建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2017年7月号〉

 副局長インタビュー 釧路総合振興局・根室振興局

頻発化する自然災害対策強化や農水産物輸送と観光アクセス確保を重点に幹線交通ネットワークを整備

 釧路総合振興局(建設管理部担当) 兼 根室振興局 副局長
植田 康宏
 うえだ・やすひろ
 札幌市出身
 北海道大学工学部土木工学科 卒業
 昭和58年4月 北海道職員採用(帯広土木現業所)
 平成21年4月 帯広土木現業所道路建設課長
 平成22年4月 釧路総合振興局釧路建設管理部地域調整課長
 平成23年6月 建設部参事((株)北海道エアシステム派遣)
 平成24年8月 建設部建設政策課津波防災担当課長
 平成25年4月 建設部建設管理課建設業担当課長
 平成27年6月 建設部建設政策局次長((一財)北海道建設技術センター派遣)
 平成28年4月 現職

── 本年度の事業推進にあたりまして抱負をお聞かせください
H28薫別川北線交付金工事(乳薫橋)
植田 釧路・根室管内は、阿寒、釧路湿原、世界自然遺産の知床という3つの国立公園をはじめとした豊かな自然と、そこに根ざした農林水産業がもたらす新鮮な食材や木材資源が豊富で多くの人々が訪れる観光地であります。
 昨年3月には、道東自動車道が阿寒インターまで延伸・供用され、釧路市などでは、観光立国ショーケースや阿寒国立公園満喫プロジェクトなど新たな事業が立ち上がっており、管内の観光客の一層の増加が期待されております。
 このような中、釧路建設管理部では、地域の住民などの安全で安心な暮らしを守るため、公共施設の整備やソフトを含め必要な対策に取り組むとともに、併せて地域振興に寄与するため、幹線交通網の整備や良好な河川環境の保全、水産業のための漁港整備などを進めたいと考えています。
── 安全で安心な地域づくりや防災対策強化に向けた取組についてお聞かせください
H28釧路川広域河川改修事業(釧路川工区)
植田 北海道では、昨年の8月に4つの台風が相次いで襲来し、全道各地で未曾有の被害に見舞われましたが、釧路・根室管内においても、国道38号から道東道の庶路インターに続く一般道道上庶路庶路停車場線の決壊や主要道道知床公園羅臼線の土砂崩れなどで通行止めとなり、住民生活に影響をもたらす被害が発生しております。
 また、当管内は、平成4年の釧路沖地震や平成15年の十勝沖地震など大地震が発生している地域であり、今後も大地震の発生が懸念されているとともに、近年では、平成25年3月に発生し甚大な被害をもたらした暴風雪災害、平成26年12月と平成27年10月に根室市の爆弾低気圧による高潮災害などの異常気象による自然災害が頻発しています。
 このため、自然災害から人命や財産を守るため、災害に強い道路整備やハードとソフトによる総合的な洪水対策や土砂災害対策、地震・津波対策、高潮対策など、人々が安全で安心して暮らせる地域社会の実現を目指して今後とも国や市町村とも連携し、社会資本整備や防災対策を進めていきたいと考えています。
 道路事業では、冬期の視程障害や吹き溜まり防止のため防雪対策を実施しており、とくに根室管内中標津地区は、重点的に整備を進めていきます。
 また、昨年8月・9月に被災した一般道道屈斜路津別線や主要道道知床公園羅臼線は災害復旧事業で早期復旧を目指します。
 河川事業では、釧路川で浸水対策のための築堤工や護岸工を引き続き整備すると共に、平成25年度に2度の浸水被害を受けた釧路町別保市街地の治水対策として、別保川においては、掘削工などに着手する予定であります。また、久著呂川においては、釧路湿原への土砂流入の軽減を図るため土砂調整池の整備を実施する予定であり、春採川では、道道橋の架け替えを行っており、昨年の橋梁下部工に引き続き、橋梁上部工を施工し完成を目指します。
 また、昨年8月に被災した庶路川や舌辛川は災害復旧事業で早期復旧を目指します。
 砂防事業では、平成24年の集中豪雨により山腹崩壊、渓岸侵食した刺牛1号川で整備を進めるほか、常時観測火山の一つである雌阿寒岳において監視情報伝達に必要な施設設置などを引き続き実施するとともに、新規としてアトサヌプリで調査設計を実施する予定です。
 急傾斜地崩壊防止事業では、急傾斜地の崩壊から住民を守るため、釧路町老者舞地区や釧路材木町2地区のほか7箇所で事業を継続します。
 さらに、土砂災害防止法の改正を受け、今後3年程度で基礎調査を完了するため、引き続き基礎調査を実施する予定です。
 建設海岸事業では、高潮や波浪による、海岸侵食や決壊などから国土を保全するために、野付崎海岸では、侵食対策としての消波堤の整備を引き続き実施し、これまで度重なる津波被害を受けている霧多布海岸においては今年度から堤防の整備に着手する予定です。
 また、越波被害の防止のため、羅臼(岬町中央、岬町南外)海岸で護岸の整備を引き続き実施します。
 漁港海岸事業では、標津漁港海岸で侵食対策として人工リーフを引き続き実施します。
── 平成29年度予算執行にあたり北海道の基幹産業、農業・水産業の向上や観光振興、環境整備事業などの取組をお伺いします
H28上武佐計根別(停)線(A雪-254)交付金工事2工区
植田 地域の主力産業である水産業の核となる漁港の整備を進めています。尾岱沼漁港では、屋根付岸壁施設や浚渫などの衛生管理型漁港の整備を引き続き実施します。老朽化の進む琵琶瀬漁港では、機能の低下した箇所の保全工事を実施します。散布(火散布)漁港では、大型化した漁船に対応した漁港施設の整備を引き続き実施します。
 道路事業では、農水産物の輸送、観光アクセスや緊急輸送ルートの確保のため幹線交通ネットワーク整備を重点的に実施しています。継続事業では、別海厚岸線の厚岸大橋橋梁補修工事や、薫別川北線の乳薫橋架け替え工事を重点的に実施し、早期完成を目指します。
 街路事業では、安全で円滑な交通と歩行者空間の環境改善を図るため、中標津町の3・4・14号西町通や、弟子屈町の3・3・5鐺別通改良工事では、いずれも用地買収及び物件補償を進めていくこととしています。
── 社会資本整備事業の担い手として地域社会に貢献し災害時における復旧対策などを担う建設業界へ要望・期待などをお聞かせください
H28岬町中央海岸高潮対策工事1工区
植田 地域の建設分野に携わる方々には、公共施設に係る調査設計から、建設工事、維持管理、除排雪、さらには災害時の緊急対応や災害復旧に至るまで、全ての段階で中心的な役割を担っていただいており、深く感謝しております。
 また、建設産業は地域の経済や雇用についても、たいへん大きな役割を担っているものと考えております。釧路建設管理部といたしましては、いわゆる品確法にもとづく様々な取組を通じ、建設産業の安定的な発展を強力に支援していきたいと考えています。

HOME