建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2017年10月号〉

国道274号日勝峠の災害復旧

―― 早期通行止め解除に向けて

 北海道開発局 帯広開発建設部
 帯広道路事務所 所長
佐藤 修也

図-1 平成28年台風10号の影響による通行止め状況(被災当時)

1.はじめに

 帯広開発建設部帯広道路事務所は、十勝管内の最大都市である帯広市を含む15市町村、人口約32万人を抱え、高規格幹線道路帯広・広尾自動車道と国道38号、236号、241号、274号の計5路線、総延長約332kmと北海道内の道路事務所では最長の管理延長を有しており、それら路線の維持管理、交通安全対策事業を実施しているとともに、帯広・広尾自動車道の改築などの多様な事業を行っています。

図-2 国道274号 日勝峠の被災箇所図(全体図)

2.国道274号日勝峠の災害復旧を目指して

1)概要

 国道274号は、北海道の中心都市である札幌市を有する道央圏と十勝・釧路などの道東圏を結ぶ重要な路線であり、国内シェア4割の十勝産じゃがいもや生乳、道東産の秋刀魚など、我が国の食を支える北海道の農畜産物を輸送する主要ルートであり、その中でも日勝峠は、日高山脈の標高1,000mを超える山岳地帯を横断し、冬期は積雪が2mを超すなど非常に気象条件の厳しい箇所に位置しています。
 平成28年8月17日〜23日の1週間で北海道に上陸した3個の台風は、北海道東部を中心に河川氾濫や土砂災害を引き起こし、更には8月29日からの降雨と台風10号が接近した30日から31日深夜にかけての局地的大雨(観測史上1位の雨量488mm:開発局雨量計)により、法面崩壊など道路施設が甚大な被害を受けました。
 また、日勝峠以外にも国道38号狩勝峠(通行止め期間:約2週間)、清見橋、小林橋(仮橋により約1ヶ月半で通行止め解除)などの道路施設も甚大な被害を受けました。

ヘリコプターや自転車による移動

2) 発災時及びその後の対応(道路巡回、通行止めの実施)

 天気予報や大雨等、現地の状況をみながら、管内の異常時巡回を実施し、路線を管理する隣接事務所とも連携して災害発生のおそれがあると判断した平成28年8月30日11時15分に通行止めを行いました。また、並行して現地の通行規制処理、迂回路の設定、関係機関への情報連絡、道路利用者への周知等を実施しました。昨年の被災では、前述のとおり国道274号日勝峠以外にも国道38号狩勝峠等においても法面の崩壊や清水町内での落橋など、道路施設が様々な被災を受け、同時並行の対応を求められました。

3)災害箇所の全容の把握と設計・施工への反映

UAVによる調査

 被災後、まずは日勝峠全体の災害状況を把握するため、被災翌日の9月1日にはヘリコプターによる空撮や現地踏査を行い、また建設会社や設計コンサルタントと随意契約を締結し、当局と連携して現地調査を行いました。車両進入の困難な箇所は徒歩のほか、自転車による移動やヘリコプターによる移動等、様々な工夫をしながら早期に被災状況の把握に努めました。現地調査及び測量に際しては、土砂崩壊斜面が二次災害の危険もある現場状況であったため、UAVによる空中写真測量やレーザースキャナーによる現地測量を実施し、現地作業の効率化と安全性の確保を図りました。また、点群データを取得し詳細な現地状況を3Dデータモデルとすることで、被災断面を自由な角度で横断抽出することが可能となり、被災状況(規模)を迅速に把握するとともに、その後の設計・施工にも反映させることが出来ました。
 被災直後は、国道274号沙流郡日高町千栄〜上川郡清水町清水までの43.8kmの区間を通行止めとしましたが、現在は起終点側の一部を解除し、36.1kmの区間が通行止めとなっています。主な被災箇所は、日高町〜清水町にかけて全体で66箇所あり、このうち清水町側の被災箇所(当事務所管轄)については、35箇所となっています。

写真-1 日勝峠清水側8号目(No.38)の状況【左:被災時、右:復旧状況】

4)早期通行止め解除に向けて

 清水側の現地踏査及び測量を進めていくと、8号目(全体図:No.38)と7号目(全体図No.42)の被災箇所が甚大でした。特に、8号目の法面崩壊箇所では、渓流からの土石流により道路横断排水が閉塞し、迅速に排水処理を行わなければ法面の崩壊が進行してしまう状況であったが、設備を搬入しようにも手前7号目の法面崩壊箇所の規模が大きく、頂上側への車両進入が出来ませんでした。このため、崩壊箇所の山側に仮桟橋を設置し、車両用進入路が造成出来るまでは、自転車や徒歩での移動、人力による排水設備、燃料、材料の搬入、及び被害拡大を防ぐ作業を強いられました。その後、平成28年9月中旬頃には概ね復旧工法が決定し、12月の本格的な降雪を迎えるまで、被災箇所の応急復旧及び本復旧を見据えた工事用道路の造成、雪解けによる被災法面の崩壊防止対策を進めました。
 平成29年の工事は、除雪作業から始まりました。標高が1,000mを超える日勝峠の雪解けは遅く、融雪剤を撒きつつ人力作業による法面除雪を行うなど着工準備を進めることで、4月中旬頃には土砂運搬が可能となり、5月上旬頃より本格的な盛土の施工に着手しました。しかしながら、日勝峠の頂上までは本国道以外の進入路がなく、自工区内に他工区の工事車両通行のための工事用通路を確保せざるを得ない上、施工ヤードも限られていました。更には、土木工事以外にも道路施設の電気通信工事、占用物の復旧工事等が錯綜し、綿密な工程調整を行う必要がありました。このような厳しい施工条件下の中で工事が円滑に進み、無事故・無災害で工事が行われるよう、当局発注の受注者のほか、復旧工事に関係する工事業者22社が連携して「日勝峠復旧工事連絡協議会」が組織・運営され、10月末までの通行止め解除に向けて急ピッチで工事が進められています。

写真-2 日勝峠清水側7号目(No.42)の状況【左:被災時、右:復旧状況】

3.おわりに

 国道274号日勝峠については、地域の皆様及び地元自治体をはじめとする関係機関のご協力を頂きながら、受発注者一丸となって10月末までの通行止め解除を目指して復旧工事に取り組んで参ります。引き続きご理解とご支援のほどを宜しくお願いいたします。なお、国道274号日勝峠通行止め解除に伴い、道東自動車道(占冠IC〜十勝清水IC)の代替路(無料)措置も終了予定です。道東自動車道の代替路措置により、地域社会の影響が最小限に抑えられたことに改めて感謝申し上げます。


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