建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2016年1月号〉

日本旅行ブームと北海道新幹線開業効果で来道観光客300万人を目指す

―― 「建設産業支援プラン」により建設業の経営力と人材育成力の向上

── 来年の新幹線開業を控え、これまでの足跡を振り返っての感想や札幌延伸の今後の動向と、さらにその先の展開に関する展望や政府への希望などがあればお聞きします。
高橋 待ちに待った北海道新幹線(新青森〜新函館北斗間)が、いよいよ(2016年)3月 26日に開業します。大変喜ばしく思うとともに、いよいよだという実感が深まってきました。
 これまで工事を着実に進めていただいた関係者の皆様をはじめ、北海道新幹線の早期実現に向け、力を注いでいただいた多くの方々の情熱とご尽力に対し、心から敬意を表します。
 北海道新幹線の今後の札幌開業については、トンネル掘削に伴う残土受入地の確保や、用地取得の円滑化など技術的な課題に対し、積極的に連携・協力していくため、道では昨年2月に、沿線自治体や鉄道・運輸機構などを構成メンバーとする連絡・調整会議を設置し、情報共有や意見交換を行ってきたところです。
 道としては、工事が円滑に進められるよう関係機関との情報共有を密にするとともに、用地取得の円滑化に努めるなど、一日も早い札幌開業に向け、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
── 政府観光庁は外国人観光客2,000万人を2,500万人へ目標を引き上げて、動員を目指していますが、折しも近年は日本観光が外国人のブームとなり、目標達成への展望は明るいものと見られます。これを北海道の観光振興に、どのように結びつけていくか、受け入れる立場として、どんな環境整備、インフラ整備が必要と考えるか、道としての観光振興策を伺います
高橋 近年、北海道にも大勢の外国人観光客が訪れており、産業の裾野が広く経済波及効果の高い観光を、本道のリーディング産業として発展させていきたいと思っています。
 道では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目途に、外国人観光客300万人の目標を掲げており、その目標を達成するためには、空港機能の強化や二次交通の確保、Wi-Fi環境の充実のほか、地域の観光資源を活かした新たな観光メニューの創出、観光従事者の多言語対応や、おもてなし力の向上などの環境整備が重要と考えており、北海道観光振興機構はもとより、国や市町村、地域の観光関係者などと連携しながら受入体制の充実に取り組みます。
── 景気対策のお陰で、全国的に企業の業績回復など明るい話題が聞かれますが、道内経済の現状と課題、道としての経済対策について伺いたい
高橋 本道におきましては、生産活動が一進一退の動きとなり、公共事業の減少は続いているものの、需要面では、来道者数の増加、百貨店やスーパー、コンビニエンスストアなどの販売額の増加が続いているほか、雇用につきましては、有効求人倍率が過去最高となるなど、総体としては、緩やかに持ち直しているものと認識しております。
 特に外国人来道者数につきましては、円安基調の継続や国際航空路線の新規就航・増便、クルーズ船の寄港の増加などが追い風となって急増しており、様々な面で本道経済へ大きな効果をもたらしているものと考えております。
 一方で、道内では全国を上回るスピードで人口減少が進んでおり、人手不足の深刻化、経済規模の縮小など、地域経済への影響が懸念されています。
 このような状況を乗り越えていくには、本道の強みである食や観光などの分野で、旺盛な海外需要を取り込むとともに、それらの取組を支える地域産業力の底上げを図ることが重要です。
 このため、道では昨年7月に「地域経済の強化に向けた基本方針」を策定し、地域企業が持てる資源を最大限に活用し、基幹産業である一次産業の活力を取り込むことに加え、新たな成長分野に挑戦するなど、「人財」「地域」「知・技術」「健康長寿・医療」「環境・エネルギー」の5つの戦略分野を軸に産業集積を図るとともに、食の輸出1,000億円、外国人観光客 300万人の実現に向けた取組を進め、力強い北海道経済の実現に向けた取組を加速していきます。
── TPPについて、政府は大筋の合意を得たと報道されますが詳細な情報は不十分との批判もあり、生産者、消費者ともに釈然としない感情は拭えません。農業大国の北海道としては、どう評価し、どう対策しますか。
高橋 TPP協定交渉が大筋合意に至り、農産品のいわゆる重要5品目について、関税の引き下げや輸入枠の拡大などがなされた一方、関税撤廃の例外措置、国家貿易制度等の維持やセーフガードの確保などが盛り込まれたところです。
 合意内容には、農林水産物について、時間をかけての関税削減や輸入枠が増えるものがあり、地域の農林水産業などへの長期にわたる様々な影響が懸念されており、農林漁業者をはじめ地域の方々の不安と懸念を払拭し、本道の一次産業が確実に再生産を図ることができる万全な対応がとられることが不可欠であると考えています。
 2015年11月25日、政府が決定した「総合的なTPP関連政策大綱」においては、今後とも合意内容について丁寧に説明するとともに、特に農林水産物の重要品目について、引き続き再生産が可能となるよう万全の措置を講ずることが必要であるとの考えのもと、重要品目に関する経営安定対策の充実、酪農畜産や畑作、水産、林業など分野毎の体質強化対策が盛り込まれるとともに予算の確保などについても示されたところであり、これまで道が要請してきた内容が概ね盛り込まれていると受け止めており、これらの予算化や法制化などが確実に実行される必要があると考えています。
 このため、道としては、引き続き、将来にわたって本道農業の再生産が図られるよう、国に対し、これらの実施を求めるとともに、道自らも、本道農業の競争力を強化していく観点から、国の対策も活用しながら、新技術の導入や生産基盤の整備促進、担い手の育成・確保、さらには、輸出や6次産業化を推進するなど、意欲ある担い手が、将来に希望を持って経営に取り組み、本道農業が、成長産業として持続的に発展し ていくことができるよう、攻めの農業の確立に向け取り組んでまいります。
── 企業社会の業績改善の一方では、ブラック企業の問題なども指摘されています。道として、独自の対策やアイデアはあるでしょうか
高橋 過重労働や賃金の不払いなどは、働く方々の健康や生活の安定に大きな支障をきたす恐れがあることから、道では「労働ガイドブック」の配布や、高校生向けの出前授業の実施、事業主向けセミナーの開催など、働く側、企業側の双方に対して、労働関係法令の普及啓発に努めています。
北海道新幹線開業PRロゴマーク
── 建設専門誌の立場としてお聞きします。一時期は廃業・転業を政策的に奨励された建設業は、公共投資がアベノミクス第二の矢に指定され、その恩恵により、大手・準大手 40社とも 3期連続の業績改善が、建設経済研究所のレポートで報告されましたが、反面、地方の地場建設業の間では、景気対策の恩恵が大手で止まっているとの不満も聞かれます。道内での実態・業況の動向と、道としての政策について伺います
高橋 本道の建設業は、社会資本の整備はもとより、災害時の対応や除雪など、地域の安全・安心や経済・雇用を支えている重要な産業ですが、加速する人口減少や少子高齢化といった社会経済情勢の中、業況動向調査においても受注、収益ともに減少傾向となっているなど、厳しい経営環境に置かれています。
 また、建設業就業者数は、ピークだった1995年から97年の約35万人と比べ、約3分の2の約23万人となっており、年齢構成については50歳以上が全体の約半数を占めるなど、高齢化が進行していることから、次世代への技術・技能の承継が困難となって、公共工事の品質確保など、建設業本来の役割が果たせなくなることが懸念されています。
 このような中、道では「建設産業支援プラン」に基づき、建設業団体等と連携し、経営力や人づくりの強化などへの支援に取り組んでいます。
 北海道知事
 高橋 はるみ
 たかはし・はるみ
 昭和 29年 1月6日生まれ 富山県出身
 昭和 51年 3月 一橋大学経済学部 卒業
 昭和 51年 4月 通商産業省入省
 昭和 60年 大西洋国際問題研究所(在パリ)研究員
 平成 元年 6月 通商産業研究所総括主任研究官
 平成 2 年 7月 中小企業庁長官官房調査課長
 平成 3 年 6月 工業技術院総務部次世代産業技術企画官
 平成 4 年 6月 通商産業省関東通商産業局商工部長
 平成 6 年 7月 通商産業省大臣官房調査統計部統計解析課長
 平成 9 年 1月 通商産業省貿易局輸入課長
 平成 10年 6月 中小企業庁指導部指導課長
 平成 12年 5月 中小企業庁経営支援部経営支援課長
 平成 13年 1月 経済産業省北海道経済産業局長
 平成 14年12月 経済産業省経済産業研修所長
 平成 15年 2月 経済産業省退官
 平成 15年 4月 北海道知事

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