建設グラフインターネットダイジェスト
〈建設グラフ2015年3月号〉
多摩川河口部(高潮対策区域)における高潮堤防工事
H25多摩川南六郷高潮堤防工事
監理技術者(新日本工業株式会社) 圷 陽平 |
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図1 施工位置図 |
図2 標準断面図 |
1.はじめに
多摩川河口部は広大な緑地が広がり、数多くのスポーツ施設や散策コースが整備され、河川利用者の憩いの場として親しまれているとともに、貴重な自然空間を有しています。川裏には住宅や公共施設等が隣接し、地域に密着した河川となっています。
また、多摩川河口部には人口・資産が集中しており、万一高潮による浸水が発生した場合、甚大な被害を及ぼす事となるにも関わらず、堤内地盤高はほとんどが計画高潮位以下となっています。
このため、多摩川河口部の浸水被害防止のため高潮堤防整備工事を実施することになりました。
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写真1 鋼矢板打設状況 |
写真2 大型連節ブロック設置完了 |
2.工事の概要
今回の施工は、多摩川左岸河口部よりおよそ5.0kmの位置にて行っています。この区域は、大雨による洪水対策とともに、潮の高低差があり高潮の対策も必要な区域となっています。高潮堤防は、過去の台風による被害状況等による高潮の影響を考慮した整備を行います。
施工内容としては、現況堤防堤脚を必要な深さまで掘削し、浸食防止の鋼矢板を打設します。そして法面を遮水シートで覆い浸透対策を図ったうえで大型連節ブロックを設置します。大型連節ブロックは洪水等に耐えうる重量として、鋼線にて全てのブロックが一体化となるように施工します。
大型連節ブロックの設置が完了したら、覆土とともに張り芝を行います。
その他、現況の堤防天端サイクリング道路や、階段・スロープ等も復旧し、高潮による災害の発生の防止及び軽減を図った新たな堤防となります。
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写真3・4 |
インフォメーションブース |
3.近隣対策・安全対策
今回、工事箇所の近くには堤外地に野球場や公園、堤内地に住宅地や駅等の施設があり、河川利用者がとても多い場所です。その為、河川利用者の協力を得ることが工事を進めるにあたり重要でした。
施工をする上で、河川利用者からは「いつも使っているサイクリング道路が使用できない」、「住宅地側からのアクセスが制限されてしまう」などと課題が数多くありました。そこで、工事への影響が最小限な範囲でサイクリング道路の代替道路を設置したり、工事箇所を横断できる歩行者通路を設置するなどの工夫をしています。また、この工事が何の目的で行っているのかを理解してもらうことに注力しています。その中で、「南六郷堤防インフォメーションブース」を設置し、工事の目的やどんな作業を行っているのかをできる限り分かりやすく説明しています。また、作業員の顔写真や、施工業者はどんな会社なのかも掲示しています。
現場では、まず整理整頓を徹底し一仕事一片づけを掲げて作業を行っています。また河川利用者から現場作業の様子が見えるような低い仮囲いにして、常に見られているという意識の元で作業を行っています。大型車両搬入時は、誘導員を増員して、第三者災害の防止に努めています。休日になると河川利用者の数がとても多くなる為、休日の工事車両通行は極力避けるような工程管理を行っています。
河川工事では重機と手元の作業員が近接しての作業が多いので、接触事故防止の為に重機の背後に作業員がいることを伝える「作業員接近警報システム」を採用して作業を安全に進めています。また、無理な工程を組んだり、現場内の雰囲気が悪いと事故へ繋がると考えていますので、元気な挨拶を行うことや、作業員一人一人に声掛けを行うなどの現場内のコミュニケーションを大切にして無事故・無災害での竣工を現場一丸で目指して工事を行っています。
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写真5 京浜河川事務所 工事安全協議会総会 |
写真6 田園調布出張所管内工事安全パトロール |
4.おわりに
今回の工事は、京浜河川事務所田園調布出張所が管轄しています。その中には、堤防強化工事、河道掘削工事、河川維持管理工事等のさまざまな工事があります。京浜河川事務所工事安全協議会田園調布支部では、週間工程会議や安全パトロール等により連絡を密に取り合いながら活動しています。
また、類似工事の事故事例や事故防止対策の共有を行い、安全協議会会員が無事故・無災害の竣工を迎えるとともに、工事完成に伴い地域がより安心・安全となることによって地域の方々に喜んでもらえるよう努力して参ります。
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