建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2015年9月号〉

連携・交流を促進し、地域を活性化する道づくり

―― 福島県浜通りの早期復興に全力

 国土交通省 東北地方整備局 磐城国道事務所
 所長 坂井 康一

磐城国道事務所管内の主な事業箇所

 磐城国道事務所が位置する福島県浜通り地方は東日本大震災による被災に加え、原子力発電所事故により、沿線の多くの自治体が避難を余儀なくされている状況です。当事務所は浜通り地方を管轄する復興事務所として、福島県が策定した「ふくしま道づくりプラン」とも整合をはかりながら一日も早い再生・復興支援するため、多くの避難者や復興事業に関わる作業員の増加により重要性が高まっている浜通り地方の道路整備を推進しているところです。
国道 6号沿線の主要観光施設
 浜通り軸に位置づけられる国道 6号では勿来バイパス、常磐バイパス、久之浜バイパスを施工しており、横断同軸に位置づけられる国道 49号では平バイパスの施工と、北好間改良を進めています。北部軸に位置づけられ早期復興のリーディングプロジェクトである国道 115号相馬福島道路では相馬西道路、阿武隈東道路を施工しており、加えて平成 27年度から「ふくしま復興再生道路」として位置づけられている国道 399号十文字改良を施工しています。
 勿来バイパスは、国道 6号の茨城・福島県境における津波浸水区間の回避と渋滞緩和を目的とした茨城県北茨城市関本町関本中からいわき市勿来町四沢鍵田までの延長 4.4kmの道路です。
 このエリアは平成 23年 3月 11日の東日本大震災で、津波浸水により通行止めが発生し、主要幹線道路としての信頼性の低下が問題となっています。また、海水浴シーズンには茨城・福島県境付近の交通容量の不足による、慢性的な交通渋滞が問題となっており、平成 27年度に新たに事業化されました。
 磐城国道では、勿来バイパス延長4.4kmのうち、福島県内のいわき市勿来町関田関山から同市勿来町四沢鍵田までの延長 2.5kmを整備します。
 勿来バイパスの整備により、主要幹線道路としての安全性・信頼性が向上し、津波浸水等の災害リスクを回避するネットワークが確保出来ます。また、渋滞の緩和、アクセス改善により、未だ回復途上にある茨城・福島県境沿岸地域の観光地再生が期待されます。

常磐バイパスに整備した津波避難階段 国道 49号平バイパスの施工状況

 今年度は、測量・調査を実施します。
 常磐バイパスは別称「いわきサンシャインロード」と命名されています。いわき市内の交通混雑の緩和と主要幹線道路機能の強化のため、いわき市勿来町四沢から同市平下神谷までの延長27.7kmを 4車線で整備しています。
 平成 12年 3月に全線暫定 2車線で供用し、引き続き交差点の立体化、4車線拡幅工事を行っています。
 常磐バイパスの整備により朝夕の通勤時間帯の慢性的な交通渋滞が緩和され、勿来地区から平地区まで所要時間 49分が 39分に短縮し、3次救急医療施設である磐城共立病院へのアクセスも向上します。また、物流、観光拠点である小名浜港周辺から常磐自動車道いわき勿来 ICまでの所要時間も 22分から約 18分に短縮されます。
 今年度は、いわき市錦町雷からいわき市佐糠町碇田までの延長 2.8kmについて開通させるべく工事を進めています。  久之浜バイパスは、いわき市久之浜地区における線形不良区間や狭いトンネルなどの道路構造上のボトルネックを解消し、主要幹線道路機能の強化を目的とした、いわき市四倉町から同市久之浜町金ヶ沢までの延長6.0kmの道路です。  いわき市久之浜地区は一部の道路線形が悪く、国際海上コンテナ車両の通行に支障となるトンネルもあり、道路構造に問題があります。また、越波や線形不良によるセミトレーラーの横転事故により、たびたび全面通行止めが発生し、通行の信頼性にも問題があります。
 久之浜バイパスの整備により、越波による交通障害や大型車にとってのすれ違い困難箇所(江之網・波立トンネル)が解消され、交通事故が減少する事により主要幹線道路としての安全性・信頼性が向上するとともに久之浜町市街地の交通混雑も解消します。

国道 49 号北好間地区の事故発生状況

 現在、今年度内の開通を目標に、改良、舗装工事を進めています。
 平バイパスはいわき市内の交通混雑の緩和と主要幹線道路機能の強化を目的とした、いわき市常磐上矢田町から同市好間町北好間までの延長 7.7kmの4車線の道路です。平成 7年に暫定 2車線で全盛開通し、引き続き 4車線化を進めております。
 平バイパスの 4車線整備により上矢田交差点からいわき中央 ICまでの所要時間が 16分から約 9分に短縮され、常磐自動車道から 3次救急医療施設である磐城共立病院やいわき好間中核工業団地へのアクセスも向上します。
 現在、平成 28年度の全線開通に向けてトンネル工事を進めています。
 北好間改良は、いわき中央 IC入口交差点の渋滞緩和と、急勾配・急カーブの続くいわき市北好間地区の交通事故の削減を目的として、住宅密集箇所を迂回する延長 2.2kmの道路です。
 北好間地区は物流や通勤交通が集中するため、いわき中央 IC入口交差点付近で著しい渋滞が発生しています。また、線形不良区間には急な下り坂や急カーブもあり、正面衝突や路外逸脱となる事故が発生しています。
 北好間改良により、急勾配や急カーブを回避するルートが形成され、安全性が向上するとともに、北好間地区の渋滞が緩和し、いわき中央 IC入口交差点の通過時間が 8分から約 3分に短縮されます。

 現在、調査・設計及び用地協議を進めています。
常磐道に架かる今田高架橋(相馬西道路)
 国道 115号相馬福島道路は、常磐自動車道と東北自動車道を結ぶ約45kmの自動車専用道路(無料)で、東日本大震災からの早期復興を図るリーディングプロジェクトとして位置づけられています。相馬福島道路が整備されることにより、被災地と内陸部の連携が強化され、被災地の復興支援につながることから早期の完成を目指しています。
 当事務所では、相馬福島道路のうち、阿武隈東道路、相馬西道路を担当しています。
 阿武隈東道路は 4つのトンネルと 7つの橋梁で構成され相馬市内の国道 115号の急勾配・急カーブ箇所を迂回する延長 10.7kmの自動車専用道路で、平成28年度の開通を目指しトンネル工事、橋梁工事、舗装工事を進めています。また、相馬西道路は 2つのトンネルと 3つの橋梁からなる延長 6.0kmの自動車専用道路で、平成 30年度の開通を目指してトンネル工事、橋梁工事、改良工事を進めています。
 国道 115号は東日本大震災では沿岸被災地の救助・救援活動に重要な役割を果たすなど、相馬〜福島間を繋ぐ主要な路線となっています。
 一方、急勾配や急カーブといった線形不良区間が多く、大雨による事前通行規制区間も抱え、平成 18年には大雨による落石により約 1ヶ月間の全面通行止めが発生し、物流、観光など地域経済や生活に大きな影響が出るなど幹線道路としての安全性や信頼性に課題を抱えています。
 相馬福島道路の整備より、悪天候や災害時にも寸断されない信頼性が確保され、相双地域から 3次救急医療施設への搬送の 8割を占める福島方面への安全・安心な救急医療を支援するととともに、常磐自動車道、東北自動車道とのはしご状のネットワークを形成することにより物流・観光等の地域経済活動の活性化が期待されます。

阿武隈東道路(楢這地区)の完成予想図
国道 399号十文字改良

 国道 399号十文字改良は国道 399号の事前通行規制区間や防災危険箇所、未改良区間の回避により、住民生活等における定時制や速達性の確保を目的とする防災事業ですが、改築規模が大きく、長大トンネルの施工を要し、高度な専門技術を必要とすることから延長 6.2kmの十文字道路のうち、トンネルを含む 3.3kmについて国による権限代行事業として整備するものです。
 十文字改良の整備により、住民生活等における安心・安全が確保されるとともに、東日本大震災に伴う電子力災害からの、避難解除等区域の復興・再生を支援します。
 東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故の被災地の復興は、道半ばです。磐城国道事務所は原子力災害からの避難指示区域をかかえる事務所として被災地の一日も早い復興を目指し、引き続き事業を進めて参ります。


HOME