建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2016年5月号〉

石見の国のみちづくり「つなげよう山陰道!」

 国土交通省 中国地方整備局
 浜田河川国道事務所 所長
 浜崎 宏幸

図-1 浜田河川国道事務所の事業区間 位置図

1.石見(管内)の概要

 浜田河川国道事務所は、島根県西部の石見地方のうち大田市と江津市の市境から山口県境、広島県境に至る範囲を管轄し、北は日本海に面しています。当該地域は島根県の面積の約半分、人口の約1/4を占めており、近年は人口減少や高齢化が顕著になってきています。「いわみ」の名にあるように、山が海まで迫り、平地が少なく、災害が起こりやすい地形、地質で、降水量も多く、幾度となく洪水などに見舞われています。
 一方、石見国は「石州」とも呼ばれ、「石見神楽」のほか、平成26年11月にユネスコ無形文化遺産に登録された「石州半紙」や日本三大瓦の一つ「石州瓦」でも有名です。なお当事務所では、この石州瓦の製造時に発生する規格外瓦をコンクリート構造物に活用する研究も行っています。

2.つなげよう山陰道

図-2 浜田・三隅道路 位置図
(1)一般国道9号浜田・三隅道路

写真-1 浜田・三隅道路(折居地区から三隅地区を望む)
写真-2 施工中の西村高架橋
 浜田市原井町から浜田市三隅町の間で整備している浜田・三隅道路は、国道9号にある多数の事故多発箇所や防災対策箇所の解消、主要渋滞ポイントである熱田交差点の渋滞緩和等を目的とした延長14.5kmの自動車専用道路であり、山陰自動車道の一部として事業を進めています。
 平成27年3月14日にはこのうちの原井ICから西村IC間の8.1kmを開通しました。この区間の開通により、浜田市内の渋滞箇所が解消され、浜田〜益田間は10分程度の大幅な時間短縮が図られました。残る西村ICから石見三隅IC間の6.4kmを今年度内の開通を目指して舗装工事をはじめとした最終段階の工事を進めています。また、本事業において、石州瓦の規格外瓦を細骨材に使用したコンクリートにより平成25年度にボックスカルバート、平成27年度にPC跨道橋で施工をしています。

写真-3 廃瓦骨材を使用したPC橋(折居跨道橋) 写真-4 廃瓦を小さく砕いた状態 写真-5 トンパックにて保管されている
廃瓦細骨材
(2)一般国道9号三隅・益田道路
図-3 三隅・益田道路 位置図

 浜田市三隅町から益田市遠田町の間で整備を行う三隅・益田道路は、国道9号の代替機能の確保と広域医療の連携強化、地域経済の活性化等を目的とした延長15.2kmの自動車専用道路であり、山陰自動車道の一部として事業を進めています。
 平成24年度に新規事業化され、平成26年度用地買収に着手し、平成27年11月には益田市遠田において起工式を実施し、橋梁下部工事や工事用道路工事に着手しています。今年度は引き続き橋梁下部工事の他、道路改良工事、トンネル工事にも着手していくこととしています。

写真-6 遠田IC付近 完成予想写真
(3)一般国道9号福光・浅利道路

 大田市温泉津町福光の石見福光ICから江津市松川町の浅利IC(仮称)に至る延長6.5kmの福光・浅利道路は本年4月に新規事業に採択された高規格自動車専用道路で、上記の区間と同様に山陰自動車道の一部として事業を進めていきます。
 この道路の事業化により、浅利IC(仮称)から江津IC間の一部現道活用区間は残るものの、東西に長い島根県内の松江から益田に至る高規格道路ネットワーク整備がすべての区間で始まることとなり、完成すれば移動時間の短縮と定時制の確保、走行安全とリダンダンシーが確保されることになります。
 また、中間地点にある青波IC(仮称)には道の駅「サンピコごうつ」が隣接し、浅利ICには江津工業団地が隣接するなど、更なる地域活性化も大いに期待されている道路です。このため、本年度当初から早期開通を目指し測量調査等に取り組んでいます。

(4)維持管理
写真-7 津和野町における国道9号除雪作業

 国道9号(江津市黒松町から山口県境までの133.0km)と国道191号(国道9号との交差点(中吉田交差点)から山口県境までの15.4km)を管理しています。この区間において道路パトロールや橋梁等の道路構造物の点検、補修及び歩道整備などの道路整備を推進しています。
 また、国道9号の山口県境にある津和野町付近では、標高が高く急勾配が続くため冬季においては、除雪および路面凍結防止対策を行い安全で安心な交通確保に努めています。

3.おわりに

 昨年3月に開通した浜田・三隅道路により、地域の道路利用者から「配送時間が短縮し定時性が確保され、計画的効率的な配送が可能となり、燃費も向上した。」との意見を頂きました。
 また、江津市の工業団地からは「道路整備に加え、河川が整備されたことによって洪水の危険が減少し、水資源が確保されるとともに、湿地が豊かな農地や、安全な居住区域になり、企業立地が進み、雇用が拡大した。」との意見も頂いています。
 当事務所では、持続可能で活力ある石見の地域づくりと安全安心の実現をめざした、「まもろう石見」「つなげよう山陰道」をテーマに社会資本の着実な整備と適切な維持管理に向け、河川事業、道路事業を推進しています。当石見地方が将来に向かって夢や希望が描けるように「のばそう石見」を合い言葉に努力して参ります。



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