建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2014年9月号〉

 

釧路建設業協会創立 100周年を迎え、建設業の真の魅力を次世代へ

―― 建設業は地域の経済と雇用を支える重要な基幹産業

 一般社団法人 釧路建設業協会 会長
 白崎建設株式会社 代表取締役社長
 白崎 義章



─― 平成26年4月の総会で、釧路建設業協会会長に就任しましたが、どんな抱負を以て臨みますか
白崎 建設業界の現状は、いつもそうそうだと思いますが、様々な局面に立たされています。現在は担い手の育成やそれに関わる様々な課題に直面しています。それらを解決し、建設業界の健全な発展や地位の向上を図っていくのが、建設業協会の使命だと考えています。
─― 建設技術者の減少は深刻な状況なのでは
白崎 何しろ仕事が減り続けたこの10数年は辛抱の連続だったので、各社とも新規採用できない反面、定年組が退職していき、人員が減ることで結果的に発注量に見合った経営規模が維持できたのです。
 最近になって、政権交代後の大型補正や景気対策で下支えしてもらい、国土強靱化などの法案や構想が浮上し、政策の180度転換に対応していく中で、歪みが生じているわけです。
 そのため、受注を目指すには社内体制を十分に検討してから入札しなければなりません。従来であれば、入札の判断基準は契約金額でしたが、現在は契約しても、下請け施工者などの協力業者が確保できるのかどうかを確認しなければなりません。
釧路駅前(北大通と幣舞橋)
─― 激動の時期の会長就任となりましたね
白崎 前任の上田光夫会長は、交代のタイミングとしては、工事量増加にどう対応するかを検討する情勢下での交代の方が良いでしょう、とのことでした。
─― 人材確保のためには、建設技術者の福利厚生などを含めて、待遇改善が大きな課題ですね
白崎 就労環境の改善などテーマは多様ですが、特に技能者の賃金は、元はもっと高かったはずです。だから厳しい労働環境でもプライドをもって臨めたのだと思います。それが、デフレと厳しい価格競争も反映して、賃金も最低限にまで下がりきってしまったことが、人離れの最大の要因だと思います。そのため、政府も含めてその土台の修復から取り組んでいるところですね。
釧路港 釧路港第2ふ頭
─― 釧路管内には工業系高校や専門学校もありますが、建設業界への志望者はやはり不十分ですか
白崎 少子化の影響もあり、また進学率も上昇しているので、工業系の高校卒で就職しようとする卒業生も減少しているのです。例えば釧路工業高等学校は、土木科が2クラス体制だったのですが、少子化の影響で1クラスに減ってしまいました。
 ただでさえ土木は顧みられなくなっていた趨勢だったので、私たちは建設業の真の魅力を伝えるための土木見学会を実施したり、進路指導の教諭陣と建設業協会とで意見交換しながら建設業界の問題点を解決するよう取り組んできました。やはり、進路指導や就業指導に当たる教師の方々と良好な関係を築き、建設業界で働く若手技術者の醍醐味を知ってもらうことが大切です。
─― 会長就任に当たってはどんな覚悟で臨みますか
白崎 今後、建設業界に陽光が射すのかどうかは、まだ楽観視できない状況なので、釧路・根室管内の建設業界代表としての責任を持って臨みたいと思います。釧路建設業協会会員は、一世紀にわたって釧路・根室地域の住宅・社会資本整備の担い手として重要な役割を果たしてきました。管内は2市10町1村の自治体があり、安全と安心に貢献するとともに、地域経済と雇用を支える重要な基幹産業として取り組んでいきます。
─― 先代の白崎功一社長(三代目)も昭和63年から平成5年まで釧路建設業協会長(12代目)を勤めていましたが、何らかの影響を受けましたか
白崎 建設業の業界柄から、ほとんど在宅していることがないので、父親としての接点もあまりないものです。実際に私自身もその状態ですが(笑)
 ただ、平成5年1月15日に釧路沖地震があったので、その復旧工事に当たってリーダーシップを発揮していた姿は目に焼き付いています。
─― 被害はかなり大規模でしたね
白崎 直轄で管理されているインフラが、ことごとく破壊されました。国道も港湾も河川も、すべてに被害が生じましたが、津波が発生しなかったのは幸いでした。お陰で即座に復旧活動に入れたのです。しかし主要な道路は盛土箇所で大きく崩落したため、地域の物流はストップしてしまいました。その他にも大きな地震は多数発生しております。平成23 年3 月11日の東日本大震災による被害も受けています。
 それだけに、地震、津波、暴風雪等の災害多発地帯に生きる釧路建設業協会は、地域の安全・安心を下支えする企業グループとして、平時の地域防災力の向上を図り、災害緊急時における行政機関との災害対応協定の確実な履行を担保するため、協会事務局及び会員企業のBCP(事業継続計画)策定に取り組み、災害に強い企業群を目指しています。
─― 高速道路は釧路市までは、まだ整備されていませんが、この点については建設業協会としても強力に要望しなければならないのでは。一方、釧根トライアングル構想により、釧路、根室、中標津の三点のネットワーク化と強靱化が提唱されています。
白崎 北海道横断自動車道・浦幌IC〜白糠IC(26km)は、平成26年度末に開通します。白糠IC〜阿寒IC(14km)は27年度の供用予定、阿寒IC〜釧路(17km)ICは事業中です。釧路外環状道路(17km)は平成28年度供用予定です。
 一方、釧路・根室地域においては、釧路・根室自動車道として、特に津波で被災する厚岸地区を中心に早期に着工できるように準備しなければならないでしょう。根室地方総合開発促進期成会(長谷川俊輔根室市長)が釧根トライアングル整備構想を中心とした、道路網の整備事業推進要望を毎年続けています。
─― 一方、港湾については釧路港国際バルク戦略港湾に基づく事業が、平成26年度から始まりますが、スムーズに進んでいますか
白崎 パナマ運河の拡張計画が間もなく完成するとのことで、ポストパナマックスの大型船舶に対応した岸壁を整備することが求められています。釧路港はその規模の大型船に対応できる規模へと整備を進めています。平成23年5月に釧路港国際バルク戦略港湾として選定されました。穀物を対象とするバルク貨物を、西港第2ふ頭(水深12m)を中心とした岸壁と航路・泊地を当面水深14m 対応に整備する予定となっており、今年度から着工して完成予定は平成29 年度の予定となっています。国際基準としては、-16mであることが必要ですが、いま現在は-12mですから、次は-14mに拡大し、最終的には-16mを目指すということです。
─― 釧路西港などは、沖合で待機する大型船が多いと聞きますが
白崎 そうした状態の一方で、整備は着実に進めてきたので、現在はかなり改善されています。西港区では新西防波堤も整備していますが、静穏度の問題もあるので、今後の計画は検討中のようです。
 東港区については超大型客船には対応していないのです。平成23年に耐震旅客船ターミナルが完成し、この規模で十分と考えていたようですが、こんなに多くの大型客船が寄港するようになるとは思っていませんでした。今日(7/16)も、商船三井客船(東京)「にっぽん丸」が接岸しています。6月4日には過去最大の外航クルーズ超大型客船「ダイヤモンド・プリンセス=定員2,670人」が寄港しましたが、水深の浅い東港区では接岸が無理なので、西港区の第4ふ頭に接岸しました。今年は7回釧路港に来るそうです。
 乗船客は朝に釧路港に到着し、バスで釧路湿原の散策など観光地巡りをして夕方に乗船し、また出航していくという日帰りパターンが多いですね。
釧路フィッシャーマンズワーフMOOと「にっぽん丸」 旅客船ターミナル(耐震強化岸壁)
─― 一方、会社としては創業130年にわたり、地域の老舗として雇用を守り続けてきましたね
白崎 明治18年の創業者は白崎次郎松で大工の棟梁でした。また、会社の基礎を築いたのは二代目の白崎正治(祖父)で、ここまで頑張って続けてきました。
─― 白崎正治氏は釧路建設工事業組合の初代組合長(昭和21年)として、偉大な功績をのこしましたね
白崎 私が中学一年の時に他界したので、社会的な活動に従事する姿は記憶にはありませんが、昭和21年の釧路建設工事業組合の結成、そして釧路土建協会・釧路建設業協会へと組織強化を図り、36年までその会長として戦後復興に取り組んでいました。
─― 地域作りにおいては、業界団体はどこでも大きな役割を果たしていますが、釧路ではどんな活動に取り組み、地域の将来像をどう展望していますか
白崎 地域作りは、地域と行政が一緒に取り組まなければなりませんが、地域住民には漠然としているので、私たちも協力しながら活動していきたいと思います。
 釧路は全国ベースで見ても、基盤整備は後れており、現職の蝦名大也釧路市長は「いまだに管内には1cmの高速道路もない」と、いつも言っていますが、確かに道内の他管内を見ても何らかの自動車専用道はあるのに、この管内には全くありません。
 釧路という点を起点に線が結ばれ、それが面となって産業を支え、北海道という大きな面の中で、その線が延びていけば良いと思います。それを推進していくのが、我々地元住民の役割です。
 そして、私たち建設業は地域を縁の下で支えていることに誇りを持って臨めるよう、地域の人々からその役回りの意義を認めてもらえるようなアクションを起こしていくことが重要なのだと思います。いまは高校生が地元建設会社への入社を志望しても、親から建設会社の就職は止めた方がいいと言われるようなイメージを持たれていると思います。
─― 建設業界は、長い冬の時代が続きましたね
白崎 協会員は十数社減少しましたが、そういう苦境を乗り越え、技術力も向上してきているのです。
国際コンテナターミナル(ガントリークレーン)
─― 建設協会も100周年を迎えましたね
釧路建設会館
白崎 10月17日に100年の記念式典を予定しています。平成26年1月1日から12月31日までを100周年の期間としました。これを記念して2014ふゆトピア・フェアin釧路に後援し、ブースを出展すると共に、競技会として除雪車チャンピオンシップを実施しました。重機オペレーターの技術を採点し、競い合うもので、一般の人々にはこうした技術をもって作業していることを知ってもらうためのアピールになります。オペレーターとしても、見せ場が作れると同時に、優勝者はステータスとして誇りも持てるでしょう。
 釧路建設業協会戦略ビジョンでは、釧根イニシアティブの構築をあげ、次世紀へ向けた3つの宣言を柱とした「戦力ビジョン」を策定し、地域を支える魅力ある建設産業を目指します。
 さらに詳細を見ると、3つの宣言として、「地域活力の創造」、「減災・防災の強化」、「インフラ更新時代の対応」が掲げられ、これらに協会として取り組んでいく方針です。現在は100周年の記念式典に向けて準備中です。
 一方、釧路建設業協会の体制としては、委員会制度がありますが、新たに地域振興委員会と戦略的広報委員会が発足しました。地域振興委員会は、高速道路の根室への延伸促進と、これから開通する白糠或いは阿寒インターの利用を促進する活動に取り組みます。戦略的広報委員会は、建設業の必要性を理解してもらえるように、情報を広める活動に取り組んでいきます。

本社社屋
 一般社団法人 釧路建設業協会 会長
 白崎建設株式会社 代表取締役社長
白崎 義章
 しらさき・よしあき
 昭和55年3月  武蔵工業大学土木工学科 卒業
 昭和55年4月  株式会社 田中組に勤務
 昭和60年4月  白崎建設株式会社に入社、技術室長付に就任
 昭和62年5月  取締役社長室長に就任
 平成 6年4月  取締役副社長に就任
 平成11年6月  代表取締役社長に就任
 平成26年4月  一般社団法人 釧路建設業協会 会長に就任

 



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