建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2017年7月号〉

高知港国際物流ターミナルの整備事業

国土交通省 四国地方整備局
高知港湾・空港整備事務所 所長
針谷 雅幸



高知港 位置図 高知新港 位置図

1.高知港の概要

 高知港は、土佐湾の中央部に位置し、浦戸湾内港と外洋に面した高知新港からなる重要港湾です。
 高知港の背後地には、高知市を中心とした広域市町村圏(人口約45万人)を抱え、我が国の鉄鋼産業に不可欠な石灰石の産地を有し、造船、化学工業品や発電企業等の工場のほか、県内消費の90%以上の石油類を取り扱う石油備蓄基地が立地しています。
 高知新港の国際物流ターミナルでは、石灰石の輸移出を中心に、浦戸湾内に立地する火力発電工場用の石炭及びヤシ柄の輸入等のバルク貨物のほか、県内で唯一の外貿定期コンテナ航路(韓国)が就航し(うち、1航路は2015年(平成27年)12月より中国天津・大連まで航路延伸)、県内外の経済・産業活動にとって重要な拠点となっています。また、内航クルーズ船や大型の外航クルーズ船が多数寄港し、地域の観光振興にも寄与しています。

クリーン・エリザベスの初寄港(H29年3月19日)

2.整備事業の概要

 高知港は、浦戸湾内を中心に発展して来ましたが近年の船舶の大型化によるバース及びストックヤード確保の対応が出来なくなってきました。そのため、湾内各地区との適切な機能分担のもとに、新たな物流拠点が必要とされていました。
 そのような背景のもと、高知新港における国際物流ターミナル整備は、1982年(昭和57年)に直轄事業として事業化されています。
 高知新港は、外洋に面した港湾であり、静穏度確保に必要となる防波堤整備に時間を要するため、港を使いながら防波堤を延伸していく方針のもと、現在の港湾計画で位置づけられたバースのうち、2バースの早期供用を目標に整備を進めてきました。
 1998年(平成10年)には、三里1号岸壁(水深8m)及び三里2号岸壁(水深12m)の供用を開始し、2014年(平成26年)には、三里3号岸壁(水深12m)及び三里4号岸壁(水深11m)の供用を開始しています。また、三里4号岸壁(水深-11m))については耐震性を強化した岸壁として整備され、高知県の一次防災拠点港に選定されており、大規模地震が発生した場合の緊急物資輸送や物流機能の早期復旧に対応し、地域住民の安全・安心の確保することが期待されています。

3.整備事業の進捗状況

高知港海岸における「三重防護」のイメージ
防波堤の粘り強い構造への改良(断面のイメージ)

(1)第一線防波堤の延伸

 現在の高知新港においては、すでに整備を完了し供用を開始している4つの岸壁の更なる静穏度確保を目的に、防波堤の延伸を進めています。
 現在、延伸の工事を行っているのは、防波堤(東第一)で、1988年(昭和63年)に工事を開始し、全延長1,100mのうち、現時点で約1,030mが概成しています。
 防波堤はケーソンで構成された混成堤であり、ケーソンは三里4号岸壁背後にあるケーソン製作ヤードにおいて製作を行っています。製作されたケーソンの質量は、約3,000トンとなり、国内最大級の大型起重機船により吊上げを行って、防波堤の現場まで運搬し、据え付けを行っています。
 防波堤(南)については、1982年(昭和57年)より整備を進めており、現時点で1,000mの区間が完成しています。

(2)第一線防波堤の粘り強い構造への改良


 高知港は過去に大規模地震が引き起こした津波によって、浸水被害を受けています。
 現在、東日本大震災での教訓を踏まえた大規模地震津波への早急な対応が必要とされていますが、高知新港においては、2013年(平成25年)より防波堤の粘り強い構造への改良が進められています。
 これは、地震・津波により防波堤が倒壊した場合、緊急物資の輸送や物流機能に大きな影響を与えるため、被災時の港においても、必要な静穏度を確保することを目的に、被災を受けても、防波堤が倒壊しにくい構造へと改良するものです。
 あわせて、地震後の地盤沈下によって、発生頻度の高い津波に対して不足する天端高を補うための上部工嵩上げ、消波ブロックの積み増しを行います。
 一方で、高知港においては、逼迫する南海トラフ地震に備えた対策として、「三重防護」による地震・津波対策としての高知港海岸直轄海岸保全施設整備事業が平成28年度より事業化されています。三重防護とは、高知港において三つの防護ラインを設け、発生頻度の高いL1規模の津波が発生しても、地域の生命と財産を守るというハード対策です。最大クラスの津波を含めたL2規模の津波が発生した場合には、避難などのソフト対策とあわせて被害の軽減を目指しています。
 防波堤の粘り強い化は、この三重防護の第1ラインの整備に当たるもので、地震・津波発生時に、港湾の機能を確保するとともに、第一線防波堤として地域を防護する役割を果たすことを目的としています。

4.おわりに

 高知新港においては、今後も国際物流の拠点としての整備を進める一方で、地震・津波対策として防波堤の粘り強い化の整備を続け、地域から期待される港湾として整備していくこととしています。

防波堤の粘り強い構造への改良
(断面のイメージ)


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