建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2014年3月号〉

京阪神都市圏の外郭環状道路となす高規格幹線道路の整備

―― 京都・奈良・和歌山の拠点都市を結ぶ京奈和自動車道の整備

 国土交通省 近畿地方整備局
 奈良国道事務所 所長
 清水 将之

図-1 京奈和自動車道 全体整備計画

1.はじめに

 奈良国道事務所は、奈良県内における直轄国道の整備や管理を担当する事務所として、昭和28年に設置されました。現在は、京都・奈良・和歌山の拠点都市を結ぶ高規格幹線道路として、京奈和自動車道の奈良県内の整備をはじめに、奈良県内での4つの直轄事業にくわえ、直轄権限代行として国道168号の3つの改築事業を実施しています。
 また、国道24号・25号・163号・165号の4路線(管理延長約150km)の維持修繕事業、交通安全対策事業、沿道環境改善事業、無電柱化推進事業及び道路管理業務を実施しています。このうち、本稿では、主な事業のひとつである京奈和自動車道の整備についての概要を紹介します。

天理市中町地先から南を望む

2.奈良県における京奈和自動車道の整備

 奈良県は紀伊半島中央の内陸部に位置し、大阪府・京都府・和歌山県・三重県に囲まれた海のない内陸県で、北西部に奈良盆地、北東部に大和高原、それ以外は大台ケ原や近畿地方最高峰の八経ヶ岳(八剣山)といった紀伊山地が広がっています。こういった中、古くはいにしえの都「平城京」を擁し、世界遺産「古都奈良の文化財」をはじめとする重要な史跡・文化財が数多く点在する古都の歴史を彷彿させる地域です。また、南部地域においても吉野山から大峰峯山脈を縦走する世界遺産や吉野山の桜・南北朝時代の名所など多くの観光拠点もあります。

図-2 橿原高田IC〜御所IC間の整備効果
橿原高田IC

 このように、奈良の南北に長い地形に対して、京都・奈良・和歌山の移動時間の短縮の他、地域活性化や観光振興の支援などを目的とした京奈和自動車道を国土交通省近畿地方整備局で整備を進めているところです。
 この京奈和自動車道は、新名神高速道路と連携して近畿圏の環状道路を形成すべく、京都・奈良・和歌山を結ぶ延長約120kmの高規格幹線道路であり、現在までに約4割が整備済みです。
 このうち、奈良県域においては、延長47.5kmを大和北道路(12.4km)、大和御所道路(27.2km)及び五條道路(7.9km)として事業を進めており、現在までに19.4km(約4割)が整備済みです。

3.京奈和自動車道の整備効果

 京奈和自動車道の整備のうち、直近においては、大和御所道路の橿原高田IC〜御所IC間3.7kmが昨年3月に暫定2車線で開通しました。本区間の開通半年後の調査においては、国道24号の東室交差点の渋滞解消や新堂ランプの最大渋滞長の減少など、大和御所道路周辺の交通混雑が緩和しています。また、新堂ランプ交差点から室交差点間の平均所要時間は、整備前の国道24号利用の時間に対し、大和御所道路を利用した場合は約7分の時間短縮が図れています。これに対し、整備後に周辺住民を対象にアンケート調査を行った結果、約9割以上の方から「満足」「やや満足」との意見が得られているところです。
 また、奈良県では企業立地促進法に基づいて県市町村等で構成された「奈良県地域産業活性化協議会」で策定された「奈良県企業立地基本計画」があり、この基本計画で定める指定集積区域内においては、企業立地や事業高度化を行う場合に、各種の支援制度を活用できることになっています。
こういった中、平成21年度より本制度への申請が進んでいるところで、平成25年7月時点においては、37件と年々承認件数が増加している。この37件のうち、31件は大和御所道路に近接した区間に企業立地が進展しており、特に昨年3月の橿原高田IC〜御所IC間の開通以降は、承認件数が大幅に増加しています。このように、大和御所道路の開通により、更なる利便性向上や地域活性化が期待されていることから、御所IC〜御所南IC間2.5kmのH26年度供用(予定)によって、一層の経済活動の活性化が考えられます。

図-3 大和御所道路周辺の企業立地 図-4 大和御所道路周辺の企業立地等承認件数

 さらに、京都・奈良・和歌山を結ぶ京奈和自動車道の沿線周辺においては、数々の世界遺産をはじめとする多数の観光地があります。京奈和自動車道の整備によって、これら多数の観光地までの所要時間が約170分の短縮でき、各府県における観光への支援が可能になります。
 以上のように、京奈和自動車道の残る区間の整備によって、交通渋滞の緩和や地域活性化や観光支援の他にも、交通事故減少、走行時間短縮や定時制確保などが期待されることから、引き続き、地元の皆様や関係地域の方々のご理解とご協力を得つつ、早期整備に努めているところです。

巨勢山トンネル 本間高架橋上部工

4.おわりに

 京阪神都市圏の外郭環状道路をなす高規格道路京奈和自動車の奈良県における整備について紹介してきましたが、奈良県は四方を陸で囲まれた地域であり、交通渋滞の緩和、交通事故減少や観光をはじめとした経済活動の活性化には、道路は必要不可欠なものであり、その対策としての京奈和自動車道の整備は喫緊の課題です。
 今後も必要な道路整備に向けて、関係機関や地元の方々のご理解ご協力を得ながら魅力あるまちづくりの一環となる社会資本整備に努めてまいる所存です。

図-5 世界遺産と京奈和自動車道



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