建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2014年12月号〉

【ZOOM UP】

西紋別地域5市町村が運営する公立病院が改築

―― 大地震動時における病院機能の維持・耐震安全性を十分に確保

広域紋別病院改築工事

外観完成イメージ

 紋別市で広域紋別病院の建設が進んでいる。これは道立紋別病院の移管を受けて、紋別市、滝上町、興部町、西興部村、雄武町の5市町村で広域紋別企業団を組織し、広域的な二次医療、二次救急機関としての役割を担うもので、さらに一次医療を担う地域医療機関、国保病院や、遠軽、北見、名寄、旭川などの二次、三次医療機関とも連携して西紋別地域の医療をサポートする。
 地上6階建て延床面積は11,584uの規模で、病床数は150床。診療科目は内科、消化器内科、循環器内科、呼吸器内科、外科、産婦人科、小児科、眼科、整形外科、精神科、耳鼻咽喉科、皮膚科、泌尿器科、放射線科、リハビリテーション科、神経内科、麻酔科となる。
 施設の設計に当たっては、患者動線とスタッフ動線を重視した機能的な空間構成とし、外来動線の中心にモール空間を設け、これを軸として分かりやすい構造とした。また、段差を解消し、分かりやすいサイン配置とした。患者の安全と看護の効率化を図るため、病棟の中心にスタッフスペースを配置した。

 病室はゆとりある広さを確保し、視界、景観に配慮した快適な病室と自然採光を確保。オホーツク海の眺望や街並みに調和した外観としている。
 災害時は病院機能の維持と安全性を確保し、救急部門の機能も維持されなければならない。このため、免震構造を採用し、ドクターヘリのヘリポートを設置した。
 その他、環境との調和に配慮し、木質バイオマスチップボイラーを採用し、高気密高断熱による安定した室内環境を実現するなど、省エネと環境負荷の低減を図っている。将来的な医療環境の変化に備え、改修の必要が生じた場合は、柔軟に対応できる乾式間仕切りを採用し、配管スペースも確保してある。
 配置計画としては、病院棟を敷地東側に寄せることで、南側により多くの駐車場(約300台収容)を確保するとともに市道側から車両と歩行者のアプローチを設けた。
 敷地棟の敷地内は、基本的に勾配をなくし、車両の出入りにおける見通しを確保したほか、冬期間の凍結路面による歩行者や車両の事故防止を図り、動線を明確に分離している。
 病院棟の正面を南側とし、病院棟西側は救急、食材、医療器具や医薬品の搬入、廃棄物の搬出、霊柩車の出入りなどを集約したサービスヤードとした。バイオマスボイラー棟などの付属棟は北角に配置される。これらサービスヤードは冬期間の北風から病院棟の出入り口を保護する役割を持たせている。
 敷地外周部の既存コンクリート擁壁は、隣接する市道の路盤への影響を軽減するため現状のままとし、外構についても建設コスト削減の目的から新たな擁壁を設けず、自然法面とする。


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