建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2016年6月号〉

日本海と太平洋を結び地域間交流の強化を図る中部横断自動車道

――大地震にも強くしなやかな国土を形成する

 国土交通省 関東地方整備局
 甲府河川国道事務所 所長
 尾松 智

図1 中部横断自動車道路線図
図3 中部横断自動車道の整備に伴う脆弱なネットワークの解消
図4 中部横断自動車道と新山梨環状道路

 甲府河川国道事務所では道路事業としては、山梨県内の一般国道20号、52号、138号、139号の改築および維持管理と中部横断自動車道(富沢IC〜六郷IC間)の建設等を担当しています。
 中部横断自動車道は、静岡県静岡市を起点に山梨県甲斐市を経由して、長野県小諸市に至る延長約132kmの高速自動車国道です。このうち山梨県区間(富沢IC〜六郷IC間)の延長28.3kmを直轄事業として、現在、整備を進めているところです。
 内陸部の産業は、東アジアの発展などに伴い、輸出の依存度が高まっており、物流に重要な国際拠点港湾や重要港湾への円滑なアクセスが課題となっております。この道路が整備されることにより、現在整備が進められている新東名高速道路をはじめ、中央自動車道、上信越自動車道が接続されミッシングリンクを解消することで、日本海および太平洋の臨海地域と長野・山梨県との連携・交流を促進するとともに、沿線住民が安心して暮らせるネットワークの構築、また、日本海側と太平洋側の国際拠点港湾等と内陸部が連結され、広域的な物流体系の確立や広域的観光ゾーンの開発・支援等、強くしなやかで国際競争力のある国土の形成に寄与するものと期待されています。(図2)
 山梨県区間の路線南部に位置する峡南地域は、地形や地質等の特性から、大雨などの際に通行止めを実施する事前通行規制区間が多数あり、通行止めの際には孤立する集落が発生することから、代替道路の確保が急務となっていますが、中部横断自動車道によって、孤立集落の解消が期待されます。(図3)
 更に首都圏における環状ネットワークを形成するとともに、首都圏防災時の代替路としても機能します。
 とくに、M7クラスの地震が、今後、30年以内に発生する確率は70%程度と推定されており、おおむね100〜150年の間隔で発生していることから、今世紀前半での発生が懸念されています。そうした首都圏直下型地震や東海地震等の災害時は、既存の東名高速道路利用のルートに環状ネットワーク利用のルートが加わることで、中京圏と関東圏間の災害復旧や被災支援が強化されます。

図5 中部横断自動車道等の整備に伴うストック効果

 すでに開通している区間では、いわゆるストック効果として、中部横断自動車道や新山梨環状道路の一部開通により、沿線2市1町(南アルプス市、中央市、昭和町)において、沿道周辺に工場立地が進み従業者数が整備前(平成11年)と比較し、12,000人増加(平成24年)するなど産業振興や雇用拡大に貢献しています。(図5)
 現在の進捗状況は、山梨県の増穂IC〜双葉JCT間および長野県の佐久南IC〜佐久小諸JCT間が開通しており、新清水JCT〜増穂ICおよび(仮称)八千穂IC〜佐久南IC間は甲府河川国道事務所、長野国道事務所、NEXCO中日本が整備を進めているところです。



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