建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2015年5月号〉

いよいよ安威川ダム建設工事がスタート

―― 昭和42 年の悲劇を繰り返さない

 大阪府 安威川ダム建設事務所
 所長 下村 良希

図A 安威川ダムの位置図
図A 安威川ダムの位置図
 私たち大阪府安威川ダム建設事務所では、大阪府北部に位置する一級河川安威川の洪水を防ぐために、安威川ダムを建設しています。このダムは、昭和42年に発生した北摂豪雨災害を契機に、安威川流域を大雨による洪水から守るため、当初多目的ダムとして計画立案されました。【図A】
 この安威川中流部・下流部は、土地が低いために、古くからたびたび洪水被害を受けてきました。このため河川改修工事等の治水事業が行われ、治水安全度の向上は図られてきたのですが、昭和42年7月の豪雨では、茨木市野々宮地区で安威川左岸が破堤し、浸水家屋約2万5,000戸、浸水農地約1,500ha、被害総額約1,000億円と、未曾有の被害が生じました。
 この水害を機に、安威川の抜本的な治水対策として、河道改修と上流のダム実施計画調査が順次進められ、昭和63年度に安威川ダムが事業採択されて「建設段階」に入りました。
 ところが、平成21年8月の大阪府戦略本部会議において、「今後の水需要予測に伴う水資源開発の見直しについて」審議され、安威川ダムからの利水撤退の方針が出されました。その後、平成23年9月の大阪府河川整備委員会(現:大阪府河川整備審議会)では、利水撤退後の利水容量の取り扱いについて「現計画が妥当」との結論が下されました。さらに平成24年6月には、政府から安威川ダム建設事業の検証について「継続(補助金交付を継続)」との対応方針が示されたことで、いよいよ平成24年12月に転流工、平成26年3月には、ダム本体建設の工事契約が無事に行われました。【図B】
 安威川は、このダムの完成を前提とした河川改修が完了している近年においても、大雨により水位が高くなっているので、ダムによる洪水調節は急務となっています。流域の関係5市(茨木市、高槻市、摂津市、吹田市、大阪市)からもダム促進の要望書が提出されるなど、安威川ダムへの地域の期待は非常に大きなものがあり、一刻も早く事業を完了する必要があるのです。【図C】

図C 近年の出水記録(平成25年9月15〜16日 台風18号)


 現事業計画としては、建設地は淀川水系安威川の大阪府茨木市大字生保・大門寺地先で、治水ダムとして建設します。形式はロックフィルダムで、高さ76.5m、長さ337.5m、総貯水容量1,800万m3の規模となります。【図D】

図D 安威川ダム標準断面図

 ダム地点の計画高水流量850m3/sのうち、690m3/sの洪水調節を行い、安威川沿川地域の水害を防ぎます。また、ダム下流の安威川沿川の流水の正常な機能の維持と既得用水の安定した取水の他、下流河道の河川環境の保全のために環境改善容量を利用した放流を行い流況改善を図ります。このダムにより、時間雨量80mm程度の大雨までは、下流域での洪水被害を防ぐことを想定しています。
 建設に当たっては、ダム湖に水没するなどの関係地区住民の皆様の多大な協力もいただきながら進めていますが、平成26年度に本体工事に現地着手し、2020年(平成32年)に控えた東京オリンピックイヤーの完成を目指し、治水効果の早期発現と魅力ある地域づくりに向けて事業を推進していきます。
図E 安威川フェスティバル2014
 また、ダム周辺にはオオサンショウウオ、オオタカやオオムラサキなど多くの動植物が確認され、里山や棚田もあり、多様な自然環境と景観が現存しています。私たちは「自然環境保全マスタープラン」や「周辺整備基本方針」を策定し、環境保全と活用の両立を図るよう努めています。周辺環境との調和により「未来につなぐ美しい自然、創造と交流の湖畔の里」を目指して、ダム完成後も市街地との連携交流を継続的に運営する仕組みと、ダム周辺を活用保全する担い手づくりについて、地域の方々の意見を踏まえ、請負業者、環境活動団体、アーティストなどと工事段階から取り組んでいます。平成26年11月には様々な団体で構成する「安威川ダムファンづくり会」主催による「安威川フェスティバル2014」を開催し、都市部と山間部の交流を図りました。【図E】

 安威川ダムは、JR茨木駅または阪急茨木市駅から車バスで20分程度、新名神高速道路(平成28年度開通予定)や名神高速道路からのアクセスも良い位置にあります。皆様には是非、安威川ダムのホームページもご覧いただくとともに、当事務所5階の「安威川ダム情報交流センター」では1/1,000ミニチュア模型の展示や映像による説明のほか、現地見学会も行っていますので、お気軽にご利用ください。【図F】

図F 施工状況「安威川右岸から左岸を望む(西から東)」
平成26年9月末撮影(ダム建なうっ!9月号より)

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