建設グラフインターネットダイジェスト
〈建設グラフ2017年11月号〉
土木の日に寄せて
―― 北海道の安全・安心な国土づくり
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国土交通省 北海道開発局 局長
和泉 晶裕 |
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北海道出身 |
昭和55年3月 北海道札幌西高等学校卒業 |
昭和59年3月 北海道大学工学部卒業 |
昭和61年3月 北海道大学大学院工学研究科修了 |
昭和61年4月 北海道開発庁採用 |
平成6年4月 同 北海道開発局室蘭開発建設部苫小牧道路事務所第1工事課長 |
平成7年2月 同 北海道開発局建設部道路計画課開発専門官 |
平成11年5月 同 北海道開発局小樽開発建設部道路課長 |
平成13年4月 国土交通省北海道局地政課開発専門官 |
平成15年4月 同 北海道開発局建設部道路計画課長補佐 |
平成16年7月 同 北海道開発局建設部道路計画課道路調査官 |
平成19年7月 同 北海道開発局函館開発建設部次長 |
平成21年7月 同 関東地方整備局横浜国道事務所長 |
平成24年4月 同 北海道開発局建設部道路計画課長 |
平成27年7月 同 北海道局地政課長 |
平成29年7月 同 北海道開発局長 |
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防災・減災シンポジウム(H28札幌市) |
北海道は千島海溝周辺に位置し、今後30年以内に震度6弱以上の地震が発生する確率が60%を超えている地域があるなど、大規模な地震・津波が発生する可能性が高く、また、全国の活火山の約2割が存在しているなど自然災害の発生リスクが高い地域であります。特に冬期の北海道においては、雪害と地震災害といった複合的な災害が発生するおそれがあり、こういった特殊性も踏まえて災害に対する備えを日頃から進めておく必要があります。
昨年8月には、台風7号、11号、9号と1週間に3つの台風が北海道に上陸、その後、台風10号が日本海側を通過するなど、過去に例のない4つの台風が来襲しました。この相次ぐ台風の通過や停滞した前線の影響によって、各地で記録的な大雨となり、堤防の決壊による浸水被害や落橋・土砂崩れによる通行止めが多発し、甚大な被害を受けました。
この一連の台風災害を受け、大きな被害を受けた河川を中心に、関係機関が連携して、再度災害防止を目的とした、本格的な堤防整備や河道掘削等を概ね4年間で集中的に実施することや農地の土壌流出対応として河道の掘削土を農地で活用するなどのハード対策とタイムラインの作成及びこれを活用した訓練の実施などのソフト対策が一体となった緊急的な治水対策「北海道緊急治水対策プロジェクト」を推進しているところであり、また、通行止めが続く国道274号日勝峠についても、復旧工事を全面展開し、今年10月末までに通行止めを解除する予定です。
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タヨロマ川排水活動
(名寄市 H28台風11.9号) |
浸水箇所の排水活動(幕別町 H28台風10号)
夜を徹しての作業のため照明車も併せて派遣 |
北海道開発局では、今後起こり得る自然災害に備える防災対策として、根幹的な治水対策に取り組むとともに、津波対策や各種施設の耐震化、広域交通ネットワークの代替性・多重性確保、防雪対策、土砂災害防止、危機管理体制の強化など、「人の命が第一」、「災害には上限がない」という東日本大震災の教訓を踏まえて、災害に強い社会の実現に向けて引き続き取り組みを進め、災害発生時には、被災自治体へリエゾンを派遣して情報収集や提供を行うほか、災害対策用機械やTEC-FORCEを派遣して早期の復旧に向けた支援活動を行って参ります。
また、ハード・ソフトの様々な対策を組み合わせ、国民の暮らしや産業・経済活動の被害をできるだけ軽減する「減災」の考え方に基づく対策を進めていくため、社会資本整備と合わせて各種災害対応訓練の実施や地域防災力の強化を図る取り組みとして、市町村長との意見交換会やシンポジウムの開催など、自治体との連携強化と地域住民の防災意識を高める取り組みを積極的に推進して参ります。
加えて、高度経済成長時代に集中投資した社会資本ストックの老朽化が急速に進行しており、今後、維持管理費・更新費が増大していくと考えられることから、防災・減災対策とあわせて、計画的な補修・更新による予防保全対策の実施など、戦略的な維持管理を進めていくこととしています。
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上芽室橋被災状況調査
(芽室町 H28台風10号) |
小林川被災状況調査
(清水町 H28台風10号) |
国土強靱化については、平成25年12月に制定された「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」において、国土強靱化に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、地方公共団体が地域計画を策定できる、とされました。
このことを受けて、北海道が、平成27年3月に「大規模自然災害から道民の生命・財産と北海道の社会経済システムを守る」、「北海道の強みを活かし、国全体の強靱化に貢献する」、「北海道の持続的成長を促進する」ことを目標とする「北海道強靱化計画」を策定し、北海道の強靱化に必要な施策を進めております。
また、札幌市が、昨年1月に「大規模自然災害からの生命・財産及び社会経済機能の保護」、「北海道の強靱化への貢献、連携の促進」、「国全体に対するバックアップ機能の発揮」、「経済活動の活性化、地方創生」を目標とする「札幌市強靭化計画」を策定し、災害に強い都市の構築を目指した施策を進めております。
北海道開発局では、昨年3月に閣議決定された「北海道総合開発計画」において、「強靭で持続可能な国土」を目標の一つに位置づけており、本計画に基づき、激甚化・多様化する災害への対応、我が国全体の国土強靱化への貢献、安全・安心な社会基盤の利活用を推進して参ります。
今後も北海道の強靱化に向けて、関係機関及び地方公共団体等と緊密な連携のもと、地域の安全・安心を支えるために取組を推進して参りますので、皆様のご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。
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