建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2016年11月号〉

札幌市東雁来雨水ポンプ場建設工事概要紹介

 日本下水道事業団 北海道総合事務所
 次長
大平 英人
 おおひら・ひでと/昭和38年生まれ
 昭和61年3月 北海道大学工学部卒業
 昭和61年4月 札幌市役所採用
 平成22年4月 札幌市環境局環境都市推進部環境産業推進担当課長
 平成26年4月 札幌市建設局下水道河川部下水道計画課長
 平成28年4月 日本下水道事業団北海道総合事務所次長(現職)

外観完成予想パース

1.はじめに

 札幌市は、札樽自動車道、国道274号、国道275号に接した交通利便性に優れた北東部において、平成8年から東雁来第2土地区画整理事業(約210ha)に着手し、豊かな自然環境と調和したまちづくりを進めています。この区画整理事業に合わせて、下水道の施設であります、東雁来雨水ポンプ場の建設を進めています。
 このポンプ場は、雨水対策として整備されるもので、土地区画整理事業内に加えて、既存市街地での雨水量増大にも対応した大型施設です。建設に係る業務(設計、発注、施工管理)は、日本下水道事業団が受託しました。
 受託した建設工事は平成25年度に着手し、平成29年度に完成予定となっています。現在は、躯体工事及び吐出水槽の築造工事を行いながら、機械・電気など設備工事に着手するなど、完成に向けて順調に工事が進んでいます。本稿では、本ポンプ場及び建設工事の概要についてご紹介させていただきます。

2.東雁来雨水ポンプ場の概要

表-2 全体工程

 札幌市の下水道普及率は、99.8%に達し、汚水処理はほぼ整備済みとなっていますが、雨水処理に関しては、雨の降り方によって浸水被害が発生することもあり、札幌市では10年確率35mm/hを目標として計画的に雨水対策を進めています。
 この雨水対策の一環として整備される東雁来雨水ポンプ場の計画諸元は表−1のとおりで、土地区画整理事業内の敷地約1.1haに、地上2階、地下3階建て、雨水ポンプ5台で毎秒10.6m3の処理能力を有し、10年確率の降雨に対応した施設となります。
 札幌市のポンプ場としては、平成5年4月に稼働した厚別川雨水ポンプ場以来、25年ぶりとなる大型処理施設の建設となります。
 また、雨水ポンプ場の建設と合わせ、札幌市では雨水拡充管の整備も行います。雨水拡充管は、既設の下水管の能力を増強するため、既設管の下部に新たに設置する大口径の雨水管で、φ1,000mm〜2,600mmの管を3.4km程設置する予定となっています。
 雨水ポンプ場と雨水拡充管の整備により、土地区画整理事業内210haに加え、既存市街地209ha、計419haの排水面積をカバーし、札幌市が進める安全安心な生活環境の確保の一翼を担うことになります。
図-1 ニューマチックケーソン概要図

3.建設工事の概要

 建設工事は、平成25年に着手し、工程は表−2のとおりで、平成29年度末の竣工を予定しています。
 既に地下部分の土木工事が終了し、現在は吐出水槽、放流渠の土木工事及び上屋建築工事を進めています。
 雨水ポンプ棟地下躯体部の築造では、掘削深さ約27mと深いこと、地下水位が高いことなどから、ニューマチックケーソン工法を採用しました。
建設中の地上部
地下のポンプ井

 ニューマチックケーソン工法は、ケーソンの下部に作業室を設け、そこに圧縮空気を送り込んで地下水の浸入を防ぎながら掘削作業を行い、地上では躯体を構築し自重によりケーソンを沈めるというサイクルを繰り返して最終的な地下構造物を造る工法です(図−1)。振動や騒音が少ないことも大きな特長です。
 ケーソンの最下端の刃口面積は約2,100m2(61m×35.1m)あり、ニューマチックケーソンで築造する構造物としては、北海道内で最大級でしたが、大きなトラブルもなく終了することができました。
 今後になりますが、現在進めている地上部分の構造物が完成次第、機械・電気設備を設置していきます。
 機械設備である雨水ポンプについては、ガスタービン式と電動式のポンプを設置します。また、受変電設備、動力制御設備などの電気設備についても、順次設置を行っていきます。
 引き続き、発注先とも連携協力しながら、円滑に、かつ安全に工事を進め、平成29年度末の竣工を目指していきたいと考えています。



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