建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2017年2月号〉

釜石と陸前高田を再興させる復興道路と復興支援道路

―― 急ピッチで進む三陸沿岸道路と釜石花巻道路

 国土交通省 東北地方整備局
 南三陸国道事務所 所長
 金ヶ瀬 光正

図 南三陸国道事務所担当区間


 私たち南三陸国道事務所は、東日本大震災からの早期復興リーディングプロジェクトとなる復興道路(三陸沿岸道路)・復興支援道路(釜石花巻道路)の一日も早い完成を使命として、平成24年4月釜石市に設置されました。広域的で災害に強い道路ネットワークは、産業を支え、地域経済を活性化します。また災害時には、避難路あるいは救援道路・緊急輸送路として地域の安全を守ります。
 そこで現在、重点的に整備を進めているのは一般国道45号三陸沿岸道路と283号釜石花巻道路です。
 三陸沿岸道路は、いくつかの区間に分け、同時進行で着工しています。唐桑高田道路は、宮城県気仙沼市唐桑町舘(唐桑北IC(仮称))から岩手県陸前高田市竹駒町相川(陸前高田IC)を結ぶ10kmの自動車専用道路です。
 東日本大震災の津波により、国道45号気仙大橋の上部工が流失し、約4ヶ月に渡って通行不能となりました。このため、津波浸水区間を回避し、広域的で災害に強い道路ネットワークの一部を形成します。平成23年度の第三次補正予算成立を以て、復興道路として新規事業化されました。平成28年度は、用地取得、改良工事、橋梁工事、トンネル工事を進めます。
 高田道路は、陸前高田市竹駒町相川(陸前高田IC)から大船渡市大船渡町下船渡(大船渡碁石海岸IC)を結ぶ7.5kmの自動車専用道路です。平成26年3月23日に、陸前高田ICから通岡IC間(延長4.1km)までが開通し、これにより7.5km全線が開通しました。
 広田湾をはじめ、三陸沿岸はサンマなどの沿岸漁業や牡蠣・ホタテなどの養殖漁業が盛んなことで有名です。さらに、陸前高田市では県内で最も古くからリンゴの栽培が行われており、また震災後に大規模生産が始まった水耕栽培のレタスなどは、津波で塩害を受けた地域における新しい農業として注目されています。
 そこで三陸沿岸道路の整備により、生産地から消費地までの速達性が向上し、物流機能が円滑化することで地域の産業活動を支援します。
 吉浜道路は、大船渡市三陸町越喜来(三陸IC)から大船渡市三陸町吉浜(吉浜IC)を結ぶ3.6kmの自動車専用道路です。平成27年11月29日に、三陸ICから吉浜IC間が開通しました。
 当該現道区間は、急カーブ(R≦150m)と急勾配(I≧5%)の区間が約8割を占めます。そのため速度低下を原因とする走行性の低下や正面衝突による重大事故も発生していました。この整備により線形不良が解消され、走行性・安全性が向上し、重大事故の減少が期待されます。
 また、豪雨による土砂崩れなどで通行止めが度々発生しており、近隣に迂回路が無いことから、災害時には大幅な迂回(通常時の2倍)が必要となっています。

写真 唐桑高田道路長部高架橋(延長408m)


 そこでこの区間の整備により、台風や集中豪雨自然災害による通行止めの影響を改善します。災害時の大幅な迂回が解消され、所要時間が31分短縮(約74分→約43分)します。
 吉浜釜石道路は、大船渡市三陸町吉浜(吉浜IC)から釜石市甲子町第13地割(釜石JCT(仮称))を結ぶ14kmの自動車専用道路です。この区間は平成23年度第三次補正予算成立を以て、復興道路として新規事業化されました。平成28年度は、用地取得、改良工事、橋梁工事、トンネル工事を進めます。
 この整備によって、救急医療施設への搬送時間が短縮します。この地域は、県立大船渡病院が岩手県沿岸南部における唯一の三次救急医療機関ですが、県立釜石病院から県立大船渡病院までの搬送時間が22分短縮(約53分→31分)します。
 また、現道の急カーブ・急勾配区間を回避する事で、救急患者の負担を軽減した搬送が可能となります。
 釜石山田道路は、釜石市甲子町第13地割(釜石JCT(仮称))から下閉伊郡山田町船越(山田南IC)を結ぶ23kmの自動車専用道路で、このうち釜石両石ICから釜石北IC間(延長4.6km)は平成23年3月5日に開通しました。平成28年度は、残る区間の用地取得、改良工事、橋梁工事、トンネル工事を進めます。
 東日本大震災では、津波浸水により釜石市、大槌町内の国道45号、国道283号が寸断され、孤立する地域が発生しました。 その時、鵜住居小学校、釜石東中学校の生徒達が東日本大震災の津波から避難する際に震災の1週間前に開通した釜石山田道路を利用しました。また、迂回路や物資の運搬にも利用され、「命の道」として機能を発揮しました。
 この釜石山田道路の整備によって、津波による被災区間を回避し、市街地や内陸方面との連絡が可能になります。また津波だけでなく、台風・豪雨により懸念される浸水等に対して強いネットワークが形成されます。
 一方、復興支援道路である238号釜石花巻道路(釜石道路)は、釜石市甲子町第13地割(釜石JCT(仮称))から釜石市甲子町第7地割(釜石西IC(仮称))を結ぶ6kmの自動車専用道路です。
 この区間は平成23年度第三次補正予算成立をもって、復興支援道路として新規事業化されました。平成28年度は用地取得、改良工事、橋梁工事、トンネル工事を進めます。
写真 吉浜釜石道路新鍛台トンネル貫通式(延長3,330m)

 この整備によって、沿岸部と災害後方支援拠点や内陸部を結ぶ横断軸が強化され、釜石市〜遠野市〜花巻市間における連絡時間が短縮されます。緊急輸送等の円滑化が可能となり、迅速な復旧活動や被災地域の復興を支援します。
 また釜石市内に救急車専用の緊急退出路を設置することで、搬送時間の短縮を図り、救急活動を支援します。
 被災地では、復興道路等の事業が目標通り完成することを前提に街づくり計画が進行しています。このような地域の大きな期待に応えるためにも、一日でも早い復興道路等の開通を目指して今後とも取り組んで行きたいと思います。


HOME