建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2015年1月号〉

荒川下流部における水門施設の耐震工事

荒川下流工事安全対策協議会 副会長
戸田建設株式会社 土木工事部長
池田 隆
三領水門耐震対策(H25)工事 現場代理人
中村 真之



施工位置図

1.はじめに

 荒川下流流域は、過去の度重なる洪水被害を経験し大規模な整備を必要とされたことから、荒川放水路として約80年前に抜本的に整備され、その後は大きな被害はありませんでしたが、阪神・淡路大震災や東日本大震災でも同時多所で大規模な堤防被災が発生したことから堤防の耐震対策が急務となっています。
 水門や排水機場といった構造物も堤内に暮らす人々の安全を確保する重要な施設であり、荒川下流部でも綾瀬水門を皮切りに耐震対策を開始し、今回の三領水門の対策工事となりました。

2.工事の概要

 三領水門は荒川と菖蒲川の合流地点に位置し、荒川の洪水流の菖蒲川への逆流防止を目的とした水門です。この水門を最大級の地震にも耐えられるように補強します。
 施工の手順は、全て非出水期に行いますが、初年度は浚渫と戸当たり金物の設置を行い、次の非出水期に水門本体部分の耐震工事を片側づつ行っていきます。本体の耐震工事の施工方法は、仮設の締切ゲートにて水路を閉鎖し水門本体部分をドライアップして施工します。
 耐震工事は2種類の工法を採用し、門柱部はAT−P工法による鉄筋巻き立てと炭素繊維補強にて行い、堰柱部と底板部はRMA工法によるせん断補強筋による耐震化を行います。片側のゲートは常に正常にに作動する状態を保ちながらの施工となります。

三領水門全景(川表側) 浚渫作業図

3.近隣対策

 工事箇所には川口市立西中学校が隣接し、さらに家屋も密集していることから工事によって発生する騒音の影響を最小限となるように、防音対策を行います。
 門柱補強施工時の外部足場の周囲に防音効果の高いプラットウォールを設置します。川裏側の管理橋と川裏仮締切との間の天端空間に防音シートを設置します。はつり作業に使用する機械にはサイレンサーを取り付け騒音の発生を削減します。
 また、用地境界に騒音表示装置を設置し、騒音レベルを見える化することにより周辺住民と一体となった監視、対応を行います。
 工事車両の進入・退出は一か所とし、交通誘導員を配慮して通学路及び生活道路を利用する人たちの安全配慮を行います。また西中学校からグランドまでの通路を常時確保し、生徒の安全を確保します。
 さらに周辺住民とのコミュニュケーションを大切にし、安全第一で工事を行います。

補強工標準図

4.おわりに

 荒川下流河川事務所所管の工事は、笹目橋から西新井橋までの間を岩淵水門出張所、西新井橋から荒川河口までの間を小名木川出張所が管轄していますが、安全協議会としてはひとつにまとまり荒川下流工事安全対策協議会として活動しています。工事施工に係わる労働災害、交通事故及び犯罪行為等の発生を未然に防止し、かつ労働者の安全衛生及び職場環境の向上に努める事を目的に安全協議会の開催、安全パトロールななどを実施しています。安全協議会の会員が一体となり無事故・無災害での工事完了を迎えられるよう努力してまいります。

プラットウォール設置状況図 防音シート設置状況図


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