建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2015年8月号〉

近畿そして日本のあしたを支える港湾・空港を目指して

 国土交通省 近畿地方整備局 大阪港湾・空港整備事務所
 所長 西村 尚己

大阪港全景(2013年2月3日撮影)

1.はじめに

 大阪港湾・空港整備事務所は、国際戦略港湾に位置づけられた大阪港や、国際拠点港湾である堺泉北港をはじめとする港湾と八尾空港を管轄し近畿地方整備局管内で唯一、港湾と空港の整備等を担当しています。
@大阪港の概要

 大阪港は背後に大都市圏を抱え、高速道路・幹線道路網とのアクセスが良い国際戦略港湾であり、国際コンテナ戦略港湾「阪神港」の一翼を担っています。これまで咲洲地区がコンテナ物流拠点として発展してきましたが、貨物量の増加や船舶の大型化に対応するため、夢洲地区に新たにコンテナターミナルを展開し、平成21年8月には主要アクセス道路である夢咲トンネルが開通し、平成21年10月からは3バースが一体的に運用されています。また、大阪港のコンテナ貨物の一部が夢洲地区に移転・集約されたことに併せ、咲洲地区では既存埠頭の利用転換が進められています。

A堺泉北港の概要

 堺泉北港は国際拠点港湾であり、背後には大規模な堺泉北臨海工業地帯を抱え、石油精製・石油化学・都市ガス製造工場等がコンビナートを形成しています。原油・LNGの輸入、石油製品・化学薬品の出荷等の物流を支えているほか、西日本有数の中古自動車の輸出拠点でもあります。一方で、広域かつ甚大な災害に対して、国と地方自治体が協力して応急復旧活動を展開するための基幹的広域防災拠点の機能を担うなど、工業港としての性格を超えて発展しています。

B八尾空港の概要

 八尾空港は小型機による産業航空活動や官公署等の航空基地として活用されています。また、阪神淡路大震災の後、大阪府が中部広域センターを隣接して整備し、平成15年より供用されており、防災の拠点としての機能を有しています。

2.整備状況

堺泉北港全景(2013年2月5日撮影)
@大阪港の整備状況

 大阪港は、平成16年7月に神戸港と連携した「阪神港」として、複数バース一体運営等により、港湾コストの削減、リードタイムの短縮を図る「スーパー中枢港湾」に指定されました。そして、平成22年8月にはハブ機能を強化するためのインフラ整備と、貨物集約などの総合的な施策を推進し、「選択」と「集中」に基づき国際競争力の強化を目指す「国際コンテナ戦略港湾」にも選定されました。
 この大阪港の中心となるのが、夢洲地区のコンテナターミナル(北港南地区国際海上コンテナターミナル)です。このターミナルでは、平成14年9月より既に供用されていた2バース(C-10、C-11)に加え、平成21年10月に水深-16mの耐震構造の岸壁(C-12)が供用を開始し、3バース(C-10、C-11、C-12)の一体的な運営が行われています。さらには、船舶の大型化や集貨への取り組みによる利用需要に対応するため、平成25年度にC-12の250mの延伸工事に着手しました。
 大阪港の主航路は、現在は水深-15mで暫定的に供用していますが、さらに国際海上コンテナターミナル整備の一環として、-16mへと拡幅・増深を進めています。また、これに伴って主航路に接続する航路・泊地および泊地の整備を進める計画です。
 また上記に加え、これらの整備に伴って発生する浚渫土砂を、計画的・安定的・経済的に処分するため、新島地区に土砂処分場の整備を進めています。この処分場は、大阪湾圏域から発生する廃棄物の受け入れを行うための海面処分場に隣接しており、将来は外貿コンテナ埠頭等の物流関連ゾーンとして利用される計画です。
 コンテナ船の更なる大型化や船社間の連携による基幹航路の再編など、海運・港湾を取り巻く情勢は大きく変化しています。この様な状況の中、国際コンテナ戦略港湾政策は国際基幹航路の我が国への寄港を維持・拡大することを目的とし、企業の立地環境を向上させ、我が国の国際競争力を強化し、ひいては国民の雇用と所得の維持・創出を目指しています。このため国土交通省では「国際コンテナ戦略港湾政策推進委員会」のとりまとめに基づき、「集貨」「創貨」「競争力強化」の3本柱の施策を総動員し、ハード・ソフト一体の整備に取り組んでいます。

A堺泉北港の整備概要

新島ケーソン据付状況(2015年5月28日撮影)
 堺泉北港では、助松地区において平成18年4月から水深-14mの耐震構造の岸壁(延長300m:1バース)が暫定供用を開始しており、その後も岸壁の整備に引き続き、水深-14mの航路の整備を進めています。なお、発生する浚渫土砂は、大阪湾内に点在し、貧酸素水塊の一因として懸念されている窪地を埋め戻す材料として活用し、海域の環境改善の一助となるように事業を進めています。
 また、堺2区においては大規模災害時の拠点となる「堺2区基幹的広域防災拠点」の整備を進めています。京阪神都市圏における大規模地震災害発災時の応急復旧活動等の拠点として、国内外からの救援物資・人員の受け入れ、被災地への輸送といった災害応急活動の核となる機能を担う「防災拠点緑地」「支援施設棟」「耐震強化岸壁」のほか、これらを結ぶ「臨港道路」の整備を平成17年度から進めており、平成24年4月1日からは「基幹的広域防災拠点」として運用を開始しています。平成25年度に防災拠点緑地の整備を概成し、既存緑地「海とのふれあい広場」(堺市)との一体的な利用が可能となりました。この緑地は、平常時には海辺に触れられる数少ない緑地の一つとして、地域の憩いの場として利用されています。また、毎年11月5日の「津波防災の日」を中心に、発災時に備えた防災訓練も行っています。

B八尾空港の整備概要

 八尾空港では、大規模災害時における緊急物資輸送および救助活動の活動エリアとして想定されている回転翼機エプロンおよびB滑走路等の地盤特性の検討を行います。

3.おわりに

 我が国の港湾・空港の情勢が大きく変化している今、国際コンテナ戦略港湾施策をはじめ、管内の港湾・空港を取り巻く様々な課題を解決すべく、大阪港湾・空港整備事務所の職員一同、一致団結して事業に取り組んでいきたいと思います。


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