建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2017年6月号〉

建設業における問題と労働生産性向上等への取り組み

 一般国道491号長門・俵山道路 安全協議会 会長
 大寧寺第1トンネル工事 戸田建設株式会社 広島支店 所長
 三上 英明

 一般国道491号長門・俵山道路は下関市と長門市を南北に結ぶ主要な幹線道路であり、将来、山陰地方の高規格道路網の一部を形成する道路として5.5qの整備が進められています。本安全協議会は平成29年5月現在、トンネル工事3業者、橋梁工事3業者、改良工事等6業者の合計12業者で構成され、当該区間の整備にあたっています。
 今回は建設業における問題と労働生産性への取り組みについて、作業所に従事する立場から思いを述べます。
 建設業全体が抱える問題として、技能者の減少、労働生産性の低迷、長時間労働等があげられます。建設工種は多種多様で技能を得るまでに相応の時間を要しますが、就職減離職増という現状や元請としても適切な指導が行き届かないことも技能者減少の一つの要因となっているところです。そういった流れから労働生産性が上がりにくく労働時間の延長につながる悪循環と感じています。
 安全協議会の会長として、各現場との交流により前述の問題に即した情報交換内容についてご紹介をしたいと思います。
 技能労働者不足問題の解消対策については積極的な女性登用と教育に注力している業者がございます。男女間で重量物の扱いはさておき、品質・工程・安全管理能力に関しては男女間の差はなく、積極的な採用は建設業のすそ野を広げるとともに活性化につながると感じています。

 次に長時間労働の抑制についてです。改良工事は工種が多岐にわたり進捗が天候に左右されますが、土日全休で現場運営を試みている現場があります。日常的な残業時間は少々伸びているかもしれませんが、土日を休むことで週法外労働の減少に大きく寄与していると思います。土日全休で現場からはなれるため、施工途中ののり面に自動観測装置を取り付けて監視する等工夫が見られ、ICTが発達した今だからこそ取り組める管理方法例です。
 その他、GPS等を多用して重機操作をガイダンスするシステム装置を使用することで経験が浅いオペレータでも一般的な土工をこなしている業者もあります。経験不足であっても地山の切り方や盛土整形の操作方法について、コンピューターのガイダンスを真似ることで技能習得も早まるのではないでしょうか。
 労働生産性の向上等への取り組みについては、特にトンネル工事での工夫が多いと感じています。繰り返しの作業が多いため色々と試しやすい環境も功を奏していると思います。例えば、トンネルの発破作業後のずり出し方法の工夫や、機械の大型化による施工速度の向上がよく考えられております。現場内の巡視に監視モニターを多数使用することで、一人の職員が得る情報を移動量を少なくても確保する工夫や、生コンクリートのオーダーを「LINE」で行い一度に関係者が手配状況を知ることも検討されております。その他、防水シート等の設置はこれまで台車を用いて人力で張付けをしていたところを、各種台車の工夫により通常より長いシートを機械補助により敷設することで施工速度を向上させている例など多数あります。安全面においては重機への作業員接近監視装置や、バックモニターの標準化などにより経験が浅いオペレータでも「危ない」を機械がフォローするシステムを導入している現場が多いと感じます。施工に至るまでの事前の安全対策がしっかり計画されており、各社ともフロントローディングに力をいれている状況が見受けられます。
 長門・俵山道路は、一つの使命としてアジア開催初となる記念すべき第9回ラグビーワールドカップ2019のスムーズな運営があげられます。残念ながら試合会場には選択されませんでしたが、練習場として大会を支援する形となります。
 残すところあと1年。工事進捗が急がれております。これまで大きな災害もなく無事に進んでおりますのは本協議会会員の皆様と国土交通省山口河川国道事務所の皆様のご尽力によるものであり、深く感謝しております。最後まで無事故・無災害での事業完成に向けてさらなる取り組みを検討し進んでまいります。


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