建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2017年1月号〉

夏は台風 冬は豪雪 二重苦の北海道の防御策は

―― 「建設産業支援プラン」による建設業の経営力、人材育成力の向上

── 北海道は台風の直撃が少ない地域と言われていましたが、昨年の台風は異例中の異例で、全国的にも驚きの現象でした。災害の被害状況と、道としての対処についてお聞きします
高橋 本道では2016年8月から9月にかけて、4つの台風が次々と上陸・接近するという観測史上例のない事態が発生し、全道各地で記録的な豪雨となり、4名の方々の尊い命が失われたほか、河川や道路などの社会資本をはじめ、農林水産業など産業活動にかつてない甚大な被害が生じ、近年、他に類を見ない大災害となりました。
 こうした大規模災害に対応するため、道では災害発生時に、災害対策本部指揮室の機能を担う危機管理センターを2016年7月に整備していたところであり、8月からの大雨災害においてもここを活用し、道警察や自衛隊、消防、開発局などの関係機関と連携し、迅速かつ的確な情報収集を行うとともに、ヘリコプターなどによる救助活動の調整を行うなど人命最優先の災害対応にあたることができたと考えています。
 大規模自然災害はいつどこで発生するか予断を許さないものであり、いざという時に備え、平時からの防災対策が非常に重要であると改めて認識したところです。
 道では現在、昨夏の大雨等災害の検証を進めており、この結果や2016年4月の熊本地震における教訓も活かして、今後の防災対策に反映するなど、本道のさらなる災害対策の充実強化に努めてまいります。
── 全国的に激増する外国人による観光の振興策と、マナー問題、レンタカーを使用するリピーターによる不慣れな冬道での事故など予想されるトラブルへの対応については、どんな備えがありますか
高橋 2016年の訪日外国人旅行者数は、10月末までの累計で2,005万人と、初めて2,000万人に達し、海外の皆様の訪日旅行人気を裏付ける結果となっています。
 こうした中、本道では、2015年度、来道外国人旅行者数が208万人と、初めて200万人を超えたところであり、道では国の掲げる観光先進国化に貢献するとともに、外国人観光客拡大の効果を地域経済の活性化につなげていくためには、観光をビジネスチャンスと捉え、道民の皆様の「観光で稼ぐ」という意識の醸成や、行政や観光関連団体のみならず、さまざまな民間事業者など、官民を挙げた積極的な取組を喚起する必要があることなどから、新たに500万人という高い目標を掲げたところです。
 外国人観光客の増加により、風習や習慣の違いからくるマナー問題への対応やレンタカー利用者に対する不慣れな冬道の安全運転といった課題については、マナーガイドの作成や冬道における安全運転啓発のリーフレットを配付するなど、受入体制の整備を進めており、道としては、国や北海道観光振興機構、観光協会、観光関係事業者との連携を一層強めながら、今後もアジアはもとより、欧米など世界中の観光客の皆様から、是非訪れてみたいと支持される観光地となるよう、こうした課題の解決に向けた取組を進めてまいります。
── 相次いで発表されるJR北海道の無人駅や路線廃止について、地方に与える影響やその対策について、どう考えていますか
高橋 JR北海道は、2016年11月18日に「単独で維持することが困難な線区」を公表し、今後、地域と相談していくことを発表したところでありますが、その内容は道内の都市間を結ぶ幹線や、地域を支える路線など、道内鉄道網の約半分が対象となっており、今後の進め方によっては、本道の公共交通ネットワークに重大な影響を及ぼす可能性があり、大きな危機感を持って受け止めているところです。
 JR北海道が極めて厳しい経営状況にあることは認識しておりますが、鉄道は道民の皆様の暮らしや、産業経済を支える重要な公共交通機関であります。
 JR北海道の発表を受け、直ちにJR北海道島田社長とお会いし、全道の公共交通ネットワークを形成する公共交通機関としての使命をしっかりと認識し、その役割を果たすことや、拙速な見直しを進めることなく、道や沿線自治体をはじめ関係者と十分協議し、地域との信頼関係のもとで対応すること、さらには管理コストの削減など、徹底した自助努力を行うとともに、経営状況などについて説明責任をしっかりと果たすことなど、地域の実情を踏まえた慎重な対応を強く申し入れたところです。
 道としては、地域公共交通検討会議の中に、新たに設置した「鉄道ネットワークワーキングチーム」において、鉄道網のあり方や課題への対応策について、集中的に議論を行いながら、JR北海道への申し入れや国に対して必要な要請等を行っていくとともに、今後行われるJR北海道と地域の協議にも参画するなど、地域交通の確保に向け、積極的に取り組んでまいる考えです。
── 北海道をはじめほとんどの地方県は、建設産業が重要な地域産業となっていますが、その浮沈は小泉内閣による構造改革から民主政権までの間に見られた通り、公共投資のあり方次第です。その公共投資は、現政権の景気対策であるアベノミクスの第二の矢として規定されていますが、道内の建設業における業況の動向及び就業の実態と、道としての政策について伺います
高橋 本道の建設業は、社会資本の整備はもとより、災害時の対応や除雪など、地域の安全・安心や経済・雇用を支えている重要な産業ですが、これまでの建設投資額の大幅な減少に加え、加速する人口減少や少子高齢化といった社会経済情勢の中、道の最新の業況動向調査においても受注、収益ともに減少傾向となっているなど、厳しい経営環境に置かれています。
 また、総務省の労働力調査によると、道内の平成27年度の建設業就業者数は、ピークだった平成7年から9年の約35万人と比べ、約2/3の約22万人となっており、年齢構成については50歳以上が全体の約半数を占める一方、29歳以下は約10%となって、高年齢化が進行していることから、次世代への技術・技能の承継が困難となって、公共工事の品質確保など、建設業本来の役割が果たせなくなることが懸念されています。
 このような中、道では「建設産業支援プラン」に基づき、経営力や人づくりの強化などへの支援に取り組んでいます。
 北海道知事
 高橋 はるみ
 たかはし・はるみ
 昭和 29年 1月6日生まれ 富山県出身
 昭和 51年 3月 一橋大学経済学部 卒業
 昭和 51年 4月 通商産業省入省
 昭和 60年 大西洋国際問題研究所(在パリ)研究員
 平成 元年 6月 通商産業研究所総括主任研究官
 平成 2 年 7月 中小企業庁長官官房調査課長
 平成 3 年 6月 工業技術院総務部次世代産業技術企画官
 平成 4 年 6月 通商産業省関東通商産業局商工部長
 平成 6 年 7月 通商産業省大臣官房調査統計部統計解析課長
 平成 9 年 1月 通商産業省貿易局輸入課長
 平成 10年 6月 中小企業庁指導部指導課長
 平成 12年 5月 中小企業庁経営支援部経営支援課長
 平成 13年 1月 経済産業省北海道経済産業局長
 平成 14年12月 経済産業省経済産業研修所長
 平成 15年 2月 経済産業省退官
 平成 15年 4月 北海道知事

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