建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2014年11月号〉

公益社団法人日本カーリング協会の会長に就任

―― 制限速度 70キロに引き上げられた国道 40号の維持除雪を担当

 (公社)日本カーリング協会 会長
 錦産業株式会社 代表取締役社長
 貝森 輝幸 氏

■骨材販売業から工事施工へ参入

 道北稚内市の錦産業(株)は、昭和45年に故・貝森勝男と前会長の木村末次が共同で創業した。そして貝森輝幸氏が引き継ぎ三代目となる。当初は一般貨物の輸送と骨材の販売を主業務とし、重機とダンプ、骨材の砂を主要品目としていた。
 会社設立してまもなく入社した三代目貝森社長自身も、自ら重機やダンプを運転し、道路、土木工事の現場を隈なく走り回っていた。当時は既存の道路改良が盛んに進められていたことから、明るい将来像が見えていたという。
 中でも今年(平成26年)一般国道40号が制限速度70kmの規格で施工され、豊富バイパス、幌富バイパスなど、稚内へ短時間で往復できる道路の施工に参画できたことは印象深かったという。国道40号は軟弱地盤であるため、地盤改良をしながらの施工となり、1m当たりの施工費が高値となったが、稚内市が道央と最短距離で結ばれたことは、管内にとっては地域の誇りであり、現在もトンネル施工(天塩中川〜音威子府間)など冬期間の吹雪対策が行われていることは、同社長の45年の業務経験の中でも特に大きな意義を感じているという。

制限速度を70キロに引き上げた国道40号

 このように、創業当初は施工会社の付帯事業者として運営されたが、10年後には施工会社として本格参入するに至った。現在はオペレーター、現場代理人を含めておよそ80人の規模に拡大した。
 そして、昨年には国道の施工において、北海道開発局長表彰を受賞し、その前年には稚内開発建設部長表彰も受賞するなど、2年連続で表彰を受け、稚内市からも地域貢献に対する感謝状を受けるなど、管内でも有数の優良業者へと成長を遂げた。そうした信頼から、かつて霧立峠で災害(平成24年)が発生した際には、所管が留萌開建のエリアで管外ではありながらも、道路維持業者として応援出動した。
北海道開発局長表彰

 同社長は、冬期間の最も厳しい条件下では、工事を中断しても、通行止めだけは避けるような道路維持に努めることが課題という。たとえ作業を中断し、通行止めとなった場合にも、そこで立ち往生する車両がないかを常に巡回しなければならず、いかなる悪天候でも除雪機械の稼働を止めたのでは積雪する一方となり、開通に時間を要することとなる。したがって、通行止めの場合も除雪車を常に稼働させ、天候が回復次第、直ちに開通して円滑な流通を維持することが求められる。
 特にこの圏内の主要産業は牧畜で、搾乳された生乳は2日しかもたず、生乳タンクもないので通行止めは地域経済の大きな打撃となる。また、緊急自動車の通行も確保しなければならないため、道路維持業者としての責任と使命は重大だ。

■カーリングとの出会い

 一方、同社長は日本カーリング協会会長というもう一つの顔を持つ。昭和53年にカーリングが稚内市でスタートした当時、稚内カーリング協会会長は富田組の故富田勉社長で、普及に努めていたが、平成10年に引退する際に同社長を指名した。これを受けて平成20年まで就任した。その間、ソチ五輪での日本選手団の活躍と、普及に功績を遺したことが認められ、日本協会の会長の退任に合わせて就任することになった。
冬季アジア札幌大会のポスター

 同社長は、当時は会長に名乗りを上げていた他の候補者がいたので、自分が就任することになることは予想外だったという。しかし、新たに選出された20人の理事からの指名により、就任することになった。
 ソチ五輪では女子選手団しか参加できなかったが、日本協会の会長を引き受けたからには、次期平昌五輪では男子女子ともに参加させて入賞させるのが夢だと語る。それには女子選手団は長野五輪から5回連続で出場しているが、男子は長野五輪だけに止まっている背景がある。
 また、来年3月には世界女子選手権が札幌で開催される予定で、そのホスト国となっていることから、何としてもメダル獲得を目指したいとの意気込みだ。
 そのためにも、選手団をバックアップする協会としては、海外遠征費など選手の負担を軽減すべく助成金などを確保し、選手が競技に専念して好成績を残せる環境づくりに全力を挙げていくとしている。
 また、プレイ環境の整備も課題で、国内には公式競技を行える通年型施設が少なく、北見、札幌市、軽井沢の3ヵ所しかない。リンク整備には数億円の整備費を要するが、全国的に施設の普及を目指したいという。
 一方、カーリング協会の体制についても、47都道府県のうち23都道府県にしか地方協会がないため、全国規模に拡大したいとの抱負だ。

■一般者、高齢者、障害者への普及の兆し

稚内市スポーツセンター

 近年は障害者のための車椅子カーリングも興隆し始めており、パラリンピックにはまだ認定されていないものの、世界選手大会が開催されるようになった。一般愛好者の年齢層も幅広くなり、高齢化社会にあっても、施設さえあれば誰もができるスポーツであることが魅力であるという。
 普及の背景には、屋内競技であり、施設にはシューズもブラシもストーンも常備してあるので特別な準備の必要はなく、極端な経費負担を要しない手軽さが敷居を低くしていると言えるだろう。
 稚内市では中学・高校の冬期間の体育授業としてカーリングが採用されているが、その会場施設は築50年を経過しており、立地が岬地区であるため、吹雪くと通行止めになるなど利用条件は厳しい。
 稚内市はスポーツ都市宣言をしており、同市長も稚内市からの五輪出場選手の育成・輩出を希望していることから、競技施設整備を市に要望したいとしている。

■今後の世界大会に向けての目標

 ソチ五輪での女子選手団の活躍のほか、男子も世界選手権大会で第5位と健闘し、ともにメダル獲得が視野に入ってきている。そこで、この11月に軽井沢で開催されるパシフィックアジアカーリング選手権大会や、来年3月の女子世界カーリング選手権大会でのメダル獲得に期待を大きくしている。
 国内では軽井沢アイスパーク、札幌道銀スタジアム、北見アドヴックスカーリングホールなど3つの専用施設が開設されているので、これらを拠点に目覚ましい成果を残すべく、選手団のレベルアップを図る一方、協会としても最大限の支援体制でバックアップしていきたいと、抱負を語った。

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