建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2014年9月号〉

那覇空港で2700m級滑走路を沖合に増設

―― 右肩上がりの需要に対応

沖縄総合事務局 那覇港湾・空港整備事務所
那覇空港新滑走路整備推進室長
 小早川 弘




1.はじめに

表-1 利用状況表

 那覇空港は、沖縄の玄関口として国内外各地を結ぶ拠点空港であるとともに、沖縄県内離島と沖縄本島を結ぶ空港として重要な役割を果たしている。
 沖縄県のリーディング産業である観光・リゾート産業のみならず、生活物資の輸送や県産農水産物の出荷など、那覇空港の利用は年々高まっており、県民の生活や経済活動を支える重要な社会資本となっている。
 また、那覇空港は、観光客を中心に年々旅客が増加しており、それに伴い夏場の観光シーズンや年末年始などを中心に希望する便の予約がとれず沖縄への来訪を取りやめる人もおり、県経済に影響が生じている。
 そう言った状況を踏まえ、平成15年度から那覇空港の新滑走路整備の必要性について、PI手法を取り入れながら、検討してきた。

2.那覇空港の利用現状

図-1 就航路線図
 那覇空港の利用客数は、平成23年度時点で約1,400万人(平成15年約1,260万人)に達し、増加傾向で推移している。観光客やビジネス客などのほとんどは空路により沖縄を訪問している。
 また、県民の多くもビジネスや帰省で本島・離島にかかわらず、空路を利用するとともに、「医療機関に出かける」「親元を離れ学校に通う子供に会う」など日常生活の交通として利用する県民も少なくありません。
 さらに、平成24年より格安航空会社(LCC)3社の就航などもあり那覇空港利用客の大幅増加が期待される。

3.新滑走路の検討経緯

 那覇空港が抱える課題について、交通政策審議会航空分科会答申(平成14年12月)において、「那覇空港は将来的に需給が逼迫することが、予想されることから既存ストックの活用方策や滑走路増設を含む抜本的な空港能力向上方策について、幅広い合意形成を図りつつ、国と地域が連携し『総合的な調査』を進める必要がある」とされた。
 そこで、国(内閣府沖縄総合事務局及び国土交通省大阪航空局)と沖縄県では、平成15年度から19年度にかけて、住民参画を目的としてパブリック・インボルブメント(PI)の手法を取り入れながら、「那覇空港の総合的な調査」を実施し、平成20〜21年度構想段階、施設計画段階を経て滑走路間隔1310m、滑走路長2700mを県民等皆さんのご意見を踏まえ決定した。
図-2 滑走路増設計画に関するスケジュール

4.那覇空港新滑走路の整備について

 那覇空港新滑走路の整備は、平成25年度新規事業採択を受け、総事業費約1,993億円、工事工期約6年と言う厳しい制約のなか、平成26年1月公有水面埋立承認、漁業補償締結をうけ、平成26年1月着工し、平成31年末完成を目ざし鋭意事業を進めている。
(空港の規模と主な施設)
・埋立て面積:約160ha
・滑走路延長×幅:2,700m×60m
・誘導路延長×幅:6,245m×30m〜34m
・無線施設及び進入灯など
(工事計画)
・空港の南、北の深場はケーソン式護岸
・浅海域は傾斜式護岸
・埋立土量は約1,000万m3を想定
(主な環境保全措置)
・連絡誘導路により分断させる海域の海水交換を促し、海域生物の分散・回帰ルートを確保するため、連絡誘導路に通水部(幅約10m)を設ける。
・新たに出現する護岸がサンゴ類や底生動物の着生基盤となるよう、護岸の一部に凹凸加工した消波ブロックや自然石を用いた傾斜式護岸を整備する。
・代償措置として、生息場所が消失すると予測されたサンゴ類の一部については、事業者の実行可能な範囲内で移植・移築を行う。
写真-1 新滑走路計画位置図
図-3 埋立計画図

5.現在の工事状況

 工事は、浚渫工事、ケーソン製作、ブロック製作、石材搬入用仮設桟橋2箇所、第一線護岸となる外海側護岸工事などを鋭意すすめており、Y工区は27年度、W工区は28年度に埋立てを開始する予定である。
写真-2 浚渫状況写真 写真-3 捨石状況写真

6.おわりに

 那覇空港滑走路増設事業は、沖縄県の自立型経済発展に大きく寄与し、沖縄県民期待の事業であります。推進室職員や請負企業など関係者一丸となって平成31年末完成に向け取り組んで行きます。


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