建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2017年1月号〉

【ZOOM UP】

人にも犬にも環境にもやさしい衛生的な警察犬訓練施設

―― 多世代が集う地域コミュニテイあふれる施設を目指す

警視庁東大和災害活動教養総合訓練施設新築


 警視庁は、警察犬の訓練所となる東大和庁舎の整備を進めている。施設は警察犬訓練および事務管理棟・犬舎棟・模擬棟・排便所棟の4棟で構成される警察犬訓練施設となる。
 この施設と機能を通じて、公共の安全と治安の維持に当たる公務の能率増進と、公衆の利便に資することを目標とする。そのためには、警察犬が健康に生活するとともに、訓練及び出動時に最大の成果を発揮すること。職員が職務に専念するため、施設の維持、犬の世話等が効率的に行えること。将来にわたって周辺環境を保全することを計画の基本理念としている。
 これに基づき、重点整備事項としては、建物群は敷地東に集中し、敷地西にできるだけ広く屋外訓練施設を配置する。特に犬舎は敷地北側から離して配置する。敷地の出入り口は、正門及び運動場側通用門の二箇所のみとする。事務室は、建物の中心に配置し、かつ、屋外訓練の様子が眺望できるものとする。車庫は、迅速に出動できる配置とする。サービス導線は、他の導線と交錯しないものとする。女性専用各室は、他と明確に分離するものとする。

 構造形式は、警察犬訓練および事務管理棟は、耐力壁の配置や適切な柱梁部材サイズ等に留意し、常時鉛直荷重、および耐震設計上合理的な躯体構造架構を計画、設計する。また、10mを超えるスパンを有することから、常時荷重に対しても有害な変形及び振動を防止する様、充分に剛性の確保された断面を用いる。
 犬舎棟・排便所棟については壁式鉄筋コンクリート造、模擬棟は鉄骨造を採用した。耐力壁付ラーメン構造において、過度な偏心や応力集中をもたらす袖壁、腰壁などには必要に応じ構造スリットを設け、建物の構造健全化を図る。また、1階床については土間コンクリートを採用する。
 地盤の基礎形式は、地盤調査結果より、関東ローム層を支持層とする直接基礎を採用する。そのため表層の埋土層が厚い箇所は地盤改良を行うなどの対策を検討する。
 特に耐震性の強化のため用途係数をI=1.25として必要保有水平耐力の割り増しを考慮し、充分な安全性を確保した建物として構造計画を行う。
 このほか、施設・設備は 環境負荷低減に向けての工夫がされており、照明や空調機器の採用は運用エネルギーや運用コスト縮減に配慮して選定する。建設地が内陸部であるため、冬期の防凍に配慮する。さや屋根(二重屋根)の採用等、暑さに強くない犬の特性に配慮し、日射負荷軽減を図る。
 床洗いによる凍結防止(乾燥)と夏・冬のベース温度確保を目的として、地中熱利用システムを検討する。
 電気や水のインフラ(自家発電機、受水槽)は、一時的な停電や断水に配慮し、太陽光発電設備の導入も検討している。
 照明器具設備は、主照明はLED蛍光灯を採用し、犬舎は紫外線の少ない器具による防虫対策を行う。廊下・便所の照明は人感センサーにて自動点灯するシステムで、省エネに配慮する。

 空調設備は、電気式空冷ヒートポンプパッケージによる個別空調方式を採用し、事務室棟は各室毎に、天井埋込カセット形(4方向吹出)、個別リモコンを設置する。
 犬舎は天井埋込型エアコンによる単一ダクト方式(天井吹出;空気循環あり)、避暑対策として大型扇風機を分散配置する。犬舎、排便所、病犬舎(床暖房)には地中熱利用パイプ循環システムを検討している。
 換気設備は、事務室、会議室は全熱交換器(第1種換気)を採用する。犬舎には第3種換気(地窓から給気)+排気ファン(有圧換気扇)を採用し、フィルターを設置する。
 衛生器具設備は、節水(洗浄タンク方式)洋便器で、小便器個別感知方式を採用。洗面器自動水栓、掃除用流しを併設する。
 排水設備は、建物内汚水雑排水合流方式とし、犬の糞尿も公共下水道に放流するが、ただし、毛を流さない対策を行う。
 犬舎棟の床洗浄は、業務用冷水+温水高圧洗浄機の利用に対応した給水+給湯カラン及びコンセントを準備し、衛生対策に万全を期している。


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