建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2016年2月号〉

年頭所感

新年のはじまりに当たって

国土交通大臣 石井 啓一

 平成28年の新春を迎え、謹んでご挨拶を申し上げます。  昨年10月に第3次安倍改造内閣が発足し、国土交通大臣を拝命しました。今年も国土交通行政に対する皆様の変わらぬご理解とご協力をお願い申し上げます。
 さて、昨年も、9月の関東・東北豪雨など、多くの自然災害が発生しました。これらの災害により犠牲となられた方々に対して謹んで哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。被災地の皆様が、1日も早く元の暮らしを取り戻して頂けるよう、引き続き総力を挙げて取り組んでまいります。
 東日本大震災の被災地では復興への確かな歩みが見られますが、今なお多くの方々が避難生活を続けておられます。今年3月には震災から5年が経過し、4月からは、「復興・創生期間」という新しいステージが始まります。復興の一段の加速化を図り、「実感できる復興」へとしっかりと取り組んでまいります。
 大きな自然災害を始め、様々な事件があった昨年でしたが、「一陽来復」を願い、今年1年が丙申(ひのえさる)に相応しい、様々な事柄が前進していく年になるよう、国土交通行政を前に進めていきたいと考えています。
 まずは、観光です。昨年、訪日外国人旅行者数が1900万人台に達し、2000万人という目標達成が十分視野に入ってきました。政府を挙げて、次の時代に向けた新たな目標の設定に関する議論も始まりました。その達成に向け、官民総力戦で、受入環境の整備など観光立国の実現に向けた取組を推進してまいります。
 また、我が国は人口減少時代を迎えましたが、社会のあらゆる生産性を向上させることで、経済成長を実現していくことができると思います。
 そのため、まず、これまでの社会資本整備の進め方を大きく転換し、「賢く投資・賢く使う」インフラマネジメント戦略へ転換してまいります。わずかな投資で過去の投資効果が開花する「ストック効果開花プロジェクト」への重点投資や、社会資本整備のあらゆるプロセスにICT等を導入して生産性を高める「i-Construction」などを進めます。
 また、建設産業やトラック事業など、今後中長期的に人手不足が懸念される産業界においても生産性が向上する様々な施策を講じます。
 私は、今年を「生産性革命元年」とし、国土交通省の総力を挙げて、生産性革命に向けた取組を進めたいと考えます。さらに、一億総活躍社会の実現も大きな課題です。国土交通省としては、三世代同居・近居への支援、高齢者向け住宅の整備加速などに取り組んでまいります。
 また、3月末には、新たな住生活基本計画を策定します。本計画においては、「居住者」「住宅ストック」「産業・地域」の3つの視点から新たな目標を設定するなど、今後10年間の住宅政策の方向性を示してまいります。
 5月には伊勢志摩サミットが開催され、9月にはG7長野県・軽井沢交通大臣会合を開催し、「自動車及び道路に関する最新技術の開発・普及」、「交通インフラ整備と老朽化への対応のための基本的戦略」等をテーマとして議論を行う予定です。いずれも我が国を代表する景勝地で行われ、日本の有する技術や強みを活かして議論を主導し、日本の魅力を内外に発信できる絶好の機会でもあります。地元地方公共団体等とも連携しながら全力で会議の成功に向けて取り組んでまいります。
 今年、国土交通省は発足から15年を迎えて、これまでの実績を糧とし、新しい時代への挑戦をスタートします。このため、私は、国土交通省の強みである現場力をしっかり活かして、その先頭に立って諸課題に取り組んでまいります。

【東日本大震災からの復興加速】

 東日本大震災からの復興について、インフラ復旧、住宅再建、高台移転などの取組を一段と加速してまいります。
 道路、鉄道など基幹インフラの復旧は着実に進んでおります。
 常磐自動車道が昨年3月に全線開通したほか、復興道路・復興支援道路については、順次、開通予定年次が明確になってきており、全体の約7割で開通済み又は開通見通しが公表されています。例えば、平成31年のラグビーワールドカップ開催が予定される釜石は、平成30年度に花巻と高速道路で結ばれる予定です。
 JR常磐線も、昨年3月に全線復旧の方針が決定され、特に、津波で被災した相馬〜浜吉田間については当初予定より3か月前倒しされて、今年12月末までに運転再開することになりました。
 住宅再建・復興まちづくりについても引き続き、「住まいの復興工程表」に沿って事業を着実に推進しており、今年度中に、災害公営住宅については約1万7000戸が、高台移転については約9000区画がそれぞれ完成する見込みです。
 風評被害を払しょくし、観光による復興を加速化させていくことも非常に重要です。このため、昨年6月に認定した東北地方の広域観光周遊ルートの形成に向けた支援、東北観光の魅力を海外に発信する取組など、地域と連携して取り組んでまいります。
 今後も、現場の声を伺いながら、被災者の方々が1日も早く復興を「実感」できるよう、総力を挙げて取り組んでまいります。

【国民の安全・安心の確保】

 今後、気候変動の影響により水害・土砂災害の頻発化・激甚化が懸念されており、加えて、切迫する南海トラフ巨大地震や首都直下地震など大規模な地震・津波災害や火山災害等にも備えるため、防災・減災、老朽化対策をさらに強化する必要があります。
 関東・東北豪雨を踏まえ、社会全体で洪水に備える「水防災意識社会」の再構築を図ってまいります。各地域において河川管理者、地方公共団体等からなる協議会等を新たに設置して減災のための目標を地域で共有し、住民目線のソフト対策への転換、「洪水を安全に流す」対策の着実な推進、氾濫した場合にも被害を軽減する「危機管理型」ハード対策の導入に取り組んでまいります。また、今年打ち上げる気象衛星「ひまわり9号」等により、気象観測体制を強化し、分かりやすい気象情報の提供に取り組んでまいります。
 切迫する南海トラフ巨大地震や首都直下地震に対しては、「国土交通省南海トラフ巨大地震対策計画」及び「国土交通省首都直下地震対策計画」に基づき、想定される地震ごとの被害特性に合わせ、避難路・避難場所の整備、公共施設の耐震化、住宅・建築物の耐震化や不燃化、道路啓開体制の確保、緊急輸送道路等における無電柱化等、実効性のある対策を推進してまいります。また、火山災害に対しては、観測・監視体制の強化や迅速な情報提供に取り組んでまいります。
 我が国の社会資本は、高度成長期以降に集中的に整備され、今後点検・診断、修繕・更新といった老朽化対策が必要となる施設が急速に増加すると見込まれています。
 そこで、「国土交通省インフラ長寿命化計画」に基づき、計画的に点検・診断や修繕・更新などを行うとともに、産学官が一丸となって取り組むための「インフラメンテナンス国民会議」(仮称)の設置等により、世界に先駆けてメンテナンス産業の育成・活性化、さらには地域産業化を図ってまいります。
 交通における安全・安心の確保は重要な課題です。踏切については、踏切事故が依然約1日に1件、約4日に1人死亡するペースで発生するなど踏切の安全確保が急務です。そのため、ソフト・ハード両面の幅広な対策を取り込んだ計画的な踏切対策を推進してまいります。また、海上交通の分野では、非常災害時における海上交通の機能の維持や、平時における安全性の向上及び船舶運航の効率化のため、湾内における一体的な海上交通管制を行う体制の構築を進めてまいります。
 昨年は、残念ながら国民の皆様の身近なところで安全・安心を脅かし、信頼を損なうような事件が起きました。
 建設工事の関連では、免震ゴム、基礎ぐい工事、落橋防止装置の溶接といった分野で次々と問題が明らかになりました。いずれも原因の究明、再発防止策の検討を急ぎ進めました。今年は対策を着実に実行し、国民の不安を払しょくし、建築物の安全性や建設工事に対する信頼を回復できるよう取り組んでまいります。航空分野では、急速な普及の一方で落下事案等安全面への課題が指摘されていた無人航空機について、基本的な飛行ルールを定めました。さらに、小型飛行機の事故が目立って発生した状況に鑑み、機体の点検・整備の確実な実施等による安全性向上のための必要な措置を講じてまいります。海事分野では、昨年7月の北海道苫小牧沖フェリー火災事故を受け、フェリー内の車両火災の適切な消火方法を乗組員に習熟させるなどの再発防止に取り組んでいます。自動車分野では、独フォルクスワーゲン社の排出ガス不正問題により、排出ガス規制に対する信頼が揺らいでいる中、検査方法の見直しなど対応に万全を期してまいります。また、伊勢志摩サミットの開催に備え、海上警備を含むテロ対策にも万全を期してまいります。
 今後も国民の安全・安心に直結する課題に対しては、迅速かつ着実に取り組んでまいります。

【我が国の主権と領土・領海の堅守】

 尖閣諸島周辺海域では、依然として中国公船による領海侵入が発生しているほか、外国漁船の活動が続いているなど、我が国周辺海域では緊迫した情勢が続いております。
 海上保安庁では、我が国の領土・領海を断固として守り抜くという方針の下、戦略的海上保安体制を構築し、引き続き領海警備や外国漁船の取締り等に万全を期してまいります。さらに、海上保安政策課程の拡充等を通じ、法とルールが支配する海洋秩序の構築に向けて取り組んでまいります。
 また、海洋権益の確保、海洋資源の開発に資する取組を推進してまいります。

【質の高い観光立国の実現】

 観光は、急速な成長を遂げるアジアをはじめとする世界の需要を取り込み、日本の力強い経済を取り戻すための重要な柱です。
 昨年11月には安倍総理を議長とする「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」を立ち上げました。この会議では、今後さらに増加していく訪日外国人旅行者の満足度を高め、リピーターとなってもらえるよう中長期的観点から総合的・戦略的に政府全体で推進していく施策について検討することとしております。併せて、今後も、「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」の施策を始め、観光振興の施策を強力に実行してまいります。
 インバウンドが急増する一方、その多くはいわゆるゴールデンルートに集中しています。このため、外国人旅行者を全国津々浦々へ呼び込むべく、昨年6月に全国で7つの広域観光周遊ルートを認定いたしました。今後、モデルルートの形成や地域資源の磨上げの取組に対して必要な支援を行ってまいります。
 さらに、拡大しております外国人旅行者による旅行消費についても、外国人旅行者への消費税の免税制度について免税対象金額の引下げを行うとともに、地方での免税店拡大を進め、外国人旅行者の地方における地場産品の購入につなげていくことで、地域経済の活性化を図ってまいります。また、外国人観光客の地方への誘客を推進するため、地方空港の国際線着陸料軽減を図ります。
 併せて、地方空港等におけるCIQ体制の充実、無料公衆無線LAN環境の整備、多言語対応の強化など、外国人の受入環境の整備を促進してまいります。
 加えて、今後外国人旅行者の急増に伴う宿泊施設需要に対応するため、関係省庁とともに民泊の適正なルールのあり方についても検討してまいります。
 昨年は、クルーズ船による訪日外国人旅行者数が年間100万人を超え、当初の目標を5年前倒して達成することができました。我が国が掲げている観光立国の実現、地方創生にとってクルーズの振興は極めて重要であり、今後も港湾における受入環境の改善を図ってまいります。

【「賢く投資・賢く使う」インフラマネジメント戦略への転換】

 これからの社会資本整備については、厳しい財政制約の下、限られた予算を最も効果的に活用する「賢く投資・賢く使う」インフラマネジメント戦略へ転換してまいります。
 まず、ストック効果の高い事業を厳選し、重点投資(「賢く投資」)していく必要があります。例えば、今春開通予定の東九州自動車道の椎田南IC〜豊前IC間の開通により、宮崎と北九州が直結することは、移動時間の短縮など生産性の向上等大きな経済効果が見込まれています。
 次に、既存施設を知恵と工夫により最大限活用する「賢く使う」姿勢が重要です。例えば、首都圏の高速道路における新たな料金体系の導入や、ETC2.0を活用した効率的な道路利用を推進してまいります。また、住民の皆様のご理解を得て羽田空港の飛行経路の見直し等により空港処理能力を拡大する「賢い空港利用」を推進してまいります。
 建設現場では、「i-Construction」、すなわちICTの新技術を活用して、測量・設計から施工、管理に至るまで全プロセスを通じた情報化、効率化等の取組を進めてまいります。さらに、建設技能労働者の経験が蓄積されるシステムの構築も推進してまいります。引き続き、建設技能労働者の処遇の改善を図り、魅力ある職場環境を実現するとともに産業全体の生産性を高めてまいります。
 こうした取組を着実に推進していくために、安定的・持続的な公共投資の見通しの確保に全力を尽くしてまいります。

【豊かで利便性の高い社会の実現】

 今後、著しい人口減少が見込まれる地方圏では、地域が維持できなくなり、消滅する地方公共団体が数多く発生するのではないかという危機感があります。また、大都市圏においても今後、急速に高齢化が進むことが予想されています。これらの課題に対して、地域の特性や状況に応じながら施策と組織を総動員して対応してまいります。
 まず、これからの人口減少社会を見据え、「コンパクト・プラス・ネットワーク」を具体化していく取組を進めます。関係省庁からなるコンパクトシティ形成支援チームなどの枠組を活用し、関係施策を連携させた支援の充実や、モデルとなる好事例の横展開を図るなど、地方公共団体の取組を強力に支援してまいります。また、昨年創設した鉄道建設・運輸施設整備支援機構による出資制度等により地域の公共交通ネットワークの再構築を図る取組を推進してまいります。
 人口減少や高齢化に伴って生活機能維持が困難になってきている地域において、道の駅等にコミュニティバスやデマンドタクシーといった交通機関の結節点、働く場などの機能を持たせるなど、生活サービスを維持し、効率的に提供できる「小さな拠点」づくりを推進してまいります。
 若年世帯・子育て世帯が望む住宅を選択・確保できる環境を整備するため、三世代での同居・近居等を推進してまいります。また、高齢者が自立して暮らすことができるよう、新しい高齢者住宅のあり方を提示するとともに、サービス付き高齢者向け住宅の需要に対応した供給等を進めてまいります。さらに、良質な既存住宅ストックの有効な活用や、既存住宅流通・リフォーム市場の活性化を図るとともに、空き家については使えるものは活用し、生活環境に悪影響を及ぼすものについては、解体や撤去を進めてまいります。加えて、住宅団地の再生とその機会をとらえた福祉拠点の形成など、住宅地の魅力の維持・向上を進めてまいります。
 昨年8月に改定された国土形成計画(全国計画)を受け、「稼げる国土、住み続けられる国土」の実現のため、全国8つの広域ブロックごとに、概ね今後10年間の戦略を示す広域地方計画を今年度中を目途に策定します。また、北海道の強みである食や観光を担う地方部の「生産空間」を支えるべく、今年春を目途に新たな北海道総合開発計画を策定します。併せて、各ブロックごとの社会資本整備重点計画を策定します。
 奄美、小笠原をはじめとする離島や半島地域、豪雪地帯など、生活条件が厳しい地域に対しては、引き続き生活環境の整備や地域産業の振興等に対する支援を行ってまいります。
 今後、生産年齢人口が減少する中で日本の経済を支える産業の担い手の確保・育成と生産性の向上は重要な課題です。
 運輸分野においては、今後深刻化する人手不足や高度化・多様化する荷主・利用者ニーズに対応するため、物流生産性革命として、多様な関係者の連携によるモーダルシフトや物流拠点における輸送フローの円滑化等物流の総合化・効率化施策を推進してまいります。加えて、ビッグデータの活用による収益性の高いバス路線への再編、タクシー事業の効率化、活性化など生産性の向上につながる施策を推進してまいります。建設業や造船業などにおいても、建設技能労働者の適切な賃金水準の確保や社会保険の加入促進などにより処遇改善を図るとともに、教育訓練の充実強化、若者や女性のさらなる活躍を推進する取組や、ICTの活用など産業界を挙げて生産性の向上と担い手の確保・育成に向けた取組を進めてまいります。

【国際競争力の強化】

 我が国の国際競争力の強化や成長戦略の実現を通じて、経済成長を促進していく必要があります。
 東京、大阪など日本の経済を牽引する大都市においては、世界に引けを取らないビジネス環境・居住環境の整備により、国際競争力を大きく高めてまいります。また、海外企業の投資・立地を促進するとともに、都市開発の海外展開を推進するため、「日本版シティー・フューチャー・ギャラリー(仮称)」構想を東京都ともタイアップして、官民一体となって推進し、日本の都市の魅力を世界に発信してまいります。
 三大都市圏環状道路、新幹線・都市鉄道、国際コンテナ・バルク戦略港湾、大都市拠点空港など、国際競争力強化に必要な人流・物流を支える交通ネットワークの整備や機能強化を着実に進めてまいります。
 三大都市圏環状道路については、来年度に、圏央道の境古河IC〜つくば中央IC間が開通することで、湘南から成田空港まで接続されるなど、引き続き、着実に整備を進めてまいります。
 新幹線については、3月の北海道新幹線の新函館北斗開業を着実に実施してまいります。また、北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)、北陸新幹線(金沢・敦賀間)及び九州新幹線(武雄温泉・長崎間)についても、政府・与党申合せに基づき、着実に整備を進めてまいります。本格的な工事の始まるリニア中央新幹線については、安全・円滑な工事実施に向けて適切に対応してまいります。さらに、首都圏の鉄道ネットワークの強化に向けた検討を進めてまいります。
 国際コンテナ戦略港湾については、京浜港において今年度内の港湾運営会社の設立に向けた検討が進められているなど、「集貨」「創貨」「競争力強化」を三本柱とするハード・ソフト一体となった施策を講じてまいります。
 民間活力の活用については、平成26年度から来年度を集中強化期間に設定しPPP/PFIに係る取組を加速化するとの政府全体の方針を踏まえ、コンセッション方式の積極的な活用を進めてまいります。昨年12月に実施契約が締結された関西空港・伊丹空港コンセッション及び仙台空港コンセッションについて、今年4月の関西空港・伊丹空港、7月の仙台空港の運営委託に向けた準備を着実に推進するほか、その他の国管理空港における活用も推進してまいります。また、浜松市下水道や愛知県道路公社有料道路のコンセッションについても着実に進展しております。
 さらに、PPP/PFIの推進のため、産官学金の協議の場として「地域プラットフォーム」を今年度末までに全国8ブロックに形成し、地方公共団体における具体的案件の形成と横展開を図ってまいります。
 日本経済の成長のためには、日本の高い技術力を活かした国際競争力のある産業を伸ばしていくことが重要です。昨年11月に初飛行が実現した国産旅客機(MRJ)については、設計製造国の立場から安全性審査を適確に実施してまいります。また、自動車の自動走行システムを実現させるための取組を推進していくとともに、国際基準の策定を日本が主導してまいります。
 造船業においては、IoTやビッグデータ等を活用した先進船舶の開発とその普及方策を一体で実施する海運イノベーションを推進してまいります。加えて、海洋産業の振興に向けた海洋開発人材育成や国民の海洋への理解と関心の増進を図る取組も進めてまいります。
 昨年は、インドの高速鉄道への新幹線システム導入に関する日印両政府間での協力覚書署名や、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)によるテキサス高速鉄道など3事業への支援決定等の成果が得られました。インフラの海外展開は、海外の旺盛なインフラ需要を取り込み、我が国経済の活性化を図るため、政府をあげて取り組んでいる課題です。今後、地域・国別の戦略的取組を明確化した「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画」を策定し、「質の高いインフラ」の更なる展開を推進してまいります。また、相手国に対するプロモーションについても、関係省庁と協力しつつ、より充実した対応を行うとともに、JOINなどのツールを活用し、関係機関とも連携しながら、大手から中小まで我が国企業の海外展開を支援してまいります。
 昨年10月の環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の大筋合意を受け、政府として昨年11月に「総合的なTPP関連政策大綱」をとりまとめました。TPPはアジア太平洋地域において新しい投資・貿易のルールを作り、地域における経済の発展に大きく繋がる非常にインパクトのあるものです。国土交通省としても、TPPに対する国民の不安を払しょくすべく丁寧な説明を行いながら、真に経済再生、地方創生に直結させるよう取り組んでまいります。
 昨年12月のCOP21で採択されたパリ協定を踏まえ、温室効果ガスを削減する「緩和策」と気候変動への「適応策」を両輪とした地球温暖化対策を推進してまいります。

【2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会への対応】

 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催は、東日本大震災から復興した力強い日本の姿を示すとともに、世界を代表する成熟都市になった東京を発信する絶好の機会です。
 大会の安全でスムーズな運営のため、交通、宿泊、会場及びその周辺地域などの快適性、安全性の確保とともに海上警備を含むセキュリティ対策に取り組んでまいります。パラリンピックが開催されるということも大切です。これらを契機として、公共交通や公共施設等のバリアフリー化を通じた「人に優しいまちづくり」、「心のバリアフリー」についても推進してまいります。
 これらの取組を通じ、安全・安心で国民総参加による「夢と希望を分かち合う大会」の実現、そして次世代に誇れる「レガシー」を創出する大会にするとともに、大会の開催効果を地方につなげていくよう、取組を進めてまいります。
 新しい年が皆様方にとりまして希望に満ちた、大いなる発展の年になりますことを祈念いたします。


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