建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2016年11月号〉

長安口ダム改造事業の概要

 平成24-28年度 長安口ダム施設改造工事(1期工事)
 鹿島建設・日立造船JV 現場代理人 椿 治彦
 監理技術者 鷲野 大矢
  
 平成26-30年度 長安口ダム施設改造工事(2期工事)
 鹿島建設 現場代理人 鈴木 聰
  
 平成27-30年度 長安口ダム洪水吐ゲート設備工事(3期工事)
 IHIインフラシステム 現場代理人 東谷 俊彦
  
 平成28-31年度 長安口ダム選択取水設備工事(4期工事)
 IHIインフラシステム 現場代理人 高橋 貞仁











写真1
 長安口ダムでは、洪水調節能力の増強と洪水後の濁水長期化の軽減に向け、大規模な施設改造工事が進んでいます。まず、洪水調節機能強化として、既設堤体を大きく2箇所切削・撤去し、そこに新たに洪水吐きを2門増設します。また、濁水長期化対策として、堤体上流左岸側にある発電取水口に選択取水設備を設置する工事を実施します。平成28年9月現在で、これらの工事内容に対して、洪水吐き増設は平成31年3月、選択取水設備設置は平成32年3月の事業完成に向けて鋭意施工を進めています。
 1期工事は、平成24年9月に鹿島・日立造船異工種JVが受注しています。
 工事対象は図-1の@〜Bで、堤体切削を実施するための仮締切を兼ねる予備ゲート設置が主要工事内容です。堤体切削実施のための仮締切(予備ゲート)は、供用開始後はそのまま修理用ゲートとなる本設の構造物です。この予備ゲートを据え付けるための予備ゲートピア構築を除く、ほとんどの工種が、水深35mでの潜水作業を伴い、多くの困難が予想されるなか、事前の準備や様々な機械化を図ることで、現在のところ工程通りに予備ゲート設備の施工は進捗しています。
 2期工事は、平成26年8月に鹿島建設が受注しています。工事対象は図-1のC〜Dで、既設堤体の切削、洪水吐きの新設、減勢工の増設が主要工事内容です。堤体切削は最大高さが29m、最大幅が11mであり、既往最大の規模です。現在、2カ所中1箇所の切削撤去が完了し、洪水吐きゲート設置に向けてコンクリートを打設中です(写真-1)。設計洪水流量が非常に大きいこともあり、減勢工の壁高は33m、幅55mとこちらも非常に規模が大きく、減勢工背面にはCSGを施工する構造となっており、これにより壁の構造が簡素化され、コストダウンが図られています。コンクリートの打設数量は全体で10万m3であり、全て購入生コンで打設します。また、CSGの打設数量も9万m3に達します。減勢工は非出水期限定の施工となるため、限られた期間での効率の良い施工が求められています。

図-1

 3期工事は、平成27年8月にIHIインフラシステムが受注しています。工事対象は図-1のE〜Fで、洪水吐きゲート設備(2門分)の設計・製作・据付、および既設主ゲート設備(6門分)の補修(補強)が主要工事内容です。
 洪水吐きゲート設備の扉体の大きさは高さ19m、幅10mもあり国内最大の規模です。このような大きな扉体を安定的に作動させるために3段構造(図-2)としていますが、この特殊性に十分配慮して設計・製作・据付を行っていく必要があります。現場における施工は本体土木工事と共有エリアとなるため作業間調整を十分に行い協力しながら効率よく工事を進捗させることが求められています。現在は工場製作段階であり、年末から本格的に現地据付作業がスタートします。
 既設主ゲート設備は設備そのものが運用中であるため、補修(補強)作業には制限があります。作業可能な期間が非出水期(10月〜5月)に限定されているとともに、緊急時の操作を考慮して1〜2門/年しか施工することができないため、確実に所定の期間内で作業を完了させることが求められています。現在は1門分の作業が完了しており、残りの補修作業を複数年にわたって施工する予定です。
 4期工事は、平成28年8月にIHIインフラシステムが受注しました。工事対象は図-1のGで、既設除塵設備等の撤去作業、および新たに選択取水設備の設計・製作・据付が主要工事内容です。現場作業の大半が水中施工となりますが、出水期における作業制限や発電運用との調整があり、限られた作業可能期間内にて施工する必要があります。また発電設備に影響を与えないよう仮設スクリーンを設置する、等の防護対策にも配慮しなくてはなりません。このような制約条件のある中で、安全かつ確実に施工できるよう事前計画等を充実させ、効率よく工事を進捗させることが求められています。現在は受注直後ということもあり、仕様の決定や設計業務をメインに行っています。
図-2

 以上紹介した工事の他に、ダム上流における堆砂除去工事が、非出水期を中心に地元業者によって進められています。除去された堆砂の一部は、減勢工背面のCSGおよび埋戻し材として転用されます。
 多くの受注者が錯綜する再開発の現場ですが、安全協議会を設置し、工程調整、安全管理を実施し、地元住民の期待に応えるべく各社一丸となって邁進していく所存です。



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