建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2015年1月号〉

誘致努力の成果で北海道新幹線が札幌まで認可・着工

―― 建設業は人づくりと若年労働者の確保が優先課題

─― 今期(3期目)を振り返って政策・公約の達成度を、どう自己評価しますか
高橋 私は道民の皆様方のご理解とご協力のもと、公約の実行プランに基づき、民間主導の自立型経済構造の確立や持続可能で活力ある地域社会の実現に向けた政策の推進に全力で取り組んできました。
 特に、北海道新幹線の新函館北斗・札幌間の認可・着工、過去最高を記録した外国人観光客数の飛躍的な増加、北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区の指定、世界的な評価を受けたバイオ産業の売上高の増大、自動車関連産業や食産業などの企業立地の進展、リスク分散の視点による企業の本社機能の移転などの動き、太陽光や風力、バイオマスなど再生可能エネルギーの広がりなどが見られる一方、本道では全国を上回るスピードで人口減少・高齢化が進行し、地域産業の担い手不足や医療従事者の地域偏在への対応、子育て環境の整備などが、引き続き地域にとって重要な課題となっています。
 このため、私としては本道が直面するこれらの問題に、地域の知恵と力を結集して、時機を失することなくしっかりと対応し、未来への道筋を切り拓いていかなければならないと考えており、残された任期において、引き続き就任以来一貫して私が目指してきた「地域が輝く北海道」の実現に向けて、全力で取り組んでいく考えです。
─― 任期中に政権交代があり、政府の施策は劇的な大転換を見ましたが、北海道としてはどんな政策に重点を置いて整合性を実現しましたか
高橋 本道は急速に進行する人口減少・高齢化に対応した地域社会の構築や、本道経済・道民生活への影響が懸念される TPP問題への対応、電力の安定供給、さらには安全で安心な地域交通の維持・確保など将来に関わる大きな課題を抱えています。
 その一方で、アジアを中心とする外国人観光客の飛躍的な増加や食クラスター活動の着実な進展、さらには再生可能エネルギーの導入の拡大など未来につながる新たな動きも見られます。
 そこで私は、こうした動きを一層広げるとともに、直面する課題に的確に対応し、将来にわたって持続的に発展する北海道を築いていくため、地域の資源や特性を踏まえた政策を効果的に展開していくという基本的な考え方に立ち、食や観光など本道の強みを活かした自立型経済の実現をはじめ、持続可能な環境先進地づくり、安全・安心に暮らせる社会の実現などに重点を置いた政策に取り組んできました。
─― アベノミクスにより、政府は全国レベルで公共事業の水準回復と、壊滅状態に追い詰められていた建設産業の再生に乗り出しましたが、道内における建設業の現状と、今後の展望について伺いたい
高橋 本道の建設業は、社会資本の整備はもとより災害時の対応や除雪など、地域の安全・安心や経済・雇用を支えている重要な産業ですが、建設投資の大幅な減少に加え、加速する人口減少や少子高齢化といった社会経済情勢の中にあって、全国と同様に厳しい経営環境に置かれています。
 また、建設業就業者数は年々減少し、若年者の割合が減少する一方、50歳以上が全体の半分以上を占めるなど高齢化が進行しており、次世代への技術・技能の承継が困難となって、工事の品質確保など建設業本来の役割が果たせなくなることが懸念されています。
 このため、道として平成25年3月に策定した「北海道建設産業支援プラン 2013」に基づき、中小企業診断士等による経営相談など、経営力の強化を図るとともに、高校生を対象としたインターンシップを実施するほか、教育機関と建設業団体による意見交換会の開催など人づくりの強化に取り組んでいます。
 今後とも本道の建設業が、社会資本の整備はもとより地域の経済・雇用を支え、安全・安心を担っていけるよう、若年労働者の確保・育成などに取り組んでいきます。
─― 近年は、従来の常識を覆す耳目を疑うような災害、事故、事件などが発生していますが、人々の暮らしを与る行政の立場として、任期中に心を痛めた印象深いハプニングは何でしたか
高橋 この3期目の4年の間にも、残念ながら東日本大震災の復旧・復興、暴風雪や豪雨をはじめとする自然災害、JR北海道のトラブルなど、数々の災害や事件が生じ、中にはかけがえのない命が失われる事態となったものもありました。こうした事柄は印象深いというよりも、私にとって忘れられない、そして忘れてはならない出来事です。
 災害や事件・事故については、その一つひとつを今後の教訓として活かすことが大切であり、道民の皆様の生命・財産を守る責務を有する北海道知事として、残された任期においても対応に全力を傾けてまいりたいと考えています。
─― 道民にとって、長年の悲願だった新幹線の開通が間近に迫りました。いよいよ新幹線を持つこととなった北海道は、それだけでも存在意義と価値が高まります。その誘致に粉骨砕身で努力を重ねてこられた知事としても、格別の思い入れや感慨深さもあることと思われますが、新幹線の走る北海道の今後の理想的な将来像をどう描いていますか
 北海道知事
 高橋 はるみ
 たかはし・はるみ
 昭和 29年 1月6日生まれ 富山県出身
 昭和 51年 3月 一橋大学経済学部 卒業
 昭和 51年 4月 通商産業省入省
 昭和 60年 大西洋国際問題研究所(在パリ)研究員
 平成 元年 6月 通商産業研究所総括主任研究官
 平成 2 年 7月 中小企業庁長官官房調査課長
 平成 3 年 6月 工業技術院総務部次世代産業技術企画官
 平成 4 年 6月 通商産業省関東通商産業局商工部長
 平成 6 年 7月 通商産業省大臣官房調査統計部統計解析課長
 平成 9 年 1月 通商産業省貿易局輸入課長
 平成 10年 6月 中小企業庁指導部指導課長
 平成 12年 5月 中小企業庁経営支援部経営支援課長
 平成 13年 1月 経済産業省北海道経済産業局長
 平成 14年12月 経済産業省経済産業研修所長
 平成 15年 2月 経済産業省退官
 平成 15年 4月 北海道知事
高橋 北海道新幹線の開業は、本道経済の活性化や各地域の発展につなげていくための、大きなチャンスです。
 北海道は、面積の広さだけではなく人口や経済規模の面でも一国に匹敵する規模があります。また、安全・安心な食や美しい自然環境など優れた資源に恵まれ、世界に誇れる魅力をもった地域であり、国内外から多くのお客様が訪れています。
 さらに東日本大震災を契機として、民間企業による本社機能などの道内への移転の動きも着実に広がっています。これまで本道の弱みと思われていた積雪寒冷という気候や、首都圏からの距離の遠さといった特徴が、「強み」にもなり得るものと考えています。
 本道は今、急速に進む人口減少という問題に直面していますが、こうした課題に適切に対応しながら、北海道の可能性を最大限に発揮させ、世界に向けて発信することにより、子どもたちからお年寄りまで道民の皆様がそれぞれの地域で、将来にわたって豊かに暮らせる北海道を実現したいと考えています。

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