建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2014年1月号〉

「北海道価値」を生かして少子高齢化時代を生き抜く

――景気対策で増加率は鈍化するも生活保護率は依然として全国2位

─― 安倍政権が公約したアベノミクスは、3本のうち、すでに2本までの矢が執行されましたが、その政策効果は道内では見られますか
高橋 国による日本経済の成長に向けた各般にわたる取り組みなどにより、全国的には景気回復の動きが見えてきていますが、本道経済は、緩やかに回復しつつあるとの評価があるものの、景気の回復を実感できるまでには至っていないとの声も聞かれますので、景気回復の流れが全道各地域に浸透していくことが大変重要と考えています。
 国においては成長戦略などを踏まえ、5兆円規模の新たな経済対策や新年度の予算編成が進められていくものと考えていますが、私としては今後とも「北海道産業競争力協議会」の場なども活用し、「食」や「観光」など本道の特性や優位性を活かした取り組みはもちろん、産業人材の育成や産業振興の環境づくりなどに向けて、必要な施策を取りまとめ、北海道から全国を元気にする方策を発信するなど、北海道経済の活性化に結び付くようしっかり取り組んでいく考えです。
─― 本道経済の課題をどうとらえ、道としてどんな景気対策に取り組んでいますか
高橋 景気の先行きは、消費税率引き上げや電気料金値上げなどによる道民生活や生産活動への影響が懸念されるなど、未だ不透明な状況にあります。
 道としてはこうした状況を踏まえ、引き続き公共事業等の早期発注や中小企業者などに対する受注機会の確保に努めるほか、民間企業との連携も強め、今後とも国の経済対策などで講じられる施策も十分に活用しながら、食や観光、ものづくり産業の振興などに努め、自立型経済構造の実現を目指し、本道経済の活性化に向けてしっかりと取り組んでいきます。
─― 疲弊しきった建設業界は、急増した建設需要に人材、重機、資材供給などが追いつかないミスマッチが起きていますが、道はどのように取り組んでいますか
高橋 本道の建設業は、道路や河川などの社会資本の整備はもとより、地域の経済・雇用を支える役割を担っていますが、これまでの建設投資の大幅な減少に加え、賃金の低下などから若年労働者の入職が大きく減少するなど、厳しい経営環境に置かれています。
 このため道では、建設業の進むべき方向性と道としての支援施策を総合的にとりまとめた「北海道建設産業支援プラン2013」を、昨年3月に策定して経営力の強化や人づくりの強化などに取り組んでいます。
 しかしながら、震災復興を含めた最近の公共事業の増大にともない、技術者や技能者などの人材の不足や資材費の上昇など、新たな課題が生じています。
 道としては、地域の建設業団体と人材育成に関する意見交換のほか、国や関係団体などと技術管理や建設資材に係る情報交換を行うなど、関係機関と一層連携して、課題解決に向けた取り組みを進めていきます。
─― 経済基盤が弱い北海道は、沖縄と並び目立って生活保護受給者数の多い地域ですが、景気対策によって変化は見られますか
高橋 近年、際だっていた生活保護受給者の急激な伸びは、鈍化しています。
 道内の生活保護受給者数は、平成になって最も少なかった平成7年度においては、受給者数が8万7,596人、保護率は1.53%でした。しかし、平成8年度以降は増加し続け、特に平成20年のリーマンショックを機に、平成21年度、22年度と続けて前年度比約9,000人増と急激に増えました。それがここ数年は、鈍化している状況にあります。
 なお、全国の状況と比較すると、本道における生活保護受給者の割合は平成25年5月時点で3.15%と、全国の1.69%に比べて高い状況にあります。これは大阪府の3.42%についで、全国第2位となります。
 こうした生活保護の受給者数というものは、景気の動向などの経済的要因、高齢化の進行や核家族化などの社会的要因、他法他施策の整備状況に伴う制度的要因などに対応して推移する傾向にありますが、道としては今後も生活保護制度が、国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する「最後のセーフティネット」として、適切にその役割を引き続き十分に果たし、支援が必要な人に確実に保護を実施するよう努めていきたいと考えています。
─― 今までうかがってきたように北海道は多くの課題があると思います。こうした課題を克服し、北海道をさらに活性化させていくため、知事はどのようなグランドデザインを描いていますか
高橋 私たちは、かつて経験したことのない人口減少・高齢化をはじめ、さまざまな重要課題に直面していますが、こうした困難を乗り越え、その先にある未来への確かな道筋を切り拓いていかなければなりません。
 北海道には豊かな水や森林資源、安全でおいしい水、優れた自然環境、多様な再生可能エネルギー資源など、かけがえのない財産があり、私はこうした北海道の独自性や優位性である「北海道価値」こそが、新たな時代への扉を開く鍵であると考えています。
 北海道知事
 高橋 はるみ
 たかはし・はるみ
 昭和 29年 1月6日生まれ 富山県出身
 昭和 51年 3月 一橋大学経済学部 卒業
 昭和 51年 4月 通商産業省入省
 昭和 60年 大西洋国際問題研究所(在パリ)研究員
 平成 元年 6月 通商産業研究所総括主任研究官
 平成 2 年 7月 中小企業庁長官官房調査課長
 平成 3 年 6月 工業技術院総務部次世代産業技術企画官
 平成 4 年 6月 通商産業省関東通商産業局商工部長
 平成 6 年 7月 通商産業省大臣官房調査統計部統計解析課長
 平成 9 年 1月 通商産業省貿易局輸入課長
 平成 10年 6月 中小企業庁指導部指導課長
 平成 12年 5月 中小企業庁経営支援部経営支援課長
 平成 13年 1月 経済産業省北海道経済産業局長
 平成 14年12月 経済産業省経済産業研修所長
 平成 15年 2月 経済産業省退官
 平成 15年 4月 北海道知事
 道内の各地域には、暮らしや産業、あるいは、環境、文化といったさまざまな分野で、新たな挑戦に取り組む多くの方々がおられます。そうした道民の皆さまの力を結集して、地域が持つ大切な宝ものである「北海道価値」を磨き上げ、活かしていくことが重要です。
 そして、優れた「道産食品」が世界のさまざまなマーケットに広がっている北海道、あるいは「エネルギーの地産地消」が進み、経済と環境がプラスの循環を生み出す北海道、また高齢者や障がいを持った人々もそれぞれの状況に応じて支え合う「安心の成熟社会」が築かれている北海道など、限りない可能性を持ったふるさと北海道を、子どもたちの世代へと引き継いでいきたいと考えています。

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