建設グラフインターネットダイジェスト
〈建設グラフ2016年1月号〉
【ZOOM UP】
多賀城市に災害公営住宅による新たなまちが形成
多賀城市鶴ケ谷地区災害公営住宅建設
建設の経緯
宮城県多賀城市では、4地区、あわせて532戸の災害公営住宅の整備を進めている。このうち、鶴ケ谷地区災害公営住宅は、市内最大規模で4棟、274戸となる。
また、建設工事は、多賀城市から要請を受け、UR都市機構宮城・福島震災復興支援本部が行っている。
建設地は、周辺にJR多賀城駅、国道45号、三陸自動車道、公共施設、スーパー等があり、交通や生活の利便性の高い市街地である。
また、当該地は東北学院大学のグラウンドであったことから、地域住民のレクリエーションや憩いの場としても利用されていた。
建物は、日照やプライバシーに配慮し、住棟間に適切な離隔をとり、4棟すべてを1階の渡り廊下で南北に繋ぐ計画としている。
敷地内を居住者の生活動線を中心とする「プライベートゾーン」と居住者だけでなく地域住民も利用可能な「パブリックゾーン」に分け、通路や附帯施設等を配置した。
プライベートゾーンには、居住者のコミュニティスペースとなる「みんなのリビング」、全住戸分の駐車場、駐輪場及び屋外物置を利用者の動線に配慮して配置した。
パブリックゾーンには、居住者と地域住民の交流が増え、コミュニティが構築されるように集会所、高齢者生活相談所、多目的広場等を配置した。
また、居住者の歩行動線は、「プライベートゾーン」と「パブリックゾーン」を回遊できるように、地域住民の歩行動線は「パブリックゾーン」で完結するように工夫をした。
当該住宅は、津波浸水区域に近いこともあり、地域住民が一時避難できる津波避難ビルとなる。
避難経路となる階段は、避難が容易となるよう建物の両妻側に配置し、わかりやすいデザインとした。
また、最上階には一時避難所としての防災倉庫を設置した。
大規模な災害公営住宅が建設されることから、日影、視線、圧迫感等について、近隣の住宅地に配慮している。
災害公営住宅の住棟は、西側の既存住宅地から30メートル以上の十分な離隔距離をとって配置した。
また、敷地計画高は、建設前の地盤レベルを考慮して、敷地全体で調整を行った。
他には、居住者と近隣住民お互いの視線に配慮して生垣等を設けている。
出入口は、車の出入りもあるので視認性に配慮し、メタセコイヤやサクラ等によって、建設前の景観を継承するものとした。
さらに、敷地全体の植栽は、高木、低木を効率よく配置し、四季を感じられる樹木を選定した。
集会所は、居住者と地域の方々の交流を促す場としての役割も担っていることから、大集会室、小集会室、キッチンなどを備え、あらゆる利用に対応できるように設えを工夫している。
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