建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2014年2月号〉

関門航路整備事業について

 国土交通省 九州地方整備局
 関門航路事務所 先任建設管理官
 黒岩 雅博
 国土交通省 九州地方整備局
 関門航路事務所 海洋環境課長
 山中 道徳

写真-1 関門航路位置図

1.関門航路の概要

 関門海峡は、九州の北端(福岡県北九州市)と本州西端(山口県下関市)の間に位置し、日本海の響灘と瀬戸内海周防灘を結ぶS字型に湾曲した全長約50kmの海峡です。
 この海峡は、大陸・日本海地方と瀬戸内・東海地方を結ぶ海路の要衝で、古来から大陸と畿内との間で政治・文化交流使節を結ぶ遣唐使等、近世には北海道・東北・北陸と大阪の間で物産の交易を行う北前船等に利用されました。
 現在では、東アジアから日本を経由して北米に至る北米航路の外航コンテナ船や本州を結ぶ内航フェリー等、年間約5万隻の船舶(500GT以上)が通峡しています。
 一方、通行幅が最小500mと狭く、屈曲して見通しが悪く、さらには潮流が複雑で速く最大で10ノット(約18.5km/h)にも達することから、航行の難所としても知られています。
 明治時代以前には各所に暗礁が点在し、航行船舶の安全を脅かしてきました。
 明治以降、政府は航行船舶の安全を図るために暗礁の撤去を行い、近年増大する大型船舶を安全に航行させるために、航路内を浚渫して増深・拡幅を行ってきました。
 関門航路は、写真-1に示す6地区に分かれており、現在、六連島西側地区、早鞆瀬戸地区、南東水道地区の整備を行っています。

2.整備事業の概要

 関門航路事務所では、明治43年(1910)から関門海峡改良工事に着手し、平成元年(1989)に航路水深(-12m)が完了しました。
 その後も大型化する航行船舶の安全性を確保するために、航路内の増深、拡幅を行っています。
 現在、六連島西側地区、早鞆瀬戸地区の2地区において、(-14m)への整備に着手しており、南東水道地区は(-13m)整備の最終段階となっています。
 北九州市は工業地帯であり、六連島西側地区には周辺企業が立地しているため、砂津、若松、戸畑航路等を航行する船舶とが出会うこと、また、関門第二航路からの船舶もあり、船舶が輻輳する地区です。また、冬期風浪が厳しい玄界灘に面しており、11月以降の作業は困難な状況下にあります。
 本地区では、平成17年度から浚渫を開始し、平成26年度内には完了する予定です。
 写真-2は、グラブ式浚渫船による浚渫状況。写真-3は、土捨て場所である下関沖合人工島での空気圧送船による揚土状況です。
写真-2 六連島西側地区浚渫状況
写真-3 空気圧送船による揚土状況
 早鞆瀬戸地区は、関門航路内でも最も狭隘で強潮流と自然条件が厳しい地区です。  本地区の整備は、昭和52年度から浚渫を開始しています。写真-4は、前田沖の浅瀬にある岩盤の浚渫状況。写真-5は、浚渫土砂を対岸の新門司地区埋立地へ揚土している状況です。
写真-4 早鞆瀬戸地区(前田沖)浚渫状況
写真-5 揚土状況
 南東水道地区では、直営のドラグサクション浚渫兼油回収船「海翔丸」(写真-6参照)で、24時間連続で浚渫作業を実施しています。
写真-6 海翔丸
 直営船「海翔丸」は、船の船尾に取付られたドラグラダーを海底に降ろして、先端部のドラグヘッドと呼ばれる掃除機のような吸い込み口から海底土砂を吸い込み、泥鎗に積載します。その後、北九州空港に隣接する土砂処分場まで航行し、全国でも例を見ない「自動係船・自動排送システム」により揚土・埋立を行っています。(写真-7参照)
写真-7 自動係船・自動排送システム

3.整備事業の効果

 関門航路の整備(拡幅・増深)を行うことにより、 大型船舶の輸送の効率化が図られ、また、航行船舶の安全性が向上するなど多くの効果が発現できます。
 まず、海上輸送コスト削減として、迂回している大型船舶の関門航路通航が可能となり、運航ルートが短縮され、輸送距離や輸送時間の短縮が図れます。(図-1参照)
図-1 大型船の迂回イメージ
 2点目として、航路水深が増深されることにより、通航船舶の喫水制限が緩和され、輸送量の増加が可能となります。
 3点目として、航路を直線化することにより、海上交通の整流化が図られ、船舶の衝突・海難事故が減少し、航路内の乗上海難が解消され、海難損失コストが削減できます。  4点目として、浚渫土砂の有効活用(覆砂等)による海域の底質改善及び水質改善が図られます。  5点目として、船舶の輸送距離や輸送時間の短縮が図られることにより、Co2排出量が削減される等の効果が上げられます。

4.おわりに

 関門航路を航行する船舶の安全を確保するために、関係機関と調整を図りながら、整備事業を推進していくとともに、地域活性化・貢献を果たすことを念頭に、事務所職員一丸となって事故がないように取り組んでまいります。

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