建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2015年11月号〉

土木の日に寄せて

――北海道の安全・安心な国土づくり

 国土交通省 北海道開発局
 局長 本田 幸一

TEC-FORCEによる排水作業(宮城県遠田郡美里町)

 土木の日に寄せて、最近、北海道はもとより全国で頻発する大規模な自然災害から人命、財産などを守るため、北海道の安心・安全な国土づくりという観点から北海道開発局が実施している防災・減災対策及び国土強靱化に関する施策について取りまとめたので紹介します。
 北海道は千島海溝周辺に位置し、今後30年以内に震度6弱以上の地震が発生する確率が60%を超えている地域があるなど、大規模な地震・津波が発生する可能性が高く、また、全国の活火山の約2割が存在しているなど自然災害の発生リスクが高い地域であります。特に冬期の北海道においては、雪害と地震災害といった複合的な災害が発生するおそれがあり、こういった特殊性も踏まえて災害に対する備えを日頃から進めておく必要があります。
 昨年9月の道央を襲った豪雨では、北海道で初めて大雨特別警報が発表され、全道で約92万人に避難勧告が出されたほか、冬期間においても発達した低気圧による暴風雪が頻発しました。また、本年9月にも、台風18号から変わった低気圧による出水により、関東や東北地方に大規模な浸水被害が発生しました。北海道開発局からも災害対策機械とともにTEC−FORCE隊員を東北地方整備局に派遣し、昼夜を問わず浸水箇所の排水作業を行うなど、被災箇所の早期復旧を支援しており、地域の方々からも大変感謝されたところです。
 北海道開発局では、こうした自然災害に備える防災対策として、根幹的な治水対策に取り組むとともに、津波対策や各種施設の耐震化、広域交通ネットワークの代替性・多重性確保、防雪対策、土砂災害防止、危機管理体制の強化など、「人の命が第一」、「災害には上限がない」という東日本大震災の教訓を踏まえて、災害に強い社会の実現に向けて引き続き取り組みを進めるとともに、災害発生時の自治体支援として、被災自治体への迅速なリエゾン(現地情報連絡員)の派遣による情報収集・提供の実施や災害対策用機械の派遣などを行って参ります。
 また、ハード・ソフトの様々な対策を組み合わせ、国民の暮らしや産業・経済活動の被害をできるだけ軽減する「減災」の考え方に基づく対策を進めていくため、社会資本整備と合わせて各種災害対応訓練の実施や地域防災力の強化を図る取り組みとして、市町村長との意見交換会(トップセミナー)やシンポジウムの開催など、自治体との連携強化と地域住民の防災意識を高める取り組みを積極的に推進して参ります。
 加えて、高度経済成長時代に集中投資した社会資本ストックの老朽化が急速に進行しており、今後、維持管理費・更新費が増大していくと考えられることから、防災・減災対策とあわせて、計画的な補修・更新による予防保全対策の実施など、戦略的な維持管理を進めていくこととしています。

作業前の浸水箇所(宮城県遠田郡美里町) 作業後の浸水箇所(宮城県遠田郡美里町)

 国土強靱化については、平成25年12月に制定された「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」において、国土強靱化に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、地方公共団体が地域計画を策定できる、とされました。
 このことを受けて、北海道が、本年3月に「道民の生命・財産と社会経済システムを守る」、「北海道の強みを活かし、国全体の強靱化に貢献する」、「北海道の持続的成長を促進する」ことを目標とする「北海道強靱化計画」を策定し、本計画に基づき、北海道の強靱化に必要な施策を推進しているところです。
 また、札幌市でも今年度中に地域計画を策定するべく検討を進めております。
 北海道開発局においても、こうした状況を踏まえ、国民の命と暮らしを守るために、災害発生危険度の高い地域における効果的な予防対策、災害が発生した地域における再度災害防止対策、災害時に拠点となる施設等の整備・耐震化や代替性の確保のための交通ネットワークの整備等を推進しております。
 なお、平成28年春頃の閣議決定を目指し、検討を進めている「第8期北海道総合開発計画」においても、「強靭で持続可能な国土の形成」を目標の一つに位置づけており、引き続き、地域の安全・安心を支えるべく、災害に強い社会資本の整備と総合的な防災・減災対策の強化を図っていく所存です。
 北海道の強靱化に向けて、関係機関及び地方公共団体等と緊密な連携のもと、取り組みを推進していくので、皆様のご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。

TEC-FORCEによる排水作業(宮城県栗原市)

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