建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2013年12月号〉

北上川・鳴瀬川における災害復旧・復興事業

 国土交通省 東北地方整備局 北上川下流河川事務所 事務所長 佐藤 克英




 平成23年3月11日14時46分頃、東北地方を中心に東日本を襲った地震は、宮城県の栗原市で最大震度7、宮城・福島・茨城・栃木県で震度6強、地震の規模はマグニチュード9.0という、国内の観測史上最大規模でした。
 この巨大地震の発生により、太平洋沿岸各地には大津波が押し寄せ、東北を中心に北海道、関東など広範囲に被害がおよびました。また、大規模な地殻変動による地盤沈下により陸域では最大で114cm沈下(牡鹿地点)した。旧北上川河口部でも震災前に比べ約60cm沈下によりゼロメートル地帯が拡大、高潮時に市街地が浸水する被害が発生した。

被災した内陸部の河川堤防(江合川) 応急復旧完了した河川堤防(江合川)

 北上川河口部に位置する宮城県第2の都市である石巻市は、人口16万394人(平成23年3月1日現在)のうち死者(関連死含む)が3,512人、行方不明者が445人(平成25年10月10日現在)と自治体の中でも最も多く、大津波により市の面積の13%に相当する7,300haが津波で浸水し、中心市街地のほとんどが水没した。
 河口部では高さ10mに近い津波が、海岸や河川沿いを襲い、低平地の奥深くまで遡上した。このため、全壊家屋19,962棟、半壊13,109棟、一部破損19,948棟、床下浸水3,664棟など55,000棟(平成25年10月10日現在)を超える家屋被害となっている。
 鳴瀬川河口部に位置する東松島市は、人口4万2,840人(平成23年3月1日現在)のうち死者(関連死含む)が1,127人、行方不明者が26人(平成25年10月10日現在)。河口部では高さ8mの津波痕跡が確認され、全壊家屋5,510棟、半壊5,560棟、一部破損2,427棟、床下浸水1,075棟など14,000棟(平成25年10月10日現在)を超える家屋被害となっている。
 一方、当事務所管内の河川被害は2水系5河川で861箇所、これは東北地方の直轄河川全体の約72%にあたる。内陸部においては揺れや液状化などによる堤防の崩壊、沈下、亀裂などが顕著で、河口部では津波による、堤防の流出、損壊及び水門等の破損等の被害を被った。
 当事務所では、災害発生直後の緊急対策として、流出した道路兼用の河川堤防を最優先に緊急物資輸送路の復旧を実施するとともに、地盤沈下・堤防被災による洪水被害、高潮・満潮時の浸水被害を軽減させるため、平成23年の出水期までに、被災前の堤防高さまで応急復旧を実施した。
■各河川における河口部災害復旧事業
北上川河口部災害復旧事業
旧北上川河口部災害復旧事業
鳴瀬川河口部災害復旧事業

 また、被災前と同程度の安全水準まで確保させるための本復旧を平成24年の出水期までに実施した。
 大震災の大津波を踏まえ、河口部の堤防高は海岸堤防と整合を図りながら、洪水、高潮、津波(「施設計画上の津波」)に対して必要とされる高さのうち最も高い堤防高を区間ごとに設定することとなった。なお、「最大クラスの津波」に対しては、津波防災まちづくり等と一体となった総合的な被害軽減対策を実施しながら、被害の軽減を図ることとなっている。上記の考え方に基づく堤防整備を位置づけた河川整備計画(北上川水系・鳴瀬川水系)は、平成24年11月20日付けで策定・変更した。
 このため河口部では津波及び高潮からまちを守るため、北上川の整備延長は左右岸合計で17.9km(河口部堤防高TP8.4m)、旧北上川の整備延長は左右岸合計で19.1km(河口部堤防高TP7.2m)、鳴瀬川の整備延長は左右岸合計で6.6km(河口部堤防高TP7.2m)の堤防整備計画を、河口部周辺の市街地再開発、道路整備、防災集団移転、災害公営住宅の建設などが同時進行するなか地域住民に粘り強く説明し、沿川自治体の復興計画と整合を図りながら堤防の整備を進めている。
 平成25年10月末現在、内陸部では堤防の復旧・整備、耐震・液状化対策を実施しており、被害の大きかった106箇所の災害復旧箇所については10月末までに97箇所復旧が完成しており、平成25年度内に全箇所完成を目指し実施している。
 河口部の堤防整備については、堤防整備に必要な用地の取得を進めながら、北上川では、築堤・地盤改良工事を実施しており、築堤工事の着手率は約90%(堤防延長ベース)である。
 旧北上川では、無堤地区での堤防整備となり川前護岸(止水矢板)工事を実施しており、護岸工事の着手率は約73%(護岸延長ベース)である。
 鳴瀬川は、築堤工事を実施しており、築堤工事の着手率は約65%(堤防延長ベース)である。
 3河口部の堤防整備は、平成27年度の完成を目指し整備を推進している。

北上川河口部の地盤改良(長面地区) 旧北上川河口部の止水矢板(門脇地区)
吉田川河口部の築堤(中下地区)

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