建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2015年2月号〉

木曽川左岸における砂圧入式静的締固めによる高潮堤防補強工事

―― 地域の暮らしを守る災害に強い高潮堤防を作る

 平成25年度木曽川源緑高潮堤防補強工事 木曽川工事所
 現場代理人(株式会社奥村組名古屋支店) 新田 勝紀

高潮堤防補強工事(城南排水機樋管)

1.初めに

 木曽川は、長良川、揖斐川とともに木曽三川と呼ばれる一級河川です。木曽三川の下流一帯は、日本最大の海抜ゼロメートル地帯を有しています。  今から56年前の昭和34年に発生した伊勢湾台風は、この地域を中心に猛威を振るい、甚大な被害をもたらしましたが、今後数十年の内に起こる可能性が高いとされる南海トラフ地震においても、木曽川の堤防が液状化等によって機能を失い、高潮等にともなう大規模水害を発生させるおそれがあります。
 本工事は、堤防に耐震補強を施すことによって、液状化の防止を行い、地震に耐えうる高潮堤防へと機能向上を図るものです。

2.工事概要

 本工事は、国道23号線と木曽川左岸を並行する堤防道路との交差部で、左岸川裏を仮設盛土上から砂圧入式静的締固め(SAVE-SP工法)によって、堤防の補強を実施しています。
 ここでいう、SAVE-SP工法は、従来工法(サンドコンパクションパイル工法)を狭隘な空間でも施工が可能となるように開発されたもので、材料砂に流動化剤と遅行性塑性化剤を添加することにより、流動性を持つ砂を製造し、それを地中の緩い砂層を対象に小型機械によって圧入することで、透水性を確保しながら周辺地盤の強度を高め、耐震性を向上させています。

写真1 SAVE-SP施工状況

3.工事状況

 本工事は、平成26年3月から工事に着手し、周辺の調査等を行った後に、仮設盛土、地盤改良工事を行いました。施工に際しては、通過車両等の安全性確保と砂杭施工機器配置の両面から堤防道路延長2kmを通行止めにしました。
 通行止めは、道路利用者に不便をかけることになるため、地域の方と密にコミュニケーションを図ることで、その影響を軽減するべく工事計画を逐次修正しながら施工を行いました。

4.地域の方とのコミュニケーション

 地域の方とのコミュニケーションの中で工事に関わる様々なアドバイスを頂き、非常に参考になりました。たとえば、お年寄りにとって迂回路の通行がつらいことや、小学生の通学路へ迂回車両が増えていることなど、教えて頂いた情報を基に、一つひとつ丁寧に対応しながら、ご負担を和らげる努力を続けてきました。
 また、少しでも良い環境づくりのため、若い技術者、女性技術者の目線も取り入れ、自分達の気づかないところで他にもご迷惑をかけていないか、細かな配慮ができているか等をチェックする取り組みも試行しています。

写真2 女性技術者パトロール状況

5.若い力・女性の力

 土木は一般に経験工学と呼ばれています。しかしながら、技術が著しく進歩した現代においても、予期せぬ事態から経験に勝るものを作る必要が多々生じ始めており、若手技術者、女性技術者が過去に囚われず持てる力を如何なく発揮するとともに、必ず良い工事をするんだという使命感を持って臨むことが、これからの土木にとって欠かせない時代に移行しているのではないでしょうか。
 本工事では、若い技術者の育成にも寄与するべく、地域の学生に就業体験の場を提供し、人々の暮らしを下支えする土木の魅力を存分に味わって頂けるよう注力しました。また、前項でも触れましたが、女性の感覚や視点を現場管理に活用するために実施した女性技術者によるパトロールでは、女性ならではの細かな配慮による、整理整頓、清潔、しつけ(4S)といった安全面・環境面に対する意見ないし指摘が現場にとって非常に参考となりました。

6.おわりに

 地域とのコミュニケーションを大切にしながら竣工を目指してきた当工事は、1月末に無事完成しました。地域で生活をされる方々の生命と暮らしを守る意義深い工事を担当し、職員一同大きな達成感を感じています。


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