建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2017年6月号〉

一般国道229号 せたな町新美谷トンネル工事

 岩田地崎・松本 特定建設工事共同企業体
 新美谷トンネル工事作業所
伊藤 篤


図-1

1.はじめに

 小樽市から檜山郡江差町を結ぶ国道229号のうち久遠郡せたな町に位置する新美谷トンネル工事は、岩盤崩落等による危険箇所の解消を図り、災害発生時における沿線集落の孤立化の解消及び安全な通行の確保を目的とした延長1.5kmの防災対策事業の一環であり、防災対策必要箇所を回避するため、現道を山側にシフトしたルートで延長917mのトンネルを新設する工事である。工事位置図を図−1に示す。

2.工事概要

3.地形・地質概要

 本トンネル周辺は基盤岩である溶岩〜火砕岩が高さ20〜60m程度の急崖をなし露出する岩石海岸地形となっている。急崖の上部〜背後にはやや平坦な地形が連続しており、背後山地より供給された未固結の土砂よりなる段丘堆積物が分布している。
 背後から連続する沢はこの段丘堆積物を開析し、海食崖部分で急勾配となり海へ注いでいる。
 本トンネルの終点坑口付近は地すべりが分布し、この地すべりはブロック形状は異なるが、地すべり地形データベースでも認められている。
 周辺の地質は、新第三紀中新世オコツナイ層の火砕岩、シルト岩である。海岸線や河川沿いには、これらを不整合に覆う第四紀の段丘堆積物が分布する。
 オコツナイ層は、中新世の地層で最も新しく、安山岩質水冷破砕岩、火山円礫岩から構成され、シルト岩、軽石凝灰岩を挟む。段丘堆積物は、海岸線や河川に沿って平坦性を形成して分布する。古期の上石流堆積物とみられ、火砕岩の巨礫を多く含む未固結の上層である。
 トンネル掘削部は新第三紀中新世オコツナイ層の火山角礫岩、凝灰質砂岩、凝灰角礫岩が主に分布する。

4.施工概要

4-1.近接トンネル対策

 本トンネルの掘削は、起点側(小樽側)からの掘削となり、起点側坑口は現道のトンネル(美谷トンネル)に近接した位置となっているため、地盤振動の影響判定を検討し、新・現道トンネル離隔が2D以上(D:掘削径=11.9m)確保すれば、影響がないことが判明し、離隔が2D以下となる区間(起点坑口から58m)は、機械掘削方式(当初設計)を採用した。
 現道に対する影響を考慮し、機械掘削方式による施工となっているが、トンネル周辺地山は一様に均質ではなく、部分的に振動の伝播しやすい箇所や脆弱部を含む箇所も懸念されることから、掘削中の施工管理として、起点坑口部掘削時は坑内、地表面、地中内、既設トンネルの挙動を確認するため、新旧トンネルの間にパイプ歪み計、現道トンネルに亀裂変位計・温度計、コンクリート表面歪み計及び内空変位・天端沈下の測定ターゲットをそれぞれ設置し、機械掘削58mと発破掘削30mの区間について計測を行いながら施工を行った。
 施工・計測の結果、現道トンネルに対し影響無く掘削を完了することができた。
 また、発破掘削切替え時には試験発破を行い、振動・騒音の測定を加えて評価し、問題ないことを確認して発破掘削に切替えた。

4-2.作業環境対策

 切羽作業時の粉塵および排気ガス対策として、集塵機による粉塵低減と送風機による換気に加え、移動が容易な防爆仕様の隔離璧(トラベルクリーンカーテン)を切羽近傍に設置し、粉塵および排気ガスを封じ込めることにより、隔離璧より後方への拡散を防止した。集塵機についても大型化(フィルタ式2,400m3/min級)し、吸引伸縮風管を100m使用した。隔離璧設置状況を写真−1に示す。
写真-1 隔離璧設置状況

4-3.覆工コンクリートの品質確保

 覆工コンクリートの品質確保のため以下の対策を行っている。@セントル設置時の打設完了した覆工へのひび割れ、角欠けを防止するため、セントルの天端部中央と左右肩部の3ヶ所に押上防止センサーを設置。A吹上げ施工切替前(側壁部)は、フロート付バイブレーターと小径強力バイブレーターを併用して締固めを行う。(鉄筋区間を除く)B天端部には長尺引抜きバイブレーターを2本設置し締固めを行う。(鉄筋区間を除く)C鉄筋区間の締固めには、側壁部に小径強力バイブレーター、天端部に一本槍高周波バイブレーターを使用し締固めを行う。D打設完了スパン側の天端部中央と左右肩部の3ヶ所にコンクリート完全充填システム「FCPピン」(充填センサー、エアー抜きとブリージング水除去孔付ピン)を設置し充填状況を管理。E養生にはアクアカーテン(浸水養生シートを覆工面に設置し、養生水を循環させる給水養生システム)を使用して保温・湿潤養生を4週間実施。Fインバート区間のSLより下の範囲にコンクリートひび割れ低減用ネット「ハイパーネット60」を設置する。G通風による覆工への影響を低減するため、トンネルGSゲート(自動開閉式シートシャッター:開閉時間1分)を設置して坑口の開放時間を短縮する。

図-2 バイブレター等設置図 写真-2 アクアカーテン設置状況

5.おわりに

 本工事は、平成28年2月20日に坑口付けを開始し、平成29年3月21日に無事貫通式を迎えることができました。現在は覆工コンクリートの施工中であり、今後は坑門工の施工を残すところである。竣工に向けて無事故・無災害で工事を進めるよう職員一同取り組んでいく所存であります。
 最後に、発注者である北海道開発局函館開発建設部の皆様をはじめせたな町の方々及び関係各位のご指導とご協力に深く感謝申し上げます。

写真-3 トンネルGSゲート


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