建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2015年10月号〉

国道474号三遠南信自動車道の事業進捗状況とストック効果

 国土交通省 中部地方整備局 飯田国道事務所
 所長 柴山 智和

1.はじめに

 飯田国道事務所は、長野県飯田市に事務所を構え、長野県南信地域において、国道19号、国道153号、国道474号三遠南信自動車道(以下、三遠南信道)の整備・管理を担っています。三遠南信道については、長野県飯田市から静岡県浜松市までを結ぶ約100kmの高規格幹線道路であり、中央自動車道、新東名高速道路と連絡し、地域間の連携強化、三遠南信地域(愛知県東三河地域、静岡県遠州地域、長野県南信州地域)の秩序ある開発、発展を目的として計画されました。
 これまでに約26kmが開通しており、現在は飯喬道路で約15km、青崩峠道路で約6km、佐久間道路・三遠道路で約14km、合わせて約35kmの区間で事業を推進しているところです。
 当事務所では、このうち、飯田市から喬木村へ至る飯喬道路、長野・静岡県境を結ぶ青崩峠道路の整備を担当しています。

2.三遠南信道の進捗状況について

掘削が進む青崩峠トンネル調査坑(長野県側)

@飯喬道路 飯田山本IC〜天龍峡IC

 本区間は、平成10年から工事に着手し、平成20年に暫定2車線開通を迎えました。

A飯喬道路 天龍峡IC〜飯田東IC(仮称)

 本区間は、飯田市内を東西に結ぶ区間となっており、早期開通を目指し、橋梁上部工や改良工などの工事を推進しているところです。
 特に、天竜川に架橋される大規模な鋼橋である天龍峡大橋については、現在、右岸側(西側)の下部工が完成している状況であり、昨年度からは、左岸側(東側)の下部工事を鋭意推進しているところです。また、今年1月には、上部工事の発注を行い、現在、工場製作等の架設準備を進めているところです。

B飯喬道路 飯田東IC(仮称)〜喬木IC(仮称)

 本区間は、飯田市から喬木村を結ぶ区間となっており、非常に急峻な山岳地形となっています。
 まずは、早期に本線工事着手を図るため、昨年度から本格的に工事用道路の整備を開始したところです。

C青崩峠道路 小嵐IC(仮称)〜水窪北(仮称)

 青崩峠道路5.9kmのうち、大部分を占める青崩峠トンネルは、長野県と静岡県とを結ぶ、全長5.0kmのトンネルであり、中央構造線に近接していることから、三遠南信自動車道の最難関箇所と言われています。
 昨年度から、長野県側及び静岡県側からトンネル調査坑掘削工事をそれぞれ開始したところです。

3.期待されるストック効果

天竜川に架橋される天龍峡大橋の完成イメージ

 三遠南信自動車道は、三遠南信地域を南北に結び、中央自動車道と新東名高速道路と連絡することにより、広域ネットワークを構築することで、三遠南信地域の連携強化や災害に強いネットワーク形成、緊急医療活動や地域活性化の支援に貢献します。
■広域ネットワークの構築
 現在、三遠南信地域のうち、長野・静岡県境付近の地域は、高速道路ネットワークが未形成の状態となっているため、高規格幹線道路のICから60分以内に到達できない地域が存在しています。また、国道152号の長野・静岡県境は通行不能区間となっており、現在は越県するために狭隘で脆弱な兵越林道を通行する必要があります。三遠南信自動車道が前線開通することで、三遠南信地域全てがIC60分圏域となり、飯田市から浜松市までの所要時間を短縮することができます。
■災害に強い道路機能確保
 三遠南信道の周辺の生活道路である国道や県道は、事前通行規制区間が多く存在します。平成22年7月の豪雨や平成23年9月の台風15号では、各地で落石や崩土などによる通行止めが発生し、一次孤立化(旧上村・旧南信濃村)するなど、生活環境に大きな影響を及ぼしました。三遠南信道が開通することで、事前通行規制区間や脆弱な現道を回避することが可能であり、災害に強い道路機能の確保が期待されます。また、三遠南信地域では災害時に相互応援を行う協定を結んでおり、災害時の広域的な防災体制がより強化されます。
■緊急医療活動の支援
 三遠南信地域の救急出動件数は増加傾向であり、その搬送人員に占める高齢者の割合は全国平均に比べて高い状況です。しかし、第三次救急医療施設に60分以内でたどり着けないエリアが存在しており、救命救急が困難な状況となっています。開通効果として、第三次医療施設への60分カバー圏域が拡大し、南信地域の全市町村が60分カバー圏域となるなど、救急搬送時間の短縮により、高次医療サービスの向上に寄与します。
■地域活性化の支援
 三遠南信道沿線は、多くの観光資源を保有しており、観光客の半数以上が域外からの来訪者であり、域外からの観光客の来訪は地域活性化に重要となります。
 飯喬道路(飯田山本IC〜天龍峡IC)の開通後、飯田市の主要な観光地である天龍峡周辺では、観光客数が増加しました。三遠南信道を整備することで、アクセス性の向上がはかられ、三遠南信道沿線地域の観光施設への観光客の増加が期待されます。また、観光客が増加することで、地域の観光産業の活性化に貢献します。

4.おわりに

 三遠南信自動車道による三遠南信地域内の連携強化とリニアによる大都市間交流促進という相乗効果により、更なる地域の発展が期待されるところであり、三遠南信道の重要性がさらに高まっているところです。当事務所といたしましては、引き続き、三遠南信自動車道の整備推進を図るとともに、管理区間においては、道路利用者のみなさまが安全で安心して通行できる道路管理に努めてまいります。


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