建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2015年9月号〉

古都京都、奈良そして和歌山の歴史文化遺産をネットワークする「京奈和自動車道」

―― 和歌山県域における整備状況とその効果

 近畿地方整備局 和歌山河川国道事務所
 所長 寺沢 直樹



京奈和自動車道 位置図

1.京奈和自動車道の概要

 京奈和自動車道は、京都、奈良、和歌山を結ぶ延長約 120kmの高規格幹線道路で、国土開発幹線自動車道などと連携し、都市圏外周部の環状交通体系が形成され、拠点都市問の所要時間が短縮されるとともに、関西国際空港や和歌山下津港といった海外の窓口からの利用圏域を広域化することができます。これにより、近畿圏及び中部圏が一体となった大規模な経済圏形成を支援し、近畿地方及び中部地方の活力向上や国際競争力向上が期待されます。
 京奈和自動車道の沿線地域には「古都京都の文化遺産」、「古都奈良の文化財」、「紀伊山地の霊場と参詣道」など、日本の国宝・重要文化財の約 5割が近畿に存在し、その約 7割が京都府・奈良県・和歌山県に存在しています。また、関西文化学術研究都市等の学術研究施設や高度な研究開発拠点も数多く存在しています。そうした地域資源を有機的ネットワークで形成し、これからの近畿の経済・文化・暮らしを支えるとともに、災害に強い道路ネットワークを形成するため、現在、整備を進めているのが京奈和自動車道です。
 和歌山河川国道事務所では、この京奈和自動車道のうち、和歌山県域の整備を進めています。

国道 24 号の利用者の多くが渋滞緩和を実感

2.これまでの整備状況

 和歌山県域においては、平成元年度から事業化しており、平成 19年までには奈良・和歌山県境から高野口 ICまでの延長約 11kmの「橋本道路」を開通し、平成 26年までに高野口 ICから紀の川 ICまでの延長約 17kmの「紀北東道路」を開通しています。平成 27年 2月のアンケート調査では、紀北東道路を利用した方の約 95%の方より満足との声を頂いており、多くの方が所要時間の短縮や一般道路の渋滞緩和、観光地へのアクセス性の向上などを実感されています。
 現在、残る区間である紀の川 ICから阪和自動車道までの間、延長約12kmの「紀北西道路」において建設工事を行っているところであり、平成27年 9月には紀の川 ICから岩出根来ICまでの間を開通させ、平成 28年度には全線開通できる見込みとなっています。

3.京奈和自動車道の整備効果

1)企業立地に寄与
企業立地数の変化
 和歌山県発着貨物の約 4割は京都・奈良以東へ輸送されているので、京奈和自動車道の整備により、物資の流動に基幹的な役割を果たすことが期待されます。これまでの「橋本道路」、「紀北東道路」の開通に伴い、和歌山県北部地域では企業立地が進んでおり、10年間で 100社以上の企業立地が進展しています。  また、橋本東 IC周辺において大規模住宅地「彩の台」や企業団地「紀北橋本エコヒルズ」が開発されており、更なる開発として、企業団地「あやの台北部用地 (仮称)」が計画中です。

2)和歌山県特産品の出荷量が増加
 和歌山県北部地域は、柿・桃などの果実の栽培が盛んな地域であり、京奈和自動車道の整備により、名古屋以東など国内出荷額が増加しています。また、関西国際空港へのアクセスも向上しており、桃の海外への出荷量も年々増加しています。

橋本東 IC周辺における開発状況 和歌山県特産品の出荷量

3)観光客数増加
和歌山市・高野町の観光客数の変化(年比較)
 京奈和自動車道は、観光拠点を相互に連携し、広域的な観光ネットワークを形成します。特に近年においては、高野山への観光入込客数が約 76万人も増加しました。紀北西道路が供用すれば、阪和自動車道と京奈和自動車道が直結し、利便性がさらに向上するため、さらなる観光客数の増加、観光産業の活性化が期待されます。

4.おわりに

 京奈和自動車道の部分的な開通においても、前述のような整備効果が現れていますが、阪和自動車との接続部である紀北西道路が未整備であることなど、高規格道路ネットワークの役割・整備効果が十分発揮されていません。今後においても更なる地域の発展を目指すため、地域の様々な方のご協力・ご理解を頂きながら残る区間の整備を進めていく所存です。


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