建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2016年8月号〉

「27年9月関東・東北豪雨」により国と自治体の連携で
「鬼怒川緊急対策プロジェクト」がスタート

――総事業費600億円を集中投下

 国土交通省 関東地方整備局
 下館河川事務所 所長 里村 真吾

 私たち下館河川事務所は、平成27年9月に発生した関東・東北豪雨による鬼怒川における被害の復旧のため、「鬼怒川緊急対策プロジェクト」に着手し、ハードとソフト両面から対策に取り組んでいます。
 「平成27年9月関東・東北豪雨」では、鬼怒川は「鬼怒川水海道水位観測所」において観測記録史上、第一位の水位を記録する出水が生じ、堤防決壊、溢水により甚大な被害をもたらしました。また八間堀川でも、堤防決壊等により甚大な被害が発生しました。
 出水の特徴は、鬼怒川水海道水位観測所において、約5時間にもわたって計画高水位を上回る水位が継続し、鬼怒川の氾濫水が八間堀川にも流入したため、ここでも計画高水位を上回る水位を継続する状況となりました。
 この結果、鬼怒川、八間堀川沿川における被害状況としては、鬼怒川では1箇所の堤防決壊、7箇所の溢水が生じたほか、堤防の漏水や護岸崩壊などの被害が発生。八間堀川では3箇所の堤防決壊や、護岸崩壊などの被害が確認されました。
 このため、特に被害の大きかった鬼怒川下流域においては、今後「平成27年9月関東・東北豪雨」が再び起こった場合に被害が発生しないよう、河川激甚災害対策特別緊急事業等により、堤防整備(かさ上げ・拡幅)、漏水対策、河道掘削等を実施するとともに、八間堀川で堤防整備(かさ上げ・拡幅)、河道の拡幅等を実施するなど、緊急的・集中的に治水対策を実施することになりました。

『鬼怒川緊急対策プロジェクト』の概要

 このプロジェクトは、鬼怒川下流域(茨城県区間)において「水防災意識社会」の再構築を目指し、国、茨城県、常総市など7市町が主体となり、ハードとソフトが一体となった緊急対策プロジェクトとして実施するものです。
 ハード対策としては、再度災害防止に必要な河川整備を、緊急的、集中的に実施します。
鬼怒川にかかる直轄事業としては、河川激甚災害対策特別緊急事業、河川災害復旧事業、河川大規模災害関連事業に着手しています。
 八間堀川等は補助事業等として、茨城県が主体的に整備します。主要事業は、河川改修事業、河川災害復旧事業(補助・県単)、河川等災害関連事業などに着手しています。
 河川激甚災害対策特別緊急事業は、洪水等による激甚な災害に基づき、概ね5年間の緊急的な集中投資による河川改修により、再度災害防止を図るもので、堤防整備(堤防のかさ上げ、拡幅)、漏水対策などを行います。実施期間は平成27年度〜平成32年度までの計画です。

5月9日 三坂復旧状況(大型連節ブロック設置) 5月11日 若宮戸復旧写真(盛土)

 河川災害復旧事業は、洪水等により被災した施設を、原則として原形に復旧する事業です。そこで決壊した堤防の復旧(堤防のかさ上げ、拡幅)、漏水が発生した堤防の対策などを行っています。実施期間は平成27年度〜平成28年度の2年間で完了する計画です。
 河川大規模災害関連事業は、堤防の整備水準を大きく上回る大規模な洪水による災害が発生した河川において、被災施設の原形復旧のみでは、必要な治水安全度が得られない場合に、河道掘削などの河川改修により、再度災害防止を図る事業です。したがって、事業内容は河道掘削等で、実施期間は平成27年度〜平成32年度までの6年間を予定しています。
 八間堀川等の河川改修事業は、茨城県が補助事業で行うものですが、被災地において再度災害の防止対策を迅速に実施し、住民の安全・安心の確保に資するものです。そこで堤防整備(堤防のかさ上げ、拡幅)、河道拡幅等が行われています。
 河川災害復旧事業は、直轄事業と同様に被災した施設を原則として原形に復旧するもので、決壊した堤防の復旧(堤防のかさ上げ、拡幅)等が行われます。
 河川等災害関連事業も、原形復旧のみでは効果が限定される場合等において、未災箇所を含めて改良復旧することにより、再度災害を防止するもので、堤防の整備(堤防のかさ上げ)、河道の拡幅等が行われています。これらの他、県単独での河川災害復旧事業も行われます。
 一方、ソフト対策としては、国と沿川自治体が連携・協力し、住民の避難を促すための対策を実施しています。
 主な実施内容は、タイムラインの整備とこれに基づく訓練、市町、水防団、地域住民等が参加する危険箇所の『共同点検』の実施、ハザードマップ及び家屋倒壊危険区域の公表と、住民への周知とこれに基づく訓練、関係機関の参加による広域避難に関する仕組みづくりなどに取り組んでいきます。


5月11日 減災対策協議会


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