〈建設グラフ2014年3月号〉

国際拠点港湾として重い役割を果たす

―― 背後の街づくりと一体となった美しい港づくり

国土交通省中部地方整備局
四日市港湾事務所所長
長瀬和則

私たち四日市港湾事務所は、四日市港の港湾整備と津松阪港の海岸保全施設の整備を行っています。
四日市港は、三重県を中心に滋賀県東部地域、岐阜県及び愛知県西部地域を主な背後圏としています。これらの地域における生産活動や消費活動の増大に伴い、近年外貿コンテナ貨物量が増大しています。
また、平成16年7月には名古屋港と一体となり「伊勢湾スーパー中枢港湾」の指定を受け、平成22年からは京浜、阪神港に次ぐ国の重要な港湾として、国際競争力のある世界に開かれた港として育成していくこととなりました。
これは、近年のアジア主要港湾の躍進により、我が国のコンテナ港湾の地位が相対的に低下していることから、国、港湾管理者、民間事業者が一体となり、アジア諸国の主要港をしのぐ港湾コスト・サービス水準の実現を図る取り組みで、低廉で質の高いサービスを提供し、我が国産業の国際競争力を確保するため、一定の役割を担うことになりました。そこで平成23年には港湾法改正により、これまでの特定重要港湾から国際拠点港湾に位置づけられています。
四日市港では拡大する外資コンテナ貨物を受けて、平成18年に国際コンテナターミナルが霞ヶ浦北ふ頭に供用開始し、コンテナ貨物の取り扱い能力を増強するとともに、霞ヶ浦地区と第二名神高速道路みえ川越ICとを結ぶ臨港道路「霞4号幹線」の整備を進めています。
霞4号幹線は、四日市港霞ヶ浦南ふ頭～町道川越中央線(臨海橋)を結ぶ約4.1kmの臨港道路で、将来計画としては片側2車の4車線ですが、当面は片側1車の2車線で整備を進めています。

伊勢湾スーパー中枢港湾四日市港

霞ヶ浦ふ頭周辺では、アクセス道路不足や国道23号の慢性的な渋滞、さらには増大する港湾物流貨物による周辺道路への負荷などが予想されており、本道路の整備により「港湾と高規格幹線道路とを結び速やかな国内輸送を図ること」「国道23号を含む沿道への環境影響増大の回避」「災害対応力の強化(リダンダンシーの確保)」が期待されます。
一方、津松阪港海岸は、昭和28年の台風13号と、未曾有の災害をもたらした昭和34年の伊勢湾台風によって壊滅的な打撃を受け、昭和34年から38年にかけて災害復旧工事として海岸護岸が整備されました。
その後は極度の老朽化に加え、天端の沈下や地震時の液状化対策が必要となっており、抜本的かつ緊急的整備が必要のため、直轄事業として整備することになりました。
平成4年度から老朽化が特に著しい松阪地区・三雲地区・香良洲地区・津地区(贄崎工区)の約11kmについて、改良工事を実施し、平成23年度からは津市(栗真町屋、阿漕浦、御殿場)の約5.5kmについて、海岸保全施設整備事業を実施しています。
また、各地区ごとに地元の意向も踏まえて、背後地などの特徴を活かした基本方針(ゾーニング)を策定し、防護のみでなく環境と利便にも配慮した海岸整備を進めているのが特徴です。
香良洲地区、三雲地区は、海辺の多目的親水ゾーンとし、海岸線の面的防護、利用・環境・景観面への配慮、安全性の高い海岸保全施設を整備したほか、前面水域の漁業利用に影響を与えない施設を配置し、隣接する南北のゾーンの親水利用を補完しました。景観は、隣接する南北のゾーンの緑の連続性を確保しました。
香良洲地区、三雲地区は海辺の親水プロムナードゾーンとし、海岸線の面的防護、利用環境・景観面への配慮、安全性の高い海岸保全施設整備のほか、前面水域の漁業利用に影響を与えない施設配置、潮干狩り等の現状利用の促進、付帯機能の充実を図っています。景観は、背後の公園の緑の活用、海岸への緑の連続性を確保しました。
松阪地区は海辺の回廊ゾーンとし、利用・景観面に配慮した安全性の高い海岸保全施設を整備するほか、潮干狩りなどの現状利用の促進と付帯機能を充実させています。景観は前面に広がる干潟を活かした景観的な演出を積極的に行い、隣接する船溜まりと一体となった緑の連続性を確保しています。

ふるさと海岸整備事業（津松阪地区）

津地区は海辺の交流拠点ゾーンとし、同じく利用・環境・景観面に配慮した安全性の高い海岸保全施設を整備し、港湾機能(海上アクセス拠点)と連携した新たなにぎわい空間を創出します。景観は、中部国際空港からの海の玄関としてふさわしい景観の形成を目指しています。
このように、私たちは防護機能の低下した護岸を、海岸背後地域の特性や海岸性状等に十分配慮し、背後の街づくりと一体となった良質で多角的な機能を持つ海岸保全施設の整備に努めており、地域の方々に親しまれ、海辺とふれあえる美しい景観を持った、安全で潤いのある海岸づくりを目指しています。

四日市霞ヶ浦地区

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