建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2014年10月号〉

地下ダムは未来に託す伊江の宝

―― 伊江地下ダムの建設で農業の生産性の向上と近代化を実現

 内閣府 沖縄総合事務局 伊江農業水利事業所 所長
 仲間 雄一

 私たち伊江農業水利事業所は、平成16年度から伊江村の畑作地帯で、地下ダム等の建設を進めています。伊江村は沖縄本島北部の本部半島の北西に位置する、人口約5,000人の離島村です。平坦な地形を利用した畑作地帯で、花き、葉たばこ、畜産を中心に野菜、さとうきびなどの営農が展開されています。村における農業就業人口比率は35%を占め、県平均の8倍、北部地域平均と比較しても高い割合となっており、農業は島民の生活と経済にとって重要な主要産業となっています。
 しかしながら、畑作に必要な用水は、降雨と既設のため池に依存せざるを得ず、十分な用水手当がされていないため、農業生産は不安定であり、これが村の農業振興の足枷となってきました。
 このため、村の668haの畑作地帯を対象に農業用水を供給する地下ダムを新設し、揚水機、用水路を整備するとともに、関連事業による末端用水路、給水栓などの整備を実施することで、安定的なかんがい用水を確保し、農業生産性の向上と近代化を図り、農業経営の安定に資することを目指しています。

伊江地下ダムの施工状況

 計画としては、受益面積は668haのうち、用水改良は423haで既設ため池の受益農地に用水を供給します。また、畑地かんがいは245haで新規の畑地かんがい用水も確保されます。
 施設計画としては、水源である伊江地下ダムの建設、用水路、ファームポンド(貯水タンク)、揚水機場及び送水路を整備する計画で、事業費は250億円を見込んでいます。
 なお、末端部の用水路は、関連する県営や団体営事業により、ほ場の給水栓までの整備を行う計画です。ほ場内のかん水施設については農家負担となりますが、作物に合わせてスプリンクラーやかん水チューブなどを自由に選択できます。
 そして、葉たばこ、さとうきび、露地野菜などを組み合わせた土地利用型の営農と、花き、施設野菜、果樹の専作による集約型の営農を計画しています。
 平成25年度までの国営事業の進捗状況は、事業費ベースで79%となっており、関連事業については、受益地内の75%の農地で事業に着手しています。平成27年度には、地下ダムより取水したかんがい用水の暫定的な利用を予定しており、更なる農業振興が期待されています。

城山よりダム軸を望む 2号ファームポンド


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