建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2017年7月号〉

高速交通網の整備により地域を活性化

―― 中部横断自動車道(八千穂高原IC〜佐久南IC)の開通に向けて

 国土交通省 関東地方整備局
 長野国道事務所 所長
吉見 精太郎

事業位置図

 長野国道事務所の道路整備における基本姿勢は、住む人にとっても、訪れる人にとっても快適で魅力あるまちにするため「人に優しく、安全で、快適な道」をテーマに、地域とともに道づくりを進めています。
 中部横断自動車道は、静岡県静岡市を起点とし、山梨県甲斐市を経由し、長野県小諸市に至る延長約132kmの高速自動車国道ですが、長野県内区間につきましては、平成23年3月26日(土)に佐久小諸JCTから佐久南ICの7.8kmが開通しており、現在、整備中の佐久南ICから八千穂高原IC間14.6kmは平成29 年度内の開通を目標としております。
 並行して走る一般国道141 号は、沿線市町村の連絡道路として、また長野県と山梨県を結ぶ道路として重要な役割を担っています。しかし、沿線には観光拠点や農業関連施設が多数分布し、生活交通と広域的な物流交通、観光交通が混在しています。このため広域的な道路のネットワークを形成することで、地域間の交流と地域開発の促進を図ることとしています。

平成23年3月に開通した佐久小諸JCT 平成23年3月に開通した佐久南IC

 この中部横断自動車道の整備効果については、開通した佐久小諸JCTから佐久南ICにおいて、開通1年後の交通状況の検証結果が得られています。詳細を見ると、同区間の開通1年後の交通量は、約4,700〜7,800台/日で、通過交通が中部横断自動車道へ転換した結果、並行する国道141号の交通量が最大で約1割減少(33,400→29,400台/日)しました。これに伴い、救急医療機関へのアクセス性が向上するとともに、並行する国道141号の交通事故が減少し、交通事故発生件数が約4割も減少(55→35件/年)しました。
 主な利用者である地域住民からは「通勤時間が短縮した」との声も聞かれ、広域連合消防本部では、「中部横断自動車道の利用により、通勤時間帯でもスムーズに搬送できるようになった」との評価も聞かれます。


 また、長野県の南佐久地域や上田地域は、高原レタスの栽培に適した『冷涼な気候』であり、8-9月には全国シェアの約9 割を生産しています。整備により、早朝に収穫された高原レタスを開店までに首都圏の店頭へ配送することが可能になりました。高速道路網の整備により短縮された輸送時間を収穫時間に回すことで、今では約1,700万人の食卓にお届けできるよう生産量が増加しました。
 中部横断自動車道沿線の佐久市では、高速交通網等を活かした企業立地に関する補助制度の取り組みにより企業を誘致しています。その結果、佐久小諸JCTから佐久南ICが開通した、平成23年度以降は工業団地に7件の企業誘致が成立しました。なかでも、離山南工業団地では、誘致企業件数が域内最高(4件)となっています。
 佐久南IC 周辺では、地域間交流の拠点となる道の駅「ヘルシーテラス佐久南」(整備主体:佐久市)が平成29年7月に開駅予定です。「ヘルシーテラス佐久南」については、地域資源を活用した観光・交流の促進拠点として、地産地消による「暮らしとしての農業」の支援、健康長寿文化の発信、地域間交流の推進、まちの安心安全を培う防災機能の発揮を図るなどの地域活性化の拠点とする取組が企画されており、重点「道の駅」にも選定されています。平成29年度に八千穂高原ICまで延伸供用する中部横断自動車道の休憩施設としても期待されています。
 このようにストック効果を重視した社会資本整備を推進することにより、生産性を向上し、地方創生を実現するための道路整備に取り組んで参ります。

中部横断自動車道のストック効果【レタス出荷状況】
中部横断自動車道のストック効果【企業誘致状況】


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