建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2016年9月号〉

中国地方の発展を促す道路づくり

―― 地域の安全性向上・経済活性化を促す山陰道の整備効果

 国土交通省 中国地方整備局
 山口河川国道事務所 所長
 廣川 誠一

図-1 山口県内の山陰道の整備状況(平成28年4月時点)

1.はじめに

 山口河川国道事務所は、山口県内全域を所掌管内とし、河川事業については一級河川である佐波川(山口市〜防府市)の改修及び維持管理と島地川ダムの維持管理を行っており、道路事業については、一般国道2号、9号、188号、190号、191号(一部除く)の総延長465.8kmを管理区間とし、改築及び維持管理、交通安全対策事業を実施するなど、多様な事業を行っています。

2.山陰道の概要

 山陰道は、鳥取県から山口県の日本海側を結ぶ全長約380kmの高規格幹線道路であり、平成28年4月時点で全体の約4割にあたる約164kmが開通しています。山口県においては、全長約115kmのうち、一般国道191号萩・三隅道路の約15kmが平成23年に全線開通しています。現在は、一般国道491号長門・俵山道路の整備を進めているところであり、さらに、平成28年度より、新規事業として一般国道491号俵山・豊田道路に着手したところです。

3.山陰道の整備効果

図-2 長門・俵山道路施工状況(長門市深川湯本(赤ノ谷)から長門市街方面を望む)

1)長門・俵山道路
 長門・俵山道路は、長門市俵山小原から同市深川湯本に至る延長5.5kmの道路です。
 長門市俵山地区と長門市中心部を結ぶ主要地方道下関長門線の大寧寺峠周辺では、要防災対策箇所や異常気象時通行規制区間が存在するほか、急カーブ・急勾配など道路線形不良箇所が連続しています。
 さらに、俵山地区へ通じる全ての道路網には異常気象時通行規制区間が存在しているため、豪雨時には俵山地区の住民約1,300人が孤立する恐れがあります。
 平成21年7月には中国・九州北部豪雨により、俵山地区と長門市内を結ぶ主要地方道下関長門線の大寧寺峠では1,660時間(約70日)の通行止めが発生し、大幅な迂回を強いられました。
 長門・俵山道路の整備によって、並行する一般国道491号や主要地方道下関長門線の代替路として、災害時における俵山地区の孤立の回避、線形不良区間解消による円滑な救急医療活動の支援など、地域の安全・安心の確保といった効果が期待できます。
 平成31年度の開通に向け、平成28年度は改良工事、橋梁工事、トンネル工事等を推進しています。
2)俵山・豊田道路
 俵山・豊田道路は、平成28年度より新規事業として着手しており、長門・俵山道路の起点部である長門市俵山小原から下関市豊田町八道に至る延長約13.9kmの道路です。
 長門市から下関市を結ぶ一般国道491号や主要地方道下関長門線は事前通行規制区間を有し、当該区間において通行止めが5年間(H22〜H26)に11件(総規制時間363時間)発生するなど、防災上課題のある区間です。
 また、俵山温泉IC(仮称)付近の俵山地区は、俵山温泉等の観光地が存在し、異常気象時の孤立により、経済活動に影響を及ぼす可能性があります。
 俵山・豊田道路の整備によって、災害時の代替路確保だけでなく、事業中の長門・俵山道路との連携により、下関市への搬送ルートが強化されることによる長門市主要産業の水産業・水産加工業の企業活動の支援や、第3次救急医療機関へのアクセス強化、さらには高速ネットワークの整備による九州から山口県北部への広域的な観光周遊道路の形成による観光交流人口の拡大など、山陰地方の高規格幹線道路の一部を形成する道路として、広域交流の促進及び、地域活性化に寄与することが期待されます。

図-3 山陰道の整備効果(広域観光周遊ルートの例)

4.今後の取組

 山口県における山陰道の未整備区間については、平成27年4月に、「俵山〜豊田間」「三隅〜長門間」「大井〜萩間」「木与付近」「小浜〜田万川間」の5区間、計約46kmが優先整備区間に選定されました。これらの区間は未整備区間の中でも特に課題が大きく、優先して整備すべき区間として選定されたものであり、今後、社会資本整備審議会中国地方小委員会において、計画段階評価を順次進めていきます。計画段階評価とは、公共事業の効率性及びその実施過程の透明性の一層の向上を図るため、新規事業化の妥当性を審議する新規事業採択時評価の前段階において、地域の課題や達成すべき目標、地域の意見等を踏まえ、複数ルート案の比較・評価を行うとともに、事業の必要性及び事業内容の妥当性を検証するものです。
 俵山〜豊田間については、既に計画段階評価・新規事業採択時評価を経て、前述のとおり平成28年度に新規事業化しています。残る4区間についても順次計画段階評価及び新規事業採択時評価に向けた検討に取り組んで参ります。

図-4 道路調査の流れ

5.おわりに

 山陰道をはじめとする道路事業については、地域の皆様の安全・安心に資する整備効果が早期に発揮できるよう、地域の皆様及び地元自治体をはじめとする関係機関のご協力を頂きながら取り組んで参りますので、引き続きご理解・ご支援のほどよろしくお願いいたします。



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