建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2014年8月号〉

地域を守る安全・安心の川づくり

―― 河口部に密集する住宅地を水害から守る

 国土交通省 北陸地方整備局 阿賀野川河川事務所 所長
丸山 準

図-1 阿賀野川流域図

1.流域の概要

 阿賀野川は、福島県では阿賀川と呼称されており、その源流を荒海山(1,580m)に発し、山間部を北流し、会津盆地を貫流したのち、猪苗代湖から流れ出る日橋川等の支川をあわせ、喜多方市山科において再び山間狭窄部に入り、尾瀬ヶ原に水源をもつ只見川など支川を合わせて西流し新潟県に入り阿賀野川と名前を変えます。その後、五泉市馬下で越後平野に出て新潟市松浜において日本海にそそぐ流域面積7,710ku、幹線流路延長210kmの日本有数の大河です。
 また、阿賀野川はその流域面積に比して豊かな水量(流出量129億m3:日本2位)で、その豊かな水量は、かんがい、水力発電等に利用されています。

図-2 H23.7出水 小松・馬下地区 図-3 水防活動状況(漏水対策)
図-4 滝坂地すべりブロック図

2.管理区間

図-5 砂防管内図
 阿賀野川河川事務所は、阿賀野川の河川事業、地すべり・砂防事業を担当しており、河川事業は阿賀野川本川については馬下にある阿賀野川頭首工より河口までの34.6kmと支川早出川の4.6kmの合計39.2kmを改修・管理を行っています。
 地すべり事業に関しては、平成8年度より福島県耶麻郡西会津町にある滝坂地すべり対策を実施しています。砂防事業に関しては飯豊山系砂防事業の一環として新潟県阿賀町の阿賀野川右支川実川、馬取川流域の土砂災害対策を実施しています。

3.事業の経緯

 阿賀野川河川事務所の始まりは、大正2年の大洪水を契機として阿賀野川下流部の第一期改修工事(大正4年〜昭和9年)が着手され、内務省直轄の事務所が設置されたことです。改修が完了し、阿賀野川下流部は昭和9年から昭和21年の間、新潟県の管理となりました。その後昭和21年に発生した決壊を契機に第二期改修工事に着手するため、再度、新津市(現新潟市秋葉区)に「阿賀野川工場」として設置されました。それ以降、組織の変遷を経て現在に至っています。

4.平成23年7月洪水

 営々と阿賀野川の水害対策を進めてきたおかげで、観測史上最大であり、一部で計画高水位を超えた平成23年7月洪水に対して、無堤部の浸水(小松、馬下地区)、堤防基盤漏水、湛水といった被害は発生しましたが、堤防の決壊といった最悪の事態は免れることができました。

5.平成26年の主な事業

図-6 主な事業箇所(河川事業)

 現在、阿賀野川河川事務所では、地すべり・砂防事業に関しては先ほどのべましたように、滝坂地すべりの対策工(大石西山排水トンネル工の着手、集水井工の施工)、実川・馬取川の土砂災害対策工(馬取沢砂防堰堤、麦生沢砂防堰堤)を進めています。
 河川事業に関しては、平成23年7月の新潟・福島豪雨と同規模の洪水を安全に流せるように対策を進めています。具体的には、先の洪水の際に浸水被害が発生した無堤部の小松地区、馬下地区の築堤。また、基盤漏水が発生した、蔵岡、沢海、六郷、小搦地区の浸透対策工事を行っています。
 また、河口部では堤防の耐震対策工事を実施しています。河口部の堤防の基礎地盤は緩い砂地盤が厚く堆積しており大きな地震が発生した時に液状化が発生しやすくなっています。液状化が発生すると堤防の沈下等が起こり、津波が押し寄せた場合の浸水が発生する恐れがあります、そのような事がおこらないよう対策工事を実施しています。
 さらに、馬下より下流の阿賀野川ではかつては砂礫河原であり瀬と淵が交互に発達していた河床に、ワンド等の湿地やヨシ原等の水際湿地が雄大に広がっていました。現在は様々な要因でこの自然環境が失われていることから、自然の営力を活かしつつ、治水対策や維持管理対策と一体となった阿賀野川自然再生事業に取り組んでいます。具体的には平成26年は焼山、高山地区のワンド再生を進めています。

図-7 河口部堤防耐震工事
図-8 地盤改良工法

6.今後の姿

図-9 焼山地区自然再生イメージ図
 河川事業に関しては平成23年出水に対応できる堤防は平成27年には完成しますが、河川基本方針で目標とする150年に1回規模の洪水に対してはまだまだ対応出来る状況ではありません。河川を整備するにあたって、今後は、目標とする規模に対応できる河道を、流下能力と言った量の評価だけではなく、浸透対策といった質的な評価も考慮した河道の整備を計画的に進めていきます。なお、整備にあたっては阿賀野川自然再生計画と調和のとれた施工に心がけていきます。
 また、防災にあたってはハード面の対策を進めることは当然ながら、すぐにハード対応出来ない部分に関しては、県や関係市町と協力し合ってソフト面での対策の充実もはかっていきます。
 地すべり・砂防事業に関しては、滝坂地すべり対策の進捗、実川・馬取川の土砂災害対策の進捗をハード・ソフトの両面から図っていきます。


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