【ZOOM UP】 老朽化の進んだキャンパスを再整備―― 医師不足に対処するため定員増へ札幌医科大学キャンパス再整備
札幌医科大学の主な教育研究施設は、昭和40年代前半に建設され、平成30年度までに耐用年数が到来するなど老朽化が著しく、耐震基準を満たさない建物も存在している。
これによれば、施設整備に当たっては、今後とも教育・研究・診療の充実と地域医療への貢献を果たすため、地域医療に貢献する人間性豊かな医療人を育成するための「教育機能」、高度先進医療の開発など、国際的・先進的な研究を推進するための「研究機能」の充実強化を図るとしている。 これに基づき、教育機能については将来の北海道の地域医療を担う強い意志を持ち、質の高い学生を安定的に確保するため、「魅力ある大学づくり を」目指し、高い倫理観を持った人間性豊かな医療人を育成するための教育を展開する。 地域医療を支える医師を増やすため入学定員の増員や助産学専攻科の設置に対応した整備を図るなど、教員、学生数に見合った適切なスペースを確保する。 少人数教育や臨床技能学習、チーム医療教育や教養教育における両学部共通講義・実習など、時代の変化やニーズに応じた質の高い教育環境を確保する。 視聴覚設備や情報設備の活用など、効果的な教育成果が発揮できる教育環境を整える。学生が自主的に勉学できる学習環境を整える。学生のための福利厚生機能やメンタルケアの充実を図ることとしている。 研究機能については、世界水準の基礎研究及び臨床研究を推進するとともに、医療・保健・福祉に関する地域ニーズの高い研究に取り組み、成果の積極的な社会還元に努める。 研究及び研究支援機能を充実するための研究環境を整える。がん治療や再生医療などの最先端の医科学を活用した質の高い教育研究の充実を図る。 地域や企業等からの受託研究、共同研究など、産学官・地域連携を推進するための環境を整える。安全面、衛生面に配慮し、適切なバイオハザード対策を備えた実験環境を整える方針だ。 したがって、施設整備に当たっては、平成30年度までに耐用年数を迎える施設を原則対象とし現有施設の有効活用を図る。平成30年度以降には耐用年数を迎えるが、耐震基準を満たしていない施設や建築工程の関係で、解体が必要な施設は整備を行う。 特にRIセンター、フロンティア医学研究所及び屋内体育施設などは、耐震基準を満たしていない施設であり安全性を確保する。 建物面積の算定基礎となる学生の収容定員については、医学部は大学設置基準による医学部定員の上限である750人(1学年125人)とし、平成24年度に開設する助産学専攻科の定員数を反映させる。なお、保健医療学部及び大学院については、現在の定員数とする。 整備手法については、設計・施工一括発注方式、PFI方式、定期借地権方式での整備は馴染まないため、道が自己資金で建物を建設する従来方式により整備を行うこととする。また、発注にあたっては、設計段階から民間企業の提案によるプロポーザル方式を採用し、様々な工夫や新しい技術・ノウハウを取り入れることにより、トータルコストの抑制を図ることとする。 維持管理費の縮減施設整備にあたっては、建物の断熱化、自然エネルギーの積極的な利用、省エネルギー対応の機械設備の導入、老朽化した供熱システムや配電システムの更新などにより、エネルギー効率の向上を図り、維持管理費の縮減を図ることとしている。
札幌医科大学教育研究施設T改築工事・教育研究施設V改築工事概要 【共通事項】
札幌医科大学は、医師をはじめとする地域に貢献する医療人を育成するとともに、先進医学・保健医療学の研究や高度先進医療の提供、さらには地域への医師派遣などを通し、北海道の医療・保健・福祉の充実・発展に寄与することを目的に設置された医療系総合大学である。 札幌医科大学教育研究施設T改築工事
○基本方針
1.周辺地域との調和
分散配置されている既存施設を教育研究施設T、Uと大学管理施設に集約することにより、適切な壁面後退を確保し周囲地域に対して圧迫感のない配置や既存緑道と連続した景観形成に配慮。 2.親しみを持って利用される施設
わかりやすい平面構成及び開放的で明るい共用部空間や共用講義室の内装材の木質化など、居心地のよい施設整備。アトリウム空間は本建物の中心的な空間であり、教育研究施設U完成時には緑道と連続し、キャンパスの内外を通じて学生の活動が感じられる賑わいのある居場所をつくる。 3.機能的な施設
アトリウム空間を中心に講義室群などの諸室を配置し、学生や利用者の動きが見え、行先のわかりやすい動線計画を行う。 4.環境に配慮した施設
自然採光の活用やLED照明を採用するとともに仕上げ材にもエコマテリアルを採用するなど、建設時・運用時のCO2削減に配慮。 札幌医科大学教育研究施設V改築工事
○基本方針
1.学部間・学生交流の促進
教育研究施設Vは、既存の保健医療学部に接続して一体的に整備を行うものであり、一方で保健医療学部と医学部をつなぐ交点となる。この交点は各階に通じた吹き抜けに面しており、交流スペースと捉えて学部間や学生が交流できる空間として整備し、南面からの自然採光を取り入れることで明るく開放的なスペースとして活用。 2.自然エネルギーの活用
交点となる共用部分に断熱性の高いガラスカーテンウォールを採用し、自然採光の確保と、吹抜上部に設けた開口部によりドラフトを利用した自然換気を行うことで、外断熱工法の採用とともに空調負荷の低減を図る。 3.既存施設との一体性の創出
本施設は敷地南西角に位置し、カーテンウォールと吹抜空間により開放感を演出している。建物内部の様子が見えることで医療人育成の現場を地域にアピールするとともに、既存の基礎医学研究棟や教育研究施設Tなどと調和する色彩・素材を用いてキャンバスの一体性を創出するファサード形成とする。
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