、北広島市、恵庭市、長沼町、千歳市の4市2町があり、市町村人口は約 37万人である。産業としては、日本の食を支える水田や畑作などの一次産業、豊富で良質な水を生かしたビールや乳製品などの食品製造業、金属製品製造業などの二次産業が盛んで、最近では札幌近郊の住宅地域として、また新千歳空港を中心とした臨空型工業地帯の拡大等で発展が著しい地域となっている。
 また、交通網としては、北海道縦貫自動車道、北海道横断自動車道、国道12号・36号・274号・337号、JR千歳線、JR函館本線、JR室蘭本線などの基幹交通施設が位置しおり、札幌市と新千歳空港、苫小牧港を結ぶ大動脈として交通の要衝となっている。

3.流域の治水対策

図3 洪水時に石狩川の高い水位の影響を受ける区間延長
図5 千歳川沿川低平地のイメージ図(旧基本水準点による表示)
写真1 北広島市街地浸水状況(昭和56年8月上旬洪水)

(1)流域の治水上の課題

 千歳川の中下流部は低平地が広大なため、洪水時には石狩川の合流点における本川の高い水位の影響を、日本の河川では他に例がないほど長い区間に亘り長時間受ける。そのため、千歳川の水位が高い状態が続き宅地や農地等に降った雨水が川に流れ込むことができず、内水氾濫を引き起こし易い。また、高い水位が続くと堤体漏水や基盤漏水、軟弱な泥炭等の地盤特性からの堤体基盤すべり、それらに伴う堤防の破堤等の危険性が高くなる。
 石狩川流域が未曾有の洪水となった昭和56年8月上旬洪水では、千歳川の舞鶴観測所(合流点より概ね28km地点)においては堤内地盤高より高い水位の洪水継続時間は、石狩川の石狩大橋観測所(合流点より概ね1 km下流)の約2倍の170時間に及び、流域の排水機場は長時間稼働したが、堤防の法崩れや漏水で危険な状態となり、排水機場の稼働を停止せざるを得ない状況となった。

(2)主な治水対策

図6 堤防の整備
図7 河道の掘削
図8 遊水地の整備

 千歳川の治水対策は、下記の三本の柱によって進められている。 ○石狩川の高い水位の影響を受けることに対応した堤防の整備
○洪水時の河道内水位の低下と疎通能力を上げるため、河道断面が不足している区間における河道の掘削
○洪水時の河道内水位を低下させるため、洪水調節容量が概ね5千万m3の遊水地群を流域4市2町の地先に分散して整備

図4 千歳川流域の標高区分図(低平地部)(旧基本水準点による表示)

4.事業の進捗状況

写真2 千歳川遊水地群(平成29年5月撮影)

図9 千歳川遊水地群位置図

(1)遊水地群の整備

 千歳川の遊水地群は、6遊水地を合わせ1,150haの湛水面積となり、全地買収により地内を掘削し周囲堤や囲繞堤の盛土材料として利用している。また、内水氾濫対策としての湛水容量も確保している。
 事業期間は平成20年度から平成31年度までの12年間とし、既に6遊水地とも工事着手済みであり、先行着手していた「舞鶴遊水地」は、平成26年度に完成し供用されている。
 平成28年度末時点での遊水地群全体での進捗状況は、事業費ベースで概ね7割程度である。引き続き、周囲堤や囲繞堤の盛土、地内掘削、排水路整備、周囲堤樋門の設置などの工事を進めていく。

(2)遊水地群の利活用に向けた取り組み

 遊水地整備により広大な平地が創出されることから、その利活用に向けた検討を進めている。検討にあたり、各自治体が利活用することで遊水地が地域の振興に資し、また、占用者による採草地や多目的広場として利用管理することで遊水地内の荒廃や樹林化などを防ぎ、将来の維持管理費の低減にも資することを目指している。
 4市2町の利活用計画は策定済みであり、平成27年4月に供用を開始した舞鶴遊水地(長沼町)では、修景用採草地として利用を開始している。

5.おわりに

 千歳川流域の河川整備は、流域の自治体や期成会、貴重な土地を御提供いただいた地権者のみな様など多くの方々のご支援やご協力をいっただきながら着実に進めることができております。あらためてこの場をお借りして、感謝のお礼を申し上げます。
 札幌開発建設部としては、地域住民のみな様の安全、安心を確保し、流域の益々の発展に向け下支えできるよう、引き続き千歳川流域の河川整備を進めて参ります。

図10 舞鶴遊水地(長沼町)の利活用計画図


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