建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2016年8月号〉

地域住民の方々が、安心して暮らせる強い堤防の構築

 H27激特・若宮戸築堤(その1)工事
 渡辺建設株式会社 現場代理人 石戸 一博

堤防の構造

はじめに

 本施工箇所である茨城県常総市若宮戸地区は、平成27年9月に発生した関東・東北豪雨における洪水により、甚大な災害が発生しました。本工事は、溢水した箇所において、同様の豪雨が再び起こった場合に被害が発生しないよう、堤防を整備するための工事です。

工事概要

 本工事場所は、鬼怒川左岸の25kp付近で、全体工事延長L=940m、盛土量V=99,700m3、鋼矢板L=880mで、2工区に分かれており、2業者にて施工を行っています。
 まず1期工事として、高さ約3.2mまで盛土し、河川水の浸透対策としてL=10m〜12.5mの広幅鋼矢板を打込みます。
 工事の進捗状況は現在盛土を行っているところであり、盛土完了箇所の沈下状況を確認したうえで、鋼矢板を打込み開始する予定です。
 今回の工事は被災箇所の復旧工事であり、出水期間中も施工することから、出水時の避難計画を作成するなど、非常時の対策を計画したうえで施工を行っています。
 2期工事は、本工事完了後、盛土の沈下が落ち着いた後に、着手(別途発注)される予定となっております。

築堤材料について

 築堤材料として求められる品質として、
1. 粒度分布において細粒分15〜50%。
2. クラックの危険がない半透水性材料の粒度範囲内。
3. 粒径100mm以内で、不純物等を含まないこと。
4. コーン指数qc=400kN/u以上。
 以上4項目の観点から、本工事では、砂質土(鬼怒川河川敷)・粘性土(公共事業発生土)・礫質土(砕石)の3種類の材料を、堤防に適した比率で調整して築堤土を造り、堤防の盛土を施工しています。
 なお、土砂混合は、築堤材として均質に混合するため、NETIS登録されたプラントを設置して行っており、また、適切に混合されているか、粒度・含水比・コーン指数を日々チェックし、作業を進めていくことで、築堤材料としての品質の確保に努めています。

盛土の締固め管理について

 盛土の締固め管理は、従来RI法密度管理試験・砂置換法密度管理試験等で行っていましたが、作業の効率化を図るため、今回はGNSS(GPS・自動追尾転圧)締固め管理システムを用い、あらかじめ試験盛土で定めた転圧回数にて締固めを行い、層毎に面的管理を行っています。
 このシステムは、締固め機械の位置情報をもとに、オペレーターが運転席付近に設置されたモニターを見ながら、転圧回数の過不足・未転圧を確認し転圧作業を行うため、層毎の品質管理が、サンプル検査でなく、面的な管理ができ、盛土の品質向上に繋がります。また、熟練オペレーターでなくても、規定の転圧回数を過不足なく施工できるメリットもあります。なお、5,000m3毎に1回の頻度で、補完的に砂置換法密度管理試験を実施することで、更なる品質向上に努めています。

土砂混合プラント 盛土転圧状況

地域とのコミュニケーションについて

工事新聞

工事見学会

 若宮戸築堤工事では、工事状況について地域の皆様にお知らせするための工事新聞を、月一度のペースで発行しています。また、発注者である国土交通省関東地方整備局下館河川事務所にご協力を頂き、発注者と施工業者がチーム若宮戸として一体となり、沿川住民を対象とした工事見学会を開催しています。既に盛土開始前、盛土施工時の2回開催し、ほとんどの方から「良かった」・「また参加したい」との意見を頂いており、今後、鋼矢板打込作業時・工事完成時に、見学会を開催したいと考えています。また、被災を受けた近隣の小・中学校の見学会も実験等まじえながら行っており、子供達や先生にも好評いただいております。
 このような活動を通して、現場の進捗状況と、品質・安全・環境に配慮した施工やICTを使った近年の土木技術等を、地域住民の方々に直接確認して頂き、良好なコミュニケーションを保ちながら工事を進めています。

おわりに

 若宮戸地区の鬼怒川には、河畔砂丘など、長い年月を掛けて形成された自然が残されています。地域住民の方々が、この自然豊かな鬼怒川とともに安心して生活できるよう、1日でも早い工事完成を目指し、関係者が一体となって努力する所存であります。



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