建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2014年8月号〉

鋳物師河道掘削 自然との共生

―― 北陸最大都市の新潟市を洪水から守る

上八枚地区工事関係者連絡会 会長 株式会社福田組
(信濃川下流鋳物師興野河道掘削その5工事 現場代理人) 田村 誠




はじめに

 平成23年8月新潟・福島豪雨の洪水と同じ年の7月、この上八枚地区の上流に位置する加茂市三条市で河川の水位が計画高水位を越えた区間もあり、水害発生の恐れのある危険な状態となりました。本事業は、信濃川の安定した流れを確保し、水害から地域を守りつつ、豊かな自然と水際の湿地の創出するための取り組みです。

工事概要

 本工事場所は、信濃川左岸の新潟市南区鋳物師興野地先となります。全体工事延長L=1,032m、掘削土量V=280,300m3、土砂運搬V=275,370m3で5工区に分かれており、4業者にて施工を行います。工事内容については下記の通りです。
 掘削の手順としては、河川水の汚濁防止として河川に面する外周(図面3)を堤防状に残し、掘削内部のを平水位+0.5m程度まで掘削し、その後所定の高さまで水中掘削を完了した後に外周を撤去する。
 外周の堤防は、河床高が低いほうから掘削を行い、河川水の浸入に伴う法面部の浸食を防止する。
 掘削された土砂(粘性土・砂質土)は、県営圃場整備事業、国交省直轄工事の国道49号線水原バイパス工事、埋立処分施設などの盛土材・耕土・覆土等に再利用されています。



工事ヵ所全景(※鋳物師興野河道掘削その1・その2工事については、工事完了しています。)
上八枚地区の平面計画図

湿地環境の創出

 この事業の目的である「湿地環境の創出」として、掘削形状(河床の深さ)を変えることで川の流れを誘導し、生物の生息場(ビオトープ)を増大させる計画となっています。湿地性草原や浅い緩流域(ワンド・クリーク)、多様な水際部の創出により鳥類等の隠れ場所や餌場を増大させることで、生物の川の東と西を結ぶ中継地として、エコロジカルネットワークの核を形成することが期待されています。他にも、水田との連続性を確保し、トンボなどの水辺の動物の生息環境の質的向上や、魚類等水生動物の再生産や避難の場所を形成するなど多様な生物の生息を考えた計画であり、施工する者としても常に意識し、発注者と共に取組んでいきたい思います。

施工断面図
河道掘削による効果のイメージ図

工事情報館の開設

 上八枚地区工事関係者連絡会では、河道掘削工事について地域の皆様に知っていただくため新潟市南区蜘手興野地先の信濃川左岸堤防天端に6月1日に工事情報館を開設しました。
 開設日初日は、信濃川下流河川事務所主催の「親子で学ぶ防災見学会」の見学場所ともなり、大勢の方が見学されました。
 施設には、事業概要のパネル展示、掘削土の展示等の他、現場の掘削作業が一望できる展望台もあります。6月以降は、工事情報館1階展示ブース内は、日曜・祝日を除く9:00〜17:00のみ開館となっております。開館中は、どなたでもご覧いただけますので是非お立ち寄りください。

工事情報 館全景
工事情報館1階 展示ブース内
親子で学ぶ 防災見学会

おわりに

 鋳物師興野河道掘削工事は、その1、その2工事の施工が完了しており、その3〜その5工事については、6月初旬より本格的に掘削、土砂運搬作業を行っております。土砂運搬に関しては、3工区全体で100台/日のダンプトラックにて作業を行っており、信濃川左岸堤防道路の県道141号線は、朝晩の通勤道路となっていることから、通勤と堤防内占用地内の耕作者の方々と地域の皆様の支障とならぬよう運行管理を行い、27年3月まで無事故・無災害での工事完了を迎えられるよう努力して参ります。


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