建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2016年2月号〉

国立病院機構西群馬病院と渋川市立渋川総合病院の再編統合で整備される「渋川医療センター」

――国立病院の老朽化と市立病院の医師不足を同時に解決

 独立行政法人国立病院機構 西群馬病院
 院長 斎藤 龍生


 群馬県渋川市で、(独)国立病院機構西群馬病院と渋川市立渋川総合病院を再編・統合した「渋川医療センター」の建築が大詰めを迎えている。
 独立行政法人国立病院機構西群馬病院(以下「西群馬病院」)は、昭和16年5月に前橋、高崎、伊勢崎、桐生の四市病院組合が現在の地に結核療養所としての建設工事に着手、昭和19年12月5日に日本医療団大日向荘として創設された。
 その後、昭和22年4月1日厚生省に移管され、国立療養所大日向荘として発足し、昭和55年4月には結核療養所からの脱却を目指して、国立療養所西群馬病院と改称。昭和61年4月に国立療養所長寿園と組織統合を行った後、平成16年4月1日には全国154の国立病院・国立療養所を一つの法人化した独立行政法人国立病院機構に移行したことで、「独立行政法人国立病院機構西群馬病院」に名称を変更した。
 独立行政法人国立病院機構は、独立行政法人国立病院機構法(平成14年法律第191号)第3条の規定により、国の政策医療を担い、同法第15条第1項第1号に「医療を提供すること」が業務として掲げられており、西群馬病院もその1つとして国の政策医療を実施する病院と位置付けられ、「がん」、「呼吸器疾患(結核を含む。)」、「重症心身障害」についての専門医療を担ってきた。

 また、群馬県内における結核病床を有する「結核指定医療機関」、「エイズ治療拠点病院」、「地域がん診療連携拠点病院」として、渋川市、北群馬郡榛東村及び同郡吉岡町からなる渋川保健医療圏を中心とした政策医療に貢献している。
 現在に至るまで、医療技術の発展と医療需要の拡大に対応するべく増改築、施設の改善整備を行い、病床規模は許可病床380床、12の標榜診療科を有する医療機関となっている。
 また、渋川市立渋川総合病院(以下「渋川総合病院」)は、昭和17年に前橋陸軍病院として創立し、昭和20年に現在の地に移転して国立前橋病院となり、昭和25年には国立渋川病院として独立した。
 その後、平成15年3月、渋川保健医療圏の地域医療の拠点として機能すべく、国(厚生労働省)から渋川地区医療事務組合が経営移譲を受けて開院した。平成18年2月には、渋川地区医療事務組合を構成する6市町村の合併により新渋川市の病院となり、現在は病床規模として許可病床154床(感染症病床4床含む)を有し、11の標榜診療科を掲げ、「救急告示病院」、「災害拠点病院」として指定されるとともに、渋川地区の二次輪番救急病院の中では最も多くの救急車を受け入れている。
 しかしながら、渋川保健医療圏、吾妻保健医療圏及び沼田保健医療圏からなる北毛地域(以下「本件地域」)は、医療の自足率が低く隣接する前橋保健医療圏への依存関係が強く、地域医療の中核的役割を担う基幹病院を有していない状況にあることなどから、本件地域で急性期医療、高度入院医療等を十分に担うことができていない状況にあった。
 また、西群馬病院は、渋川市の中心部から北西約8km、標高約500mに位置し、このような地理的状況・アクセスの不便さに起因して救急患者の受入れが困難であり、渋川総合病院は、災害拠点病院として必要な施設であるヘリポートの整備もなされておらず、敷地も狭小で増築が困難であることなどに加え、両病院とも建物自体が建築より約30〜40年程度経過し老朽化していることから、高度な医療が求められる分野における建物整備等は医療提供体制を構築するうえにおいて急務であった。

 このような状況に対処するため、平成22年度群馬県地域医療再生計画に基づき、西群馬病院と渋川総合病院との再編統合により新病院を整備する「独立行政法人国立病院機構西群馬病院と渋川市立渋川総合病院の再編に伴う新病院整備事業(渋川医療センター)」(以下「本事業」)が計画され、平成24年2月21日付けで独立行政法人国立病院機構と渋川市で、西群馬病院と渋川総合病院の再編に伴う新病院の整備及び運営に係る基本協定書を締結後、新たな土地を取得し施行したものである。
 本事業の完成により、西群馬病院と渋川総合病院の機能をそれぞれ引き継ぎ、充実させた、本件地域の地域医療の中核的役割を担う基幹病院が整備されることなどから、本件地域の地域医療の確保・充実に寄与するものである。
 渋川医療センターの整備計画の概要は次のとおりである。
 西群馬病院の病床規模は一般病床330床(うち重症心身障害児(者)80床、緩和ケア病床23床)、結核病床50床の計380床の規模であり、渋川総合病院の病床規模は一般病床150床、感染症病床4床の計154床の規模である。新病院の病床規模については、平成22年度群馬県地域医療再生計画に基づき、平成24年7月に策定された「独立行政法人国立病院機構と渋川市による新病院の整備に係る基本計画」において、450床(*一般病床275床、緩和ケア病床25床、重症心身障害児(者)病床100床、結核病床46床、感染症病床4床)として整備されることが決定され、両病院の再編統合に伴い、病床数が現在の両病院の合計より84床減少となるが、現在の両病院における病床利用率による検討等を踏まえ、医療需要の増加に対する対応も可能である。
 診療機能に係る整備基本方針としては、現在、両病院が厚生労働大臣、群馬県等より指定を受けている以下の各種指定等の診療機能を継承するものとし、それに係る診療機能を整備するものである。

診療機能

外来エントランス
緩和ケア病棟
 1.がん「地域がん診療連携拠点病院」、2.緩和医療、3.重症心身障害児(者)医療、4.結核「結核指定医療機関」、5.エイズ診療「エイズ治療拠点病院」、6.肝疾患「肝疾患専門医療機関」、7.救急医療「救急告示病院」、8.災害医療「災害拠点病院」、9.感染症「第二種感染症指定医療機関」
 また、臨床研修病院として将来の地域医療を担う若手医師の確保・養成を図るため、協力型から基幹型へ移行して研修医受入体制を充実させる方針であり、医療関係者による実習等を受け入れ、教育研修を行うとともに、地域における医療レベル向上のため、専門医や専門看護師等の専門性を高めた医療従事者を養成するとともに、潜在看護師の再就職に向けた研修の実施による教育体制の確立を図るものである。



HOME