建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2015年4月号〉

東日本大震災を乗り越える

―― 地域の復興・再生の命綱となる「三陸沿岸自動車道」


国土交通省 東北地方整備局 三陸国道事務所


三陸国道事務所が進めている道路整備

 私たち三陸国道事務所は、東日本大震災からの復興を含め、三陸地域が抱える多くの課題を改善するため、効果的かつ効率的に様々な事業・施策ヘ取り組んでいます。特に大震災を通じて、道路の役割が改めて見直されたことから、三陸地域の骨格をなす幹線道路が「復興道路」として、三陸地域と内陸地域を結ぶ幹線道路が「復興支援道路」として全線が事業化されました。このため、地域の様々な問題改善に向けた改築事業を進めています。
 また、道路を安全・快適に利用していただくため、交通環境の改善や交通事故防止対策、交通の円滑化に向けた対策事業を進めています。このほか、大震災により被災した橋梁の復旧工事や、橋梁やトンネルの補修・補強工事、道路の維持管理など、利用者が安全安心・快適に通行できる道路環境づくりにも努めています。そこで、これまでの取り組みと近況をご紹介します。
 東日本大震災以降、私たちは早急な道路啓開に始まり、応急復旧・緊急復旧に着手し、そして復興のリーディングプロジェク卜である「三陸沿岸自動車道」の早期供用に向けて、各種調査設計、説明会等を進めてきました。今後も三陸沿岸地域の復興に貢献すベく、スピード感を持って道路事業を進めていきます。
 改築事業では、三陸沿岸自動車道・宮古盛岡横断道路、沿岸南北軸、内陸東西軸を高規格道路で結び、東日本大震災からの早期復興、防災ネットワークの形成、地域活性化等に寄与する路線として、整備を進めています。
 三陸沿岸自動車道の整備状況は、全体計画139kmのうち、三陸国道所管食い間は139qで、すでに開通しているのは31km、整備中が108kmですから、進捗立は22.3%となります。
 各区間について見ると、山田〜宮古南間の14qは山田宮古道路と名称される自動車専用道で、線形の不良区間、津波浸水区間を回避し、走行性の向上と所用時間短縮によって、釜石港などの主要港や緊急医療機関へのアクセス向上が期待されています。昨年度はトンネル、橋梁工事に着手しました。

 宮古太老道路は、宮古中央から太老までの21q区間で、救援物資の輸送拠点である久慈港と宮古市間のアクセス向上が期待されます。この区間もトンネル、橋梁の工事に着手しています。
 太老岩泉道路は太老〜岩泉を結び、田野畑道路は田野畑南と尾肝要を結ぶ区間で、どちらも6qです。これらの区間も久慈港とのアクセスに重要で、トンネルと橋梁工事に着手しています。
 尾肝要普代道路は、尾肝要から普代までの8q区間で、野田久慈道路は普代から久慈までを結ぶ25q区間です。これらも久慈港とのアクセスに重要な区間で、同じくトンネル、橋梁を施工しています。
 久慈北道路と洋野階上道路はともに久慈市内の区間で、久慈北道路は侍浜町から夏井町に至る7.4q、洋野階上道路は侍浜から階段上までの23qです。久慈北道路は久慈市と青森県八戸市間のアクセスを向上させることで、広域連携の強化が図られ、洋野階上道路は青森県三沢空港とのアクセスにおいて重要な区間です。ともに現在はトンネル、橋梁を施工中です。
 宮古盛岡横断道路は、宮古市と盛岡市を結ぶ地域高規格道路です。全体計画は100kmで、三陸国道分は33qを整備中で、東日本大震災での津波により壊滅的な被害を受けた箇所について、ルー卜の再配置や盤上げなど、まちづくり計画と一体的に事業を行い、被災地の一日も早い復興を促進します。
 このうち宮古〜箱石間を結ぶ宮古箱石道路の約33kmにおいて、岩手県より権限代行で整備しています。国道106号の線形不良区間を回避し、走行性が向上するとともに、所要時間の短縮により県都盛岡市と宮古市聞のアクセス性向上、救急医療施設への速達性向上等の効果が期待されます。昨年度は用地買収等を進め、改良工事、橋梁工事、トンネル工事に着手しました。
 このように、三陸沿岸自動車道の整備によって、三次救急医療施設の60分圏域が拡大し、より多くの救急患者に対する早期の初期治療が可能となります。災害時にも寸断しない強靭な道路が確保され、災害時でも石油供給拠点である八戸港から、沿岸各地への安定的かつ確実な輸送を支援します。
 さらに仙台〜宮古聞が約3時間で結ばれます。現在、仙台〜八戸聞は所要時聞が約8時間もかかっていましたが、三陸沿岸道路の整備で約5時間となり、3時間の時間短縮となります。これにともない三陸地域の物流の効率化・品質の向上が期待され、搬送時間短縮によって輸送水産物の品質向上も図られるなど、地域産業の振興に向けて多面的に寄与します。


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