建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2015年4月号〉

加賀百万石の歴史を誇る文化圏の港湾整備

―― 地域に根ざした事業の推進

 国土交通省 北陸地方整備局 金沢港湾・空港整備事務所
 所長 杉村 佳寿

金沢港

1.はじめに

平成20年11月に供用を開始した大浜国際物流ターミナル
大浜国際物流ターミナル整備事業の概要
 金沢港湾・空港整備事務所では、石川県内を管轄として金沢港、七尾港、輪島港において港湾の整備を実施しています。

@金沢港の整備概要

 金沢港の背後には産業機械・建設機械の製造など、ものづくり関連の企業が多数立地し、港湾を利用しています。しかし、これまでの金沢港には水深10mまでの岸壁しかなく、地元企業は大型船舶が入港する太平洋側の港湾まで貨物を陸上輸送するなど、非効率的な企業活動となっていました。
 このため、船舶の大型化に対応した大浜国際物流ターミナル(水深13m)整備事業に着手し、事業効果の早期発現を図るため、平成20年11月に水深12mで暫定供用を開始しました。現在は水深13m化に向けた航路の浚渫、船舶が安全に接岸出来るよう防波堤の改良、大型船が2隻同時に接岸出来るよう岸壁の延伸工事を実施しています。

A七尾港の整備概要

 七尾港の背後地域には木材流通加工企業が多数立地し港湾を利用しています。近年、木材運搬船の大型化に対応した港湾施設の整備が望まれていました。このため、多目的国際ターミナル(水深13m)整備事業を進め、事業効果の早期発展を図るため平成19年12月に水深10mで暫定供用を開始しています。現在は水深13m化に向けて前面の泊地や航路の浚渫を行っています。

B輪島港の整備概要

 輪島港は、能登半島の北部、輪島市に位置し、古くは三津七湊のひとつ「親の湊」として栄え、明治の頃は北前船が行き交う歴史ある港町です。しかし、能登半島沖は海の難所であり、暴風や荒波のため船舶が危険にさらされることがあります。こうした時、船舶が安全な場所へ避難できるよう、輪島港では防波堤の整備を行っています。このように避難用に防波堤が整備されている港湾を避難港といい、全国で36の港湾が避難港に指定されています。

軟弱な地盤に対応した構造(鋼板セル式)により
整備された七尾港大田多目的国際ターミナル
大田多目的国際ターミナル整備事業の概要
輪島港

2.地域振興に繋がる港湾利用

 港湾を利用しているのは、貨物船に限ったことではありません。近年、我が国へのクルーズ船の寄港隻数が増加しており、クルーズ船の受け入れも港湾の重要な役割となっています。
 石川県内では、平成26年は金沢港16隻、七尾港1隻、輪島港4隻のクルーズ船が寄港しました。金沢港は背後に加賀百万石の面影を残す兼六園や長町武家屋敷、ひがし茶屋街など、七尾港は近郊に和倉温泉など、輪島港は伝統工芸品の輪島塗りなど、石川県には観光資源が数多く存在しており、クルーズ船の寄港で訪れる観光客による地元への経済効果は多大なものです。

3.おわりに

 平成27年3月14日に、北陸新幹線【長野−金沢間】が開業となりますが、開業に合わせて、金沢駅西口の名称が「金沢港口」に変更となります。このように、港湾に対する地域の注目度は今後ますます高まっていきます。当事務所としては、県内港湾を取り巻く様々な課題を解決しつつ、地域のニーズに対応した港湾振興を目指していく所存です。

輪島港避難防波堤整備事業の概要


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