建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2015年11月号〉

地元に期待され続けたダムが着工

―― 地域の暮らしを守る台形CSGダム

 胆振総合振興局 室蘭建設管理部
 厚幌ダム建設事務所 所長 岡部 泰範

厚幌ダム下流より

1.はじめに

 厚幌ダムは、厚真川総合開発の一環として、二級河川厚真川水系厚真川の北海道勇払郡厚真町字幌内地先にあり、厚真町民の長年の願いである「厚真町を水害から守り、町民が安心して暮らせる抜本的な治水対策と、不足する農業用水、水道用水の安定確保」を受けた、現在建設中の多目的ダムであります。
 ダムの型式及び諸元は、台形CSGダム、高さ47.2m、長さ516m、総貯水容量47,400,00m3、有効貯水容量43,100,000m3であり、洪水調節、流水の正常な機能の維持、かんがい用水の供給、水道用水の供給を目的としています。
 台形CSGダムは、「台形ダム」と「CSG工法」の要素を融合させ、ダム建設における三つの合理化(設計の合理化、材料の合理化、施工の合理化)を同時に達成可能な、近年考案されたダム型式であります。

2.ダム本体工事着工

 厚真川周辺は、胆振地方有数の稲作地帯となっており、厚真川本流と支流の河川水は、かんがい用水として広く利用され、厚真町の基幹産業である農業を支えています。
 しかし、河川流量が少なく代かき期間に深刻な水不足に見舞われることがしばしばあるため対応に苦慮しており、大型農業機械による代かき期間の短縮や、冷害防止のための深水かんがい等、近代営農技術に対応したかんがい用水の確保が出来ない状況となっています。
 水道用水についても、厚真町には多くの水道未給水区域があり、井戸水を生活用水として使用していますが、井戸水の水質や枯渇の不安を抱えており、安全で安定した新たな水源の確保が急務となっています。
 また、厚真川流域では台風や前線の大雨で幾度となく洪水に見舞われ、住宅や農地など多くの財産が被害を受けてきました。
 ダム事業は、平成7年4月建設事業に着手、平成10年4月北海道環境影響評価条例に基づく環境アセスメント完了、平成20年6月河川管理施設等構造令第73条第4号の規定による特殊な構造の河川管理施設等の特定認可(いわゆる大臣特認)(台形CSGダム型式の認定)、平成26年10月にダム本体工事の本契約を行い着工の運びとなりました。

道道 上幌内早来停車場線 2号橋

3.厚幌ダム事業完成を目指して

 ダム本体工事は、平成26年11月より仮設備工の施工を開始し、12月から本体の基礎掘削、27年2月中旬から母材の採取、平成27年4月末よりダム堤体の打設を開始しました。
 8月には定礎式を行い、現在(9月末)ダム堤体は堤体積で33%の進捗状況にあります。今年度ダム堤体の打設は堤体積で約55%を完了し越冬する予定です。
 ダム本体工事と同時進行で、道道・町道・林道の付替道路工事を4路線、約13kmを実施することとしています。
 昨年まで延長比で約55%完成しており、残り45%を今年度と来年度で完成させる予定あり、工事は最盛期となっています。ダムの供用開始予定まで残り2年6ヶ月、ダム本体工事・付替道路工事・その他工事が、正念場を迎えています。

4.おわりに

 ダム本体工事、付替道路工事などを予定通り進め、地域住民の皆様が、洪水被害の恐れや水不足の心配がなく、安心して暮らせるよう、平成30年4月供用開始に向け、更な努力をしていきたいと思います。


HOME