〈建設グラフ2015年2月号〉

仙台塩釜港のいま

　国土交通省東北地方整備局
　塩釜港湾・空港整備事務所
　所長髙田直和

　私たち塩釜港湾・空港整備事務所は、宮城県内の国際拠点港湾である仙台塩釜港（仙台港区・塩釜港区・松島港区・石巻港区）及び拠点空港（国管理空港）である仙台空港の整備を実施しています。
　さる平成23年3月に発生した東日本大震災では、宮城県の港湾は甚大な被害を受けました。その再生にあたっては、新たな港づくりの観点から、産業復興を支える物流機能のあり方や、産業活動・まちづくりと連携した津波防災のあり方を検討したうえで、計画的な復旧・復興に当たってきました。これまで国、県、港湾所在市・町、そして港湾利用者からなる復興会議において、復旧・復興方針（産業・物流復興プラン）が取り纏められ、その方針に基づき関係者が一丸となって復旧・復興に向けて取り組んできたところです。

仙台塩釜港の概要

　仙台塩釜港は、東北唯一の政令指定都市「仙台市」と｢多賀城市｣にある『仙台港区』と、古くから“みなとまち”として栄えた「塩竃市」「七ヶ浜町」「利府町」に位置する『塩釜港区』、宮城県第二の都市「石巻市」とブルーインパルスの本拠地「東松島市」に位置する『石巻港区』、さらに日本三景で有名な『松島港区』の4港区からなる東北唯一の国際拠点港湾として、重要な役割を果たしています。

仙台港区

　仙台港区の向洋地区は、北米、中国、韓国を結ぶ外貿コンテナ定期航路（週5便）や、国際コンテナ戦略港湾である京浜港等との間に国際フィーダー航路を多数（週11便）有し、東北港湾のコンテナ取扱量の約6割を占める等、東北のコンテナ物流拠点として重要な役割を果たしています。平成25年のコンテナ取扱取扱量は約20万TEU（震災前約94%）まで回復しました。
　中野地区は、内陸部に立地する自動車工場からの積出し基地、東北地方で販売される自動車の移入基地となっており、完成自動車の国内流通拠点として重要な役割を果たしています。平成23年1月に宮城県内に新たに立地した自動車組立工場の稼働により、平成25年取扱量は震災前と比較し約40%増加しています。
　そのほか、国内長距離フェリーが苫小牧港に毎日運航、名古屋港に隔日運航しており、人流と農水産品や紙・パルプ等の物流を支える国内流通拠点として重要な役割を果たしています。
　栄地区は、東北地方で唯一製油所を有し、東北地方全域への供給や海外への輸出を行うとともに、臨海部に火力発電所、都市ガス工場が立地し、地域のエネルギー安定供給に貢献しています。

発災直後からの航路啓開

　平成23年3月に発生した東日本大震災では、地震及び来襲した津波により、防波堤、岸壁、航路等の港湾施設をはじめ、背後に立地する企業にも甚大な被害が発生しました。このため、エネルギー供給や物流機能が停滞し、大きな影響を受けました。
　そのため、私たちは津波警報が解除された3月14日より、航路啓開作業を迅速に進め、海上保安部、港湾管理者及び港湾関係者ご協力のもと、発災後6日目となる3月17日に第一船を入港させることが出来ました。
　航路啓開作業にあたり、(社)日本埋立浚渫協会との災害協定に基づき、所属会員企業が保有する作業船団を日本各地より回航し、港湾工事に従事する企業の協力のもと迅速に実施されています。

高砂コンテナターミナル復旧工事

　仙台港区のコンテナターミナルは、向洋地区にある高砂コンテナターミナル1号岸壁（水深12m）と2号岸壁(水深14m)の2バースで構成されています。被害が大きかったのは、北米等に就航する定期大型コンテナ船が利用する2号岸壁で構造上重要な基礎杭が一部損傷、岸壁法線の海側へのはらみだし等の被害を受けるとともに、荷役機械のガントリークレーン、ストラドルキャリア等も全て使用不能となり、ふ頭内に保管されていたコンテナも津波により散乱・漂流しました。
　1号岸壁は、比較的被害が小さく、航路啓開とヤード内に散乱した被災コンテナの処理に目処がついた6月1日より京浜港とのフィーダー輸送が再開されました。しかし、ガントリークレーンは使用不能であり、修理する間、大型クローラクレーンをチャーターして対応せざるを得ませんでした。9月5日からガントリークレーン1基が供用され、大型外国船の受入体制が整い、9月30日に待望の外国航路（中・韓航路）が再開されました。一方、2号岸壁はガントリークレーン基礎の鋼管杭が損傷していることが判明し、復旧には1年を要する大掛かりな工事が必要でした。しかし、当該岸壁は早期復旧の要請が極めて高い施設であったため、工期短縮を計り、関係者の協力によって、休日なし・昼夜兼行の3交替工事を実施し、暫定供用まで4ヶ月間という急速施工を成し遂げました。
　また、震災前の貨物を取り戻すため、船社へのポートセールスを積極的に行い、平成24年1月22日に、東北地域において貴重な北米航路が再開されています。
　現在は、平成24年度から開始した中野地区国際物流ターミナル整備事業をすすめており、この船舶の大型化に対応した水深14m岸壁の整備により、仙台港区の課題である既存岸壁の混雑緩和と効率的な貨物輸送を実現します。

石巻港区

　石巻港区は、木材・食品飼肥料・鉄鋼・造船・製紙関連の産業が立地する宮城県北部の工業・物流の拠点となる臨海型工業港で、石巻市の製造業就業人口の約1/3の雇用を支えるなど、地域経済の中核を担っています。
　産業についても、震災後、多くの企業が石巻港区での再建を誓い、懸命な復旧の結果、生産活動を開始しており、こうした力強い産業活動を力強く支えていけるよう、早期の復旧により物流機能を回復させることが肝要です。
　さらに津波によって、臨海部に立地する企業の設備・資産や従業員の生命が失われ、その後も続く産業・物流への深い爪痕を経験したことから、津波の防護と避難のための対策は、後世に向けても必要不可欠です。
　このように、地域経済の復興や地域生活全体の復興にとっても、石巻港区の復旧・復興は極めて重要ですから、仙台港区と同様に港湾関係者が一丸となって復旧・復興に取り組んでいます。
　また、東北地方の畜産業を支える穀物輸入拠点の集約化や、国際バルク戦略港湾の連携港としての取組みなどにより、今後ともその拠点性が、さらに高まるものと期待されています。

広範囲な被害

　東日本大震災では防波堤、岸壁、民間護岸、航路泊地等の主要な港湾施設をはじめ、地域経済を支える臨海部の産業にも甚大な被害が発生し、生産機能や物流機能が停滞するなど、地域経済に大きなダメージを与えました。
　また、三陸沿岸の広範囲に及ぶ地盤沈下にともなう高潮冠水と、津波被害により発生した瓦礫の迅速な処理が地域全体の課題となりました。現在、高潮被害については、堤防や排水設備の整備により、徐々に解消されつつありますが、未だ冠水被害が生じている地域もあります。
　瓦礫処理に関しては、災害廃棄物処理を被災市町村より受託した宮城県が、広大な用地を有する石巻港区雲雀野中央ふ頭内に巨大な瓦礫処理プラント（中間処理基地）を建設し、膨大な瓦礫処理を迅速に行い、平成26年9月で完了させました。また、石巻港区内に海面処分場（80万m3）を整備し、瓦礫処理の処理用地としました。
　現在は雲雀野地区国際物流ターミナル整備事業として、防波堤の延伸を推進しており、高波浪から雲雀野地区水深13m岸壁、水深10m岸壁を防護し、安全で効率的な港湾荷役の実現を目指しています。

終わりに

　仙台塩釜港は東北唯一の国際拠点港湾として、東北地方全体の産業・物流を支えており、港の復旧・復興は、地域経済の回復はもとより、東北地方の力強い復興にとっても極めて重要です。地元関係者がこれまで以上に一丸となって復旧・復興に取り組んでいく考えです。

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